『ポップス歌手の耐えられない軽さ』 

一条真也です。
125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第164回分が掲載されています。今回は、『ポップス歌手の耐えられない軽さ』桑田佳祐著(文藝春秋)です。

f:id:shins2m:20220104232327j:plainサンデー新聞」2022年1月8日号

 

わたしが愛してやまない国民的バンド・サザンオールスターズのヴォーカリストであり、当代の日本を代表するポップス歌手である著者が「週刊文春」誌上で連載したエッセイをまとめた本です。著者自身のサウンドに大きな影響を与えたザ・ビートルズエリック・クラプトンボブ・ディランらへの畏敬の念や、矢沢永吉佐野元春内田裕也沢田研二尾崎紀世彦など敬愛する日本のミュージシャンたちへの賛歌がユーモアをまじえて綴られています。

 

なかでも、著者に最大の影響を与えたポップス歌手は、前川清でした。著者は、「生まれて初めてアタクシに、『歌声にシビれる』どころか、『その人の魂が乗り移る』ような経験をさせてくれたのは誰であったか・・・・・・。はい。それは、前川清さんであります!!」と告白し、さらに「1969年に内山田洋とクール・ファイブのヴォーカルとしてデビュー。『長崎は今日も雨だった』がいきなり大ヒットし、その後も『逢わずに愛して』『噂の女』『そして、神戸』『中の島ブルース』『東京砂漠』・・・・・・。歌い継がれる楽曲を続々と世に放ちます!!」と紹介しています。

 

また、著者は「前川さんの、あの顰めっ面した表情と、喉奥から“愚痴でも吐くように”絞り出されるみたいな歌声。幅広のネクタイと細身のスーツを纏い、長身を直立不動にしてマイクを握り佇むそのお姿・・・・・・。さらに、背後からは最強のドゥー・ワップ・コーラスが援護射撃する!! それをアタシは、彼がデビューの頃からずっとこの目に焼き付けて参りました」と回想します。ポップス歌手・桑田佳祐の原点がクール・ファイブとは!

 

さらに、著者は「今だからこそ断言しよう。『日本のロックにおいて日本語と英語の壁を取っ払ったのは、はっぴいえんどでも矢沢永吉でもサザンでもなく、誰あろうそれは内山田洋とクール・ファイブである』と!! だってそうなんだもん。前川さんの場合、よく言われる『大袈裟なヴィブラート』だって、実は泥臭い洋楽(的な)の発生だった。曲も良かった。無口で顰めっ面を貫いた前川清のキャラ作りも秀逸だった」と書くのでした。



前川清さんといえば、わが社のイメージキャラクターですが、著者がここまでリスペクトする偉大な歌手にCMソングおよび社名のサウンドロゴを歌っていただくなんて、なんとわが社はラッキーなのでしょうか! 「あとがき『女房の日記』」では、著者の奥様である原由子さんが「桑田家は明治初頭、小倉の城下町に住んでいた。丁度森鴎外が小倉に赴任して、『小倉日記』を書いた頃と重なる」と書いています。桑田家のルーツはわが街、小倉だったのです。想定外の感動でした。

 

 

2022年1月8日 一条真也