一条真也です。
2月23日は「天皇誕生日」です。天皇陛下は62歳になられました。心よりお祝いを申し上げます。ちょうど70冊目となる「一条真也による一条本」をご紹介します。『決定版 終活入門』(実業之日本社)です。一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)では、終活コーディネーター資格試験制度を開始しました。その立役者である研修委員会の神田貢典委員長が社長を務めるアルファクラブ武蔵野さんが本書を大量購入して下さいました。
表紙には、タイトルとともに、「あなたの残りの人生を輝かせる方策」と書かれています。また帯には、「終活(人生の終い方)から修活(人生の修め方)へ」「『終活本』の決定版!」「エンディングノートの選び方から、多様化する葬儀(樹木葬、海洋葬、宇宙葬・・・・・・)や供養法(手元供養、骨壺)、おカネやモノの遺し方(遺留分放棄、断捨離から『親の家の片づけ』)まで、人生のしめくくりを充実させるためのノウハウを満載!」とあります。
本書の帯
日本人の寿命はついに男女とも80歳代を迎えました。現代日本は超高齢化社会です。いま、年間130万人近い人が亡くなり、2030年には160万人を超すと言われています。超高齢化社会は「多死社会」でもあるわけです。多くの人が死を意識しながら、延びた寿命を生きていくことになります。
本書の帯の裏
仏教は「生老病死」の苦悩を説きました。そして今、人生80年時代を迎え、「老」と「死」の間が長くなっているといえます。長くなった「老」の時間をいかに過ごすか、自分らしい時間を送るか――そのための活動が「終活」です。「終活」のテーマとは、おカネのこと、モノのこと、医療・介護のこと、葬儀お墓のこと、想い・思い出のこと。この5つが大きなテーマになると思います。これを「死ぬ前」と「死んだ後」で考えなければいけません。本書の目次構成は以下のようになっています。
はじめに「終末から修生へ、終活から修活へ」
[本書を読む前に]残りの人生を考えることから始めよう
【序 章】終活の心得――死が怖くなくなる方法
終活は必要――死は人生を卒業すること
「迷惑」というキーワード
「迷惑」は建前、「面倒」が本音
「あしなが育英会」のCM
「面倒くさいこと」の中にこそ幸せがある
「人の道」とは何か
葬儀をあげられる幸せを知る
死は最大の平等である
後悔しないために行う
還暦、定年が始め時
終活は、自分を見つめ直す貴重な活動
【第1章】準備のためにしたいこと
――エンディングノートの真の役割
エンディングノートという解決策
残された人たちが迷わないために
何も書くことがない
[コラム]自分史と辞世の歌・辞世の句
【第2章】葬儀こそ最高の舞台――最期をデザインする
*葬儀を考えることから始めよう
自分の葬儀をイメージする
葬儀は何のためにあるのか
葬儀が愛する人の心を守る
葬儀は究極の「自己表現」
時代に合わせて変化することはかまわない
故人の本当の気持ちに寄り添うこと
葬儀に関するトラブル
[コラム]葬儀への不満・ナンバー1は?
*アップグレードすべき葬儀
葬儀でおカネのかかるサービスとは
[コラム]葬儀の簡略化の風潮
*どんな葬儀をしたいか
葬儀について考えることは基本的に2つ
自由葬の中での迷い
家族葬の意味を考える
家族葬にする理由
喪主の立場で考える
葬祭業者選びの基本
何を基準に選べばいいか
葬儀の費用は贅沢?
日本の葬儀の半数以上は互助会
自然葬という選択
葬儀こそ最期を飾るセレモニー
モノではなく、中身にこだわる
[コラム]湯灌の儀
魂のターミナルを目指して
*どんな葬儀があるか
多様化する「葬」のスタイル
海洋葬――海は世界中につながっている
樹木葬――エコロジカルな葬法
宇宙葬――星になるハイテク葬法
月面葬――愛は月光となって降り注ぐ
【第3章】お墓という大問題――家をつなぐ
お墓も要らない?
墓地・お墓の手続き
改葬について
墓の種類と内容
増える納骨堂
墓地の種類は3つ
複数の墓を統合する選択
墓の未来形
手元葬という需要
ミニ骨壺やミニ仏壇
[コラム]お別れのアイテムを手作りで
【第4章】おカネの遺し方――最期をしめくくる
「自分らしく」を実現するための制度
お金の備えは「年金」が基本
老後資金の管理の5つのルール
無駄をチェックしてみよう
定年後、破産の引き金は家のローン
家に関する「終活」のポイント
相続税の問題は「考慮せず」でOK
[コラム]成年後見制度
遺言書の基礎知識
遺言書の種類
遺言書を書こう
遺言書を書くために
遺言書の書き方
遺言書の訂正
[コラム]遺留分放棄
【第5章】モノの整理術――心の整理につながる
断捨離という整理
断捨離とは「自分を見つめ直す」作業
メールや携帯の断捨離
遺品整理という断捨離
断捨離のコツ
究極の生前整理が「O・YA・KATA」
[コラム]読み終わった本で国際協力
「おわりに」
コラム「自分史と辞世の歌・辞世の句」
葬儀費用に関するデータも充実
「終活ブーム」の一方で、「終活なんておやめなさい」といった否定的な見方も出てきています。加熱するブームの中で、ちょっと気になることもあります。「終活」という言葉に違和感を抱いている方が多いことです。特に「終」の字が気に入らないという方に何人もお会いしました。もともと「終活」という言葉は就職活動を意味する「就活」をもじったもので、「終末活動」の略語だとされています。ならば、わたしも「終末」という言葉には違和感を覚えてしまいます。死は終わりなどではなく、「命には続きがある」と信じているからです。そこで、わたしは「終末」の代わりに「修生」、「終活」の代わりに「修活」という言葉を提案したいと思います。「修生」とは文字通り、「人生を修める」という意味です。
かつての日本は、たしかに美しい国でした。しかし、いまの日本人は美しいどころか醜く下品になり、日本人の美徳であった「礼節」を置き去りし、人間の尊厳や栄辱の何たるかも忘れているように思えてなりません。それは、戦後の日本人が「修業」「修養」「修身」「修学」という言葉で象徴される「修める」という覚悟を忘れてしまったからではないでしょうか。老いない人間、死なない人間はいません。死とは、人生を卒業することであり、葬儀とは「人生の卒業式」にほかなりません。人生を卒業するという運命を粛々と受け容れ、老い支度、死に支度をして自らの人生を修める。この覚悟が人生をアートのように美しくするのではないでしょうか。わたしは、すべての美しい日本人のために、『決定版 終活入門』を書きました。
その後、どうしても「終末活動」の略語である「終活」への違和感が消えなかったわたしは、2017年3月に『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)という本を上梓しました。日経電子版「ライフ」(現NIKKEI STYLE)に連載された人気コラムの単行本化です。古今東西の古典に描かれた老人像や、江戸時代としては長生きした徳川家康や『養生訓』で知られる貝原益軒らの生き方哲学に触れながら、老いは決して、忌避されるものではなく、人生の後半をこそ楽しむのが豊かな生き方であると強調しました。また、「老いるほど豊かに」の例として、最終的に豊かな死を迎えることを目的とした日本ならではの長寿祝いや、お盆参りや墓参などの老いにまつわるセレモニーの重要性と意義についても詳しく触れました。
2022年2月23日 一条真也拝