利他・互助・人間尊重

一条真也です。
昨日、108冊目の「一条本」となる『論語と冠婚葬祭』(現代書林)がついに発売されました。わが国における儒教研究の第一人者である大阪大学名誉教授の加地伸行先生との対談本で、「天下布礼」の書であります。

論語と冠婚葬祭』(現代書林)

 

おかげさまで『論語と冠婚葬祭』は好評のようで、アマゾン・レビューも続々と寄せられています。同書では「礼」について追及しましたが、「礼」とは何よりもわが社のミッションである「人間尊重」だと思います。「人間尊重」は、 ブログ「座右の銘は『人間尊重』」でも紹介したように、かの出光佐三翁の哲学を象徴する言葉でもあります。サンレーの創業者である佐久間進会長が若い頃、地元・北九州からスタートして大実業家となった佐三翁を深く尊敬しており、その思想の清華である「人間尊重」を自らが創業した会社の経営理念としました。以後、サンレーグループのミッションとなっています。



「人間尊重」ということを考える上で、非常に感動的な動画にネット上で出合いました。「極貧少女とラーメンおやじ」というアニメ動画です。貧しくて、いつもお腹を空かせている小学校1年生の少女がラーメン店主からラーメンを食べさせてもらうという話です。「お返しができないから、食べられない」と固辞する少女に、店主は「それなら、おじさんに漢字を教えておくれ。ラーメン1杯ごとに漢字を1つ教えてほしい」と言います。見返りを求めないだけでなく、相手に心理的負担を与えない店主の心に感動します。この少女が成長して、今度は困窮状態にあった店主を助けるのですが、わたしは涙が止まりませんでした。店主のように「人を助けられる人」、少女のように「受けた恩を返せる人」、「人のために」という利他の心を持った人間になりたいものです!

西日本新聞」2021年12月8日朝刊

 

ブログ「晴れの日は晴れ着で」で紹介したように、わが社は児童養護施設のお子さんたちに七五三や成人式の衣装を無償でレンタルさせていただいています。「万物に光を降り注ぐ太陽のように、すべての人に儀式を提供したい」というわが社の志によるものです。ブログ「体も心もぽかぽかに」で紹介したように、次なる志の「かたち」は「子ども食堂」でした。さまざまな事情で、満足な食事が取れないお子さんたちにお腹いっぱい美味しいものを食べていただきたいと考えてきました。昨年ついに、「日王の湯」で子ども食堂が実現し、現在も定期開催しています。「極貧少女とラーメンおやじ」の動画を観て、わたしは「子ども食堂をもっと増やしたい!」と強く思いました。


論語と冠婚葬祭』をわが社の主な社員にプレゼントしたのですが、その中でサンレー北陸MSセンターの中山雅智所長が、「わたくしの偏った感性で恐縮ですが、本を読みながら日本人っていいな。人間っていいなと思ったら、幼少期にテレビで見ていた、『まんが日本昔ばなし』のエンディング曲『にんげんっていいな』を思い出しました。その歌詞の中には、『ほかほかごはん』『ポチャポチャおふろ』とあり、サンレーズ・アンビション・プロジェクトを垣間見ることができました」との感想をLINEで送ってくれました。そう、「日王の湯」では、子ども食堂だけでなく、子ども温泉も開催しているのです。これは、全国でも珍しい試みだそうです。

サンレーズ・アンビション・プロジェクト(SAP)

 

中山所長のいう「サンレーズ・アンビション・プロジェクト」とは、「人間尊重」としての礼の精神を世に広める「天下布礼」の実践です。具体的には、冠婚葬祭衣装の無償レンタル、天然温泉の無料体験&子ども食堂の開設などの一連の社会貢献活動のことですが、これは、SDGsにも通じています。SDGsは環境問題だけではありません。人権問題・貧困問題・児童虐待・・・・・・すべての問題は根が繋がっています。そういう考え方に立つのがSDGsであるわけです。その意味で入浴ができなかったり、満足な食事ができないようなお子さんに対して、見て見ぬふりはできません。義を見てせざるは勇なきなり!

アンビショナリー・カンパニー』(現代書林)

 

「極貧少女とラーメンおやじ」のエピソードは「利他」の精神に溢れていますが、じつは「利他」とは「互助」という言葉に通じます。日本には「情けはひとのためならず」という言葉がありますが、他人を助けることのできる人は他人から助けられることのできる人なのです。この動画をいろんな人にLINEで紹介したのですが、サンレー北九州本部の営業推進部の小谷研一部長は「家族以外でも強い絆で結ばれることの素晴らしさを改めて感じました。互助会の普及が利他の精神の普及であると信じ業務に邁進致します」とのコメントを寄せてくれました。拙著『アンビショナリー・カンパニー』(現代書林)にも書きましたが、わたしは、この極貧少女のような境遇の子どもがいなくなり、平等な社会になることを強く願います。戦争をするだけが人類の歴史ではあまりにも悲し過ぎます。

人間尊重の「かたち」』(PHP研究所)

 

佐久間進会長は、著書『人間尊重の「かたち」』(PHP研究所)において、「人間尊重とは、人と人とがお互いに仲良くし、力を合わせることです。互いに助け譲り合う『互譲互助』『和』の精神は、神道の根幹を成すものであり、自然と人間の調和こそが日本人の精神形成の基になっています。今、日本では『無縁社会』などという言葉が取り沙汰されるほど人間関係の希薄さが進行し、日本は、日本人はダメになってしまうのではないかと危惧していました。ところが、2011(平成23)年に発生した東日本大震災で、日本は素晴らしい国民性を持っていることが再確認できました。あれだけの震災を受け、自分自身がこの先どうなるか分からない、死ぬかもしれない中で、暴動や略奪が起こらず、お互いが助け合い・支え合い・励まし合って生きようとする見事な姿勢。あれだけ追い詰められて先が見通せない時に秩序を守り、礼儀正しく、一杯の炊き出しごはんをいただくにもきちんと整列して何時間でも待っている姿。これには世界の人たちが日本人は大したものだと驚嘆し、称賛してくれました。他国ではあり得ない姿だったようです」と述べています。


天道館で話す佐久間会長

 

また、佐久間会長は「私ども冠婚葬祭互助会が掲げてきた、『互助社会をつくろう!』『共生社会をつくろう!』『支え合う社会をつくろう!』という最終目的は、まさに日本人が持っている一番の特徴を表しているのではないでしょうか。わが社はそれを長年にわたって言い続けてきました。東日本大震災後、『絆』という言葉がクローズアップされています。絆とはまさに人と人の結びつきです。かつて絆を大切にしてきた日本人の心が覚醒し、お互いに助け合うこと、支え合うことが再認識され、われわれ冠婚葬祭互助会に対する評価も必ず上がってくると思います。そして『支え合う』ということを大きな柱に据えたいと思います。『助け合い』から『支え合い』へ。冠婚葬祭を通して、もう一度人と人との絆を結び直せないかと思っています。本格的にわれわれの目指す仕事がいよいよできるのではないかと、楽しみに感じているところです」とも述べています。わが社は、これからも、サンレーズ・アンビション・プロジェクトを推進いたします!


天道館の竣工式で佐久間会長と

 

2022年5月21日 一条真也