26の大事件

一条真也です。
北海道知床半島沖で26人を乗せた観光船が沈没した事故で、船上でプロポーズする予定だった男性の葬儀が、2日に実家のある帯広市内で執り行われました。

「北海道ニュースUHB」より

 

残された手紙には交際女性への思いが綴られていましたが、その動画を観て、わたしは泣けて仕方がありませんでした。手紙には、「ずっとずっと大好きです。一生一緒についてきてください。愛しています。嫁になってくれますか?」と、プロポーズの言葉が書かれていました。


観光船KAZU1(カズワン)に乗船して亡くなった男性が、船に同乗した交際女性にあてて書いた手紙です。プレゼントのティファニーのネックレスも用意されていました。彼は今年1月に北見市に移り住み、結婚に向けて、交際女性と同居を始めていましたが、沈没事故に巻き込まれ亡くなりました。同乗していた交際女性はまだ見つかっていません。お父さんは、「車から、本人の手紙が出てきたんです。つらくて読めなかったです。悔しいです、残念です。これからの長い人生を奪われたと思うと、言葉がないです」と述べておられます。ちょうど、わたしの次女と同い年だと知り、親御さんの無念を思うと、また泣けてきました。せめて、肉体は死んでも2人の霊魂だけは結ばれる「結魂」を果たしていただきたいと願います。


2日午後には、亡くなった3歳の女の子が、父親の遺体とともに、斜里町内の施設から搬送されました。同乗していた母親はまだ見つかっていません。このご一家は函館、洞爺湖、帯広、阿寒などを巡る1週間の北海道旅行中でした。最終目的地の知床で、夫婦の夢だった知床観光クルーズをして、23日夕方に帰京するはずだったそうです。女の子のお祖父さんは、現地対策本部のある斜里町内で「救出していただいた海上保安庁、夜も昼も問わないでやってくださっている漁業関係者のみなさま、医療従事者、斜里町役場、国土交通省の方々、市民の方には献花台にお花やお菓子を添えていただいたり、本当にありがとうございます」と感謝の言葉を述べました。一方で、報道陣の取材活動について思いの丈を述べた。宿泊先へ押しかけてきたり、友人や知人などにも執拗に取材に迫ってくることについて苦言を呈し、「なぜ私達をそっとしておいていただけないのでしょうか。みなさんの報道のあり方、モラルに非常に残念です」と声を荒らげながら話されました。


乗客の1人だった佐賀県有田町の男性はその直前、妻に携帯で、電話をしたといいます。「船が沈みそうだ。今までありがとう。お世話になったね」という内容の話を伝えていたそうです。同町に住む男性の義弟によると、男性は友人らとレンタカーで北海道を観光し、知床にも行くと話していたといいます。24日朝に事故を知り、男性の奥さんに連絡を取ったところ、事故当日の23日に、男性から慌てたような様子で妻に電話があったことを聞きました。その後、男性が死亡確認されたことを別の親族を通じて知ったそうです。その義弟の方は「義兄の優しい人柄が出ている。必死だったのだろう」と語りました。改めて、1人の人間が亡くなった背景にはそれぞれの物語があり、この上ない大事件なのだと思います。26人全員が犠牲になったとしたら、それは「犠牲者26人」というよりも、26の大事件が同時に発生したということなのです。どうか早く、すべての方が発見されることを願うとともに、亡くなられた方々の御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

 

2022年5月2日 一条真也