死を乗り越える伊藤佐千夫の言葉

 

三十で死ぬも六十で死ぬも、
死んだ跡から見れば同じだ。
(伊藤佐千夫)

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、日本の歌人・小説家である伊藤佐千夫(1864年~1913年)の言葉です。上総国武射郡殿台村(現在の千葉県山武市)の農家出身。明治法律学校(現・明治大学)中退。代表作に『野菊の墓』『隣の嫁』『春の潮』などがあります。

伊藤佐千夫(1864年~1913年)

 

 

「三十で死ぬも六十で死ぬも、死んだ跡から見れば同じだ」とは、伊藤佐千夫の小説「廃める」に出てくる言葉です。一読すると、退廃的な言葉に聞こえますが、わたしはこれは「死を意識しながら、日々を生きなさい」という前向きな言葉として受け取りました。そう思うと、これは彼の「メメント・モリ(死を想え)」なのかもしれません。寿命は不平等に感じるかもしれませんが、「死」は平等であり、その瞬間までいかに生きるかを考えなさいというメッセージではないでしょうか。

 

 

伊藤佐千夫といえば、やはり不朽の名作『野菊の墓』を思い出します。ヒロインが死んでしまう純愛の物語に十代の多感なわたしは涙したことを思い出します。少年・政夫と年上の女の子・民子との切ない恋を描いた小説です。身分の差から一緒になれない二人の切ない恋は、民子の死で終わります。ドラマでは山口百恵、映画では松田聖子という昭和を代表する二大アイドルがヒロインの民子を可憐に演じたことも忘れられません。

 

 

ちなみに野菊の花言葉は「無常の美」です。ヒロインが死ぬラブストーリーというコンセプトは、今日でも『世界の中心で愛を叫ぶ』『君の膵臓をたべたい』などのベストセラー小説に受け継がれています。なお、この伊藤佐千夫の言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2022年6月11日 一条真也