「利他」の精神と互助会

一条真也です。
16日、東京から北九州に戻りました。17日の朝、松柏園ホテルの神殿で恒例の月次祭が行われました。

神事の最初は一同礼!


月次祭のようす


玉串を受け取りました


拍手を打ちました


拍手を打つ松田常務


神事の最後は一同礼!

 

皇産霊神社の瀬津神職によって神事が執り行われましたが、この日は祭主であるサンレーグループ佐久間進会長が欠席でしたので、わたしが玉串奉奠を行いました。会社の発展と社員の健康・幸福、それに新型コロナウイルスの感染拡大が終息することを祈念。その後、北九州本部長である松田哲男常務が玉串奉奠し、参加者がそれと一緒に二礼二拍手一礼しました。儀式によって「かたち」を合わせると、「こころ」が1つになる気がします。


天道塾開始前の会場

最初は、もちろん一同礼!

ロイヤルブルーのマスク姿で登壇


マスクを外しました

 

神事の後は、恒例の「天道塾」です。最初に社長であるわたしが、ロイヤルブルーのマスク姿で登壇しました。まず、長女の結婚式および結婚披露宴でお世話になったことへの感謝の言葉を社員のみなさんに伝えました。そして、初めて「ハートフル」という言葉の意味がわかったこと、それが「礼」に通じていたことなどを話しました。「礼」といえば、最新刊『論語と冠婚葬祭』(現代書林)がおかげさまで好評です。わが国における儒教研究の第一人者である大阪大学名誉教授の加地伸行先生との対談本で、「天下布礼」の書であります。

「礼」について語りました

 

同書では「礼」について追及しましたが、「礼」とは何よりもわが社のミッションである「人間尊重」だと思います。「人間尊重」は、かの出光佐三翁の哲学を象徴する言葉でもあります。サンレーの創業者である佐久間進会長が若い頃、地元・北九州からスタートして大実業家となった佐三翁を深く尊敬しており、その思想の清華である「人間尊重」を自らが創業した会社の経営理念としました。以後、サンレーグループのミッションとなっています。



「人間尊重」ということを考える上で、非常に感動的な動画にネット上で出合いました。「極貧少女とラーメンおやじ」というアニメ動画です。貧しくて、いつもお腹を空かせている小学校1年生の少女がラーメン店主からラーメンを食べさせてもらうという話です。「お返しができないから、食べられない」と固辞する少女に、店主は「それなら、おじさんに漢字を教えておくれ。ラーメン1杯ごとに漢字を1つ教えてほしい」と言います。見返りを求めないだけでなく、相手に心理的負担を与えない店主の心に感動します。この少女が成長して、今度は困窮状態にあった店主を助けるのですが、わたしは涙が止まりませんでした。店主のように「人を助けられる人」、少女のように「受けた恩を返せる人」、「人のために」という利他の心を持った人間になりたいものです!



また、「同級生に、お弁当を分けてあげた私→20年後、火事から私を救ってくれたのは、なんと・・・」というアニメ動画も紹介しました。この話はフィクションですが、「利他」の本質を見事に描いています。弁当を分けてもらった男の子が卑屈な思いをしないように、女の子が「お母さんが張り切ってお弁当を作りすぎちゃったの。残して帰ったらいろいろ言われるから」と小学生ながら相手の感情に寄り添う言葉をかけるのも素晴らしいです。わが社は、児童養護施設のお子さんたちに七五三や成人式の衣装を無償でレンタルさせていただいています。「万物に光を降り注ぐ太陽のように、すべての人に儀式を提供したい」というわが社の志によるものです。次なる志の「かたち」は「子ども食堂」でした。さまざまな事情で、満足な食事が取れないお子さんたちにお腹いっぱい美味しいものを食べていただきたいと考えてきました。昨年ついに、「日王の湯」で子ども食堂が実現し、現在も定期開催しています。2つの感動的な動画を観て、わたしは「子ども食堂をもっと増やしたい!」と強く思いました。



論語と冠婚葬祭』を読んだ サンレー北陸MSセンターの中山雅智所長が、「わたくしの偏った感性で恐縮ですが、本を読みながら日本人っていいな。人間っていいなと思ったら、幼少期にテレビで見ていた、『まんが日本昔ばなし』のエンディング曲『にんげんっていいな』を思い出しました。その歌詞の中には、『ほかほかごはん』『ポチャポチャおふろ』とあり、サンレーズ・アンビション・プロジェクトを垣間見ることができました」との感想をLINEで送ってくれました。そう、「日王の湯」では、子ども食堂だけでなく、子ども温泉も開催しているのです。これは、全国でも珍しい試みだそうです。

サンレーズ・アンビション・プロジェクトについて

 

中山所長のいう「サンレーズ・アンビション・プロジェクト」とは、「人間尊重」としての礼の精神を世に広める「天下布礼」の実践です。具体的には、冠婚葬祭衣装の無償レンタル、天然温泉の無料体験&子ども食堂の開設などの一連の社会貢献活動のことですが、これは、SDGsにも通じています。SDGsは環境問題だけではありません。人権問題・貧困問題・児童虐待・・・・・・すべての問題は根が繋がっています。そういう考え方に立つのがSDGsであるわけです。その意味で入浴ができなかったり、満足な食事ができないようなお子さんに対して、見て見ぬふりはできません。義を見てせざるは勇なきなり!


「利他」の精神について


熱心に聴く人びと

 

「極貧少女とラーメンおやじ」のエピソードは「利他」の精神に溢れていますが、じつは「利他」とは「互助」という言葉に通じます。日本には「情けはひとのためならず」という言葉がありますが、他人を助けることのできる人は他人から助けられることのできる人なのです。この動画をいろんな人にLINEで紹介したのですが、サンレー北九州本部の営業推進部の小谷研一部長は「家族以外でも強い絆で結ばれることの素晴らしさを改めて感じました。互助会の普及が利他の精神の普及であると信じ業務に邁進致します」とのコメントを寄せてくれました。わたしは、この極貧少女のような境遇の子どもがいなくなり、平等な社会になることを強く願います。戦争をするだけが人類の歴史ではあまりにも悲し過ぎます。

「ケア」と「利他」について

 

ここ数年、わたしは「ケア」について考え、サービス業をケア業へと進化させる方法を模索しています。そんな中、『思いがけず利他』中島岳志著(ミシマ社)という本に出合い、「利他」が「ケア」に通じることを確認しました。東京工業大学で「利他プロジェクト」を立ち上げた著者は、1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授です。島薗進先生とも対談本を出されています。同書の「はじめに」の冒頭で、中島氏は「コロナ危機によって『利他』への関心が高まっています。マスクをすること、行動を自粛すること、ステイホームすること――。これらは自分がコロナウィルスにかからないための防御策である以上に、自分が無症状のまま感染している可能性を踏まえて、他者に感染を広めないための行為でもあります」と書きだしています。


「他力」とは何か?


熱心に聴く人びと

 

いまの自分の体力に自信があり、感染しても大丈夫と思っても、街角ですれ違う人の中には、疾患を抱えている人が大勢いるだろうとして、著者は「恐怖心を抱きながらも、電車に乗って病院に検診に通う妊婦もいる。通院が不可欠な高齢者もいます。一人暮らしの高齢者は、自分で買い物にも行かなければなりません。感染すると命にかかわる人たちとの協同で成り立っている社会の一員として、自分は利己的な振る舞いをしていていいのか」ということが各人に問われるといいます。人間が自身の限界や悪に気づいたとき、「他力」がやって来ます。「他力本願」というと、「他人まかせ」という意味で使われますが、浄土教における「他力」とは、「他人の力」ではなく、「阿弥陀仏の力」です。「他力本願」とは、すべてを仏に委ねて、ゴロゴロしていればいいということではなく、大切なのは、自力の限りを尽くすことです。

すべては「利他」から始まる! 

 

自力で頑張れるだけ頑張ってみると、わたしたちは必ず自己の能力の限界にぶつかります。そして、自己の絶対的な無力に出会うとして、中島氏は「重要なのはその瞬間です。有限なる人間には、どうすることもできない次元が存在する。そのことを深く認識したとき、『他力』が働くのです」と述べています。それが大切なものを入手する偶然の瞬間です。重要なのは、わたしたちが偶然を呼び込む器になることです。偶然そのものをコントロールすることはできませんが、偶然が宿る器になることは可能です。そして、この器にやって来るものが「利他」であるというのです。器に盛られた不定形の「利他」は、いずれ誰かの手に取られます。その受け手の潜在的な力が引き出されたとき、「利他」は姿を現し、起動し始めるのではないか?

互助会の普及は「利他」の精神の普及!

 

小谷部長が言うように、互助会の普及とは「利他」の精神の普及そのものです。佐久間進会長は、著書『人間尊重の「かたち」』(PHP研究所)において、「人間尊重とは、人と人とがお互いに仲良くし、力を合わせることです。互いに助け譲り合う『互譲互助』『和』の精神は、神道の根幹を成すものであり、自然と人間の調和こそが日本人の精神形成の基になっています。今、日本では『無縁社会』などという言葉が取り沙汰されるほど人間関係の希薄さが進行し、日本は、日本人はダメになってしまうのではないかと危惧していました。ところが、2011(平成23)年に発生した東日本大震災で、日本は素晴らしい国民性を持っていることが再確認できました。あれだけの震災を受け、自分自身がこの先どうなるか分からない、死ぬかもしれない中で、暴動や略奪が起こらず、お互いが助け合い・支え合い・励まし合って生きようとする見事な姿勢。あれだけ追い詰められて先が見通せない時に秩序を守り、礼儀正しく、一杯の炊き出しごはんをいただくにもきちんと整列して何時間でも待っている姿。これには世界の人たちが日本人は大したものだと驚嘆し、称賛してくれました。他国ではあり得ない姿だったようです」と述べます。


互助共生社会をつくろう!

 

また、佐久間会長は「私ども冠婚葬祭互助会が掲げてきた、『互助社会をつくろう!』『共生社会をつくろう!』『支え合う社会をつくろう!』という最終目的は、まさに日本人が持っている一番の特徴を表しているのではないでしょうか。わが社はそれを長年にわたって言い続けてきました。東日本大震災後、『絆』という言葉がクローズアップされています。絆とはまさに人と人の結びつきです。かつて絆を大切にしてきた日本人の心が覚醒し、お互いに助け合うこと、支え合うことが再認識され、われわれ冠婚葬祭互助会に対する評価も必ず上がってくると思います。そして『支え合う』ということを大きな柱に据えたいと思います。『助け合い』から『支え合い』へ。冠婚葬祭を通して、もう一度人と人との絆を結び直せないかと思っています。本格的にわれわれの目指す仕事がいよいよできるのではないかと、楽しみに感じているところです」とも述べています。わたしは、「わが社は、これからも、サンレーズ・アンビション・プロジェクトを推進していきましょう!」と訴えてから降壇しました。


沖縄から業界動向を報告

わたしも聴きました


最後に総括しました


最後は、もちろん一同礼!

 

わたしが降壇した後、那覇から、サンレー沖縄の佐久間康弘社長が互助会の業界動向について30分間の報告を行いました。今後のコミュニケーション技術の発展可能性にも言及し、ホログラム技術・リアルタイム翻訳技術、メタバース技術などを説明。まるでSFのような未来世界の話題を紹介した後、最後は「互助会の時代(地域コミュニティの中心へとさらに発展)で締めくくりました。その後、わたしが総括として「ハイテックとハイタッチは共存します。『IT』という言葉のI(Information)も、『情報』という言葉の情(心の働き)も、すべては心に関わります。どんなに科学技術が発達しても、人間の心を基軸とした互助会事業は不滅です。自信と誇りを持って、一緒に『心ゆたかな社会』『ハートフル・ソサエティ』を呼び込みましょう!」と述べました。

 

 

2022年6月17日 一条真也