渡辺裕之さん、安らかに!

一条真也です。
「こどもの日」に衝撃的なニュースが入りました。
俳優の渡辺裕之さんが、3日に神奈川県内の自宅で死去されたとの発表があったのです。66歳でした。

ヤフーニュースより

 

渡辺さんは3日昼頃に家族により発見されましたが、縊死されていたそうです。渡辺さんの所属事務所は、「あまりに突然の出来事に、ご家族もスタッフも驚きと悲しみに呆然としております」とコメント。葬儀に関しては「ご家族との相談の上、密葬というかたちで執り行わせて頂きます」としました。妻で女優の原日出子さんの所属事務所は、同社のサイトで「あまりに突然の出来事に、弊社・原日出子はぼう然自失としており、現在、皆様に何かお答えできる状況にございません。心の整理がつきましたところで、改めて皆さまにコメントを出させていただきます」と綴りました。奥様には心よりお悔やみを申し上げます。


じつは、わたしは渡辺裕之さんと映画で共演したことがあります。三村順一監督の「君は一人ぼっちじゃない」という小倉が舞台の映画です。ブログ「映画出演」で紹介したように、2018年7月17日に松柏園ホテルの大広間で撮影が行われました。出演した渡辺裕之さんは地元財界を代表する大物経営者を演じ、なんとその名前が佐久間社長(!)でした。わたしは、その佐久間社長が開いた宴席の主賓の役でした。渡辺さんはわたしと向かい合って座られました。渋くて、すごくカッコ良かったです。

撮影のようす(わたしの向かいが渡辺裕之さん)

撮影のようす(右端に写っているのが渡辺裕之さん)

 

渡辺さん演じる佐久間社長の昔の女である芸者(鶴田真由)の舞いを楽しんだ後、拍手をして終わりのはずでしたが、なんと急遽、わたしにセリフが入りました。昔の女の思い出に浸っている佐久間社長に気をきかせて、「佐久間さん、今日はどうもありがとう。先にカラオケに行ってるよ!」と言って退席するというものです。しかしながら、単なるエキストラ出演だと思っていたわたしは、急にセリフを与えられて、ちょっと慌てました。それでも、1度だけ撮り直しをしましたが、ぶっつけ本番で何とか演じ切りました。そのとき、渡部さんはニコッと笑って「すごく良い演技でしたよ」と言って下さったのです。本当に、思いやりのある良い方でした。


ブログ「ハチとパルマの物語」で紹介した2021年公開の日露共同制作映画にも渡辺さんは出演されていました。旧ソ連時代、空港に実在した犬の実話を基に、モスクワと秋田を背景に描くヒューマンドラマです。空港に取り残された犬と母親を亡くした少年が出会い、友情を育んでいく物語です。オーディションで選ばれたレオニド・バーソフが主人公を演じ、アレクサンドル・ドモガロフ・Jrが監督と脚本を手掛け、「ボリショイ・バレエ 2人のスワン」などのアレクサンドル・ドモガロフと親子で共に参加しました。この映画に、渡辺裕之さんは秋田県のブリーダーの役で出演されました。


アナスタシア志賀ちゃんとハチと渡辺裕之さん


渡辺裕之さんとアナスタシア志賀ちゃん

 

「ハチとパルマの物語」のエグゼクティブプロデューサーは志賀司氏(セレモニー社長)、プロデューサーは益田祐美子氏でした。この映画には、志賀社長のご長女であるアナスタシア志賀ちゃんも出演しており、秋田県の子犬を探す可憐な女の子の役で、渡辺さんと共演を果たしました。その志賀社長に渡辺さん急逝を知らせるLINEを送ったところ、「とにかく人生にも演技にもストイックな方だったので・・・」と、大変ショックを受けた様子でした。

グリーフケア映画を捧げます!(右端が志賀社長)

 

志賀社長と益田氏は拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)を原案とするグリーフケア映画製作のツートップでもあります。じつは、その映画に渡辺さんに出演していただくプランがありました。「君は一人ぼっちじゃない」の御縁がありますので、わたしも非常に楽しみにしていました。それが叶わなくなったのは本当に残念ですが、映画が完成した暁には渡辺さんの霊前に捧げたいと思います。この世を卒業された渡辺さんには、どうか安らかにお休みいただきたいです。思い出に残る名優・渡辺裕之さんの御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。


2022年5月5日 一条真也