『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』

一条真也です。
4月になりました。125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第167回分が掲載されています。今回は、『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』小澤竹俊著(アスコム)を取り上げました。

f:id:shins2m:20220331161720j:plainサンデー新聞」2022年4月2日号

 

ホスピス医が「これからどう生きれば幸せなのか」について書いた本です。著者は、わたしと同じ1963年東京生まれ。87年、東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。94年より横浜甦生病院ホスピス病棟に務め、病棟長となる。2006年には、横浜にめぐみ在宅クリニックを開院しました。20年間、人生の最終段階の医療に携わり、3500人を超える患者たちを見送ってきた著者は、1つ気づいたことがあるそうです。それは、「死」を前にすると、人は必ず自分の人生を振り返るということ。そして、自分の人生で誇れること、後悔していることなどを少しずつ整理し、最終的には多くの人が「良い人生だった」と納得して、穏やかにこの世を去っていくそうです。

 

「はじめに」で、著者は「日々忙しく過ごしていると、人はなかなか、自分の生き方を見つめ直したり、自分にとって本当に大切なものに気づいたりすることができません。でも、もし、あと1年で人生が終わりを告げるとしたら・・・・・・。あなたは何をしたいと考えるでしょうか」と読者に問いかけます。全部で17ある問いのうち、15「自分を追いつめすぎていませんか?」では、「あと1年で人生が終わるとしたら、これをやる必要はあるだろうか?」と考えてみることを薦め、「『人生があと1年で終わる』と考えると、よけいなものがそぎ落とされ、今の自分にとって本当に大事なことだけが見えてきます。そうすれば、たくさんある『しなければならないこと』に優先順位をつけ、優先度の低いものについては、手放したり人にゆだねたりすることができるようになり、気持ちや時間に余裕が生まれるかもしれません」と述べます。

 

続く16「『自分は思い通りに生きられていない』と思い込んでいませんか?」では、人生はなかなか思い通りにならず、選択の自由が狭められていくとしながらも、「それでも生きている限り、選択の自由は与えられます。たとえば、自力でトイレに行けなくなった患者さんは、おむつを使うか、ポータブルトイレを使うか、尿留置カテーテルを使うかを選ぶことができます。身体が動かなくなった方は、誰に介護を頼むかを選ぶことができます。私たちは、この世を去る最後の瞬間まで、常に『より良い選択』をし続けることができるのです」と指摘しています。読んでいるうちに死と正対する悲嘆が癒され、元気になる本です。改めて死生観とは「死に方」ではなく「生き方」についての考えだと教えてくれます。わたしには『死ぬまでにやっておきたい50のこと』(イースト・プレス)という著書がありますが、その内容にも通じる部分が多かったです。

 

 

2022年4月1日 一条真也