「一礼」という振る舞い

一条真也です。
28日、福岡国際センターで行われた大相撲十一月場所(九州場所)が千秋楽を迎えました。そこで、立ち合い不成立で力士が一礼する場面がありました。その礼儀正しい振る舞いに、相撲ファンから反響がありました。

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ヤフーニュースより

 

「ABEMA TIMES」が配信した「『サーセン』『ええよ』立ち合い不成立で力士が一礼 礼儀正しい振る舞いに相撲ファンから反響」という記事には、「前頭七枚目・宇良(木瀬)と前頭十五枚目・千代丸(九重)の取組で、立ち合い不成立となった際に両者が申し訳なさそうな仕草をする礼儀正しい一幕があり、視聴者から反響が寄せられた。制限時間いっぱいとなり、蹲踞の姿勢を取った両者。1度目の立ち合いで千代丸が両手をついて突進すると、一方の宇良とタイミングが合わず、行司から「まだまだ」と立ち合い不成立の指摘が入った。すると両力士は、互いに手を取り合うような素振りを見せ一礼。その後、揃って正面審判にも一礼した」と書かれています。


2度目の立ち合いは成立し、千代丸が上手投げで宇良を下しました。“スー女”と呼ばれる女性ファンたちは、人気の力士同士が一礼するシーンに、視聴者は「サーセン」「ええよ」「かわいいvsかわいい」「ほんわかするわ」とコメント欄で盛り上がっていました。力士の一礼といえば、ブログ「礼をしない横綱」で紹介したように、2016年の九州場所で礼をせずに土俵を下りた横綱白鵬の行為は言語道断でした。なぜなら、相撲は礼に始まり、礼に終わるからです。「礼」の専門家として、わたしはそう思います。「礼」を知らない横綱がようやく引退したことは、今年の大相撲界の最大の収穫でした。


「一礼」といえば、今年は大相撲だけでなく、プロゴルフの世界でも話題になりました。ブログ「『一礼』と『一同礼』」で紹介したように、4月11日に開催された男子ゴルフの米マスターズ・トーナメントでは、日本男子として初制覇した松山秀樹選手を支えた早藤将太キャディーの振る舞いが話題を呼びました。松山選手の優勝後、早藤キャディーは最終18番のグリーンでピンをカップに戻した後、脱帽してコースに向かって一礼したのです。この姿はSNSで拡散され、世界中から称賛コメントが多く寄せられました。元世界ランキング1位のリー・ウェストウッド(イングランド)は「これまで目にしたゴルフ、スポーツにおいて、おそらく最も敬意があり、相応しいことだ。ヒデキ、彼のキャディ、そして日本は素晴らしかった」と投稿しています。

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イラストでわかる 美しい所作と振る舞い』より

 

わたしは、このエピソードに静かな感動をおぼえました。それは、早藤キャディーの「一礼」に対してはもちろんですが、日本人なら何ということのない「一礼」が世界中の人々に感動を与えた事実を素晴らしいと思いました。今年、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、莫大な費用をかけて東京五輪が強行開催されましたが、礼をするというノーコストのふるまいで世界中の人の心を動かし、日本のイメージを大いに向上させたことは快挙ではありませんか。わたしは、このエピソードを『イラストでわかる 美しい所作・振る舞い』(メディア・パル)の冒頭で紹介しました。同書はおかげさまで大変好評で、ベルコ、レクスト、サン・ライフ、117といった冠婚葬祭互助会の名門企業からも大量注文が相次いでいます。ご購入いただいた互助会各社様には、心より感謝申し上げます。

f:id:shins2m:20211106112503j:plainイラストでわかる 美しい所作と振る舞い

 

2021年11月29日 一条真也