六月博多座大歌舞伎

一条真也です。
8日、妻と博多座に行きました。ゼンリンプリンテックスの大迫益男会長が「娘さんの結婚式で疲れたやろ。娘が嫁いで寂しいやろうけど、夫婦で歌舞伎でも観て気晴らしをしなさいよ」ということで、「六月博多座大歌舞伎」の最高のチケットを2枚プレゼントして下ったのです。


新幹線で小倉から博多へ!

博多座の入口前で

 

ブログ「六月博多座大歌舞伎」で紹介した2016年6月24日の公演以来、久々に訪れた博多座ですが、妻との歌舞伎鑑賞はブログ「平成中村座 小倉城講演」で紹介した2019年11月2日の公演以来です。今日の公演が昼夜二部制でしたが、わたしたちは夜の部を鑑賞しました。

 

夜の部の出し物は2つあり、「一、魚屋宗五郎」と「二、積恋雪関扉」でした。「魚屋宗五郎」は、江戸世話物の人気作で、五世尾上菊五郎のために河竹黙阿弥が明治16年(1883)年に書き下ろしました。怪談話として知られる「皿屋敷伝説」を物語に取り入れた作品です。普段は実直な主人公が、妹を惨殺された憤りと悲しみのあまり、固く守っていた禁酒を破り、酔ううちに酒乱となって暴れ出す酔態が、細やかに描き出されていくのが面白さです。祭り囃子が響くなか、江戸・芝片門前で魚屋を営む宗五郎の家は、宗五郎の妹・お蔦が奉公先の磯部主計之助の屋敷で手討ちになったという知らせに沈み込んでいました。そこへ、同じ磯部家へ奉公するおなぎが酒樽を届け、お悔やみにやって来ます。おなぎから、お蔦殺害の一部始終を聞いた宗五郎や女房のおはまたちは、落ち度のないお蔦がなぶり殺しにあったと知り、憤りに震えます。酒でも飲まなければ居ても立っても居られないと、ついに飲み出す宗五郎。やがて酒乱の宗五郎は角樽を手に暴れ回り、磯部邸へと飛び出して行くのでした。家族愛やその後の磯部邸での顛末が綴られる芝居で、宗五郎を尾上菊之助、おはまを中村梅枝が演じます。



「魚屋宗五郎」は初めて観たのですが、とても面白かったです。お蔦の実家である魚屋を訪れた人が、遺族の悲しみを慮って「悔やみ」を述べるシーンなどは、まさに江戸のグリーフケアであると思いました。また、菊之助演じる宗五郎がうまそうに酒を啜る場面、飲み過ぎて次第に酒乱になる場面など、腹を抱えて笑いました。わたしが笑いながら、「酔っ払いの話は面白いな」とつぶやくと、妻から「あなたみたいね」と言われてしまいました。

 

「積恋雪関扉」は、常磐津の大曲である舞踊劇です。天明4年(1784年)に江戸桐座で初演された顔見世狂言「重重人重小町桜」の二番目大切に上演されたもので、天明の歌舞伎の特徴といえるおおらかな味わいが魅力となっている作品です。雪の逢坂山にある関所で、季節外れの桜が咲いている幻想的な景色が背景。天下を望む大伴黒主である関守関兵衛、二枚目の良峯少将宗貞、宗貞を訪ねた小野小町姫が登場する上の巻では、小町姫と関兵衛との問答、宗貞と小町姫が馴れ初めを語る艶やかな恋模様、三人による手踊りなどが繰り広げられます。下の巻では、酒に酔った関兵衛が、盃の中の星影を見て大見得を見せます。天下調伏祈願のために大鉞(まさかり)で桜の木を伐ろうとすると、桜の中に傾城墨染の姿が浮かび上がります。彼女は実は桜の精。関兵衛の望みにより、廓話など遊郭の風俗を墨染が華やかな踊りで見せていきます。その後、墨染と関兵衛が互いの本性を明かし、立廻りを盛り込んだ所作ダテへと発展して幕となります。関兵衛を中村芝翫、墨染を中村時蔵小野小町姫を中村梅枝、少将宗貞を中村萬太郎が演じます。



「積恋雪関扉」は、中村芝翫が主演でした。タレントの三田寛子の旦那さんですね。彼は不倫ばかりしているイメージですが、意外と舞踊が達者なので驚きました。さすがは役者ですが、舞台そのものは変化に乏しく、あまり面白くはありませんでした。傾城墨染(桜の精)を演じた役者もあまりにヨボヨボで、ちょっと見ていて痛々しかったです。最後まで舞踊が中心なので、ストーリーの面白さは感じられませんでしたね。でも、雪景色に桜の巨木という背景は美しかったです。

博多座のロビーで


劇場内のようす


博多座の劇場内で


この幕が開いたら、ワンダーランド!

 

6月5日の行われた長女の結婚式・結婚披露宴は、妻が企画・プロデュースの多くの責を負いましたので、正直ものすごく大変でした。当日までの約1カ月間は毎日睡眠不足の中を頑張っていました。その結婚式・結婚披露宴もようやく終わり、妻も放心状態になっていました。わたしも、長女が嫁いでしまって放心状態になっていましたので、夫婦揃っての歌舞伎鑑賞は良いリフレッシュになりました。何よりも、久しぶりに夫婦水入らずの時間を持つことができました。大迫会長の粋なご配慮に感謝いたします。

 

2022年6月9日 一条真也