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一条真也です。
たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。今回の「こころの一字」は、「真」です。

 

 

異色の哲学者であった中村天風は、哲学を研究し、考えて考え抜いたときに、やがてこの宇宙の造物主の心には「真」「善」「美」以外にはないと悟りました。そして「真」とは偽りのないまことであるといいます。真なるもの、真理を追究する人間の営みこそ哲学にほかなりませんが、戦後76年を経過した今の日本には哲学がないという欠陥が明らかになってきました。政治家も経営者も、多くの者に哲学がありません。政治には首尾一貫した思想、哲学が必要です。大衆に迎合して格好よさだけを求め、思想、哲学のない政治は必ず行き詰まり、そして国民に大きな禍を与えます。経営者にしても、大半の人は哲学を持っておらず、企業のスキャンダルは絶え間なく起こっています。

 

 

ところが、真理の追究をめざす経営者がまったくいないわけではありません。しかも「経営の神様」と呼ばれる人物が偉大な哲学者でもありました。松下幸之助翁は「昭和の経営の神様」と称され、稲盛和夫氏は「平成の経営の神様」と称されます。しかし、それ以上に2人には経営者としてのみならず、人間としての成功をもめざしているという共通性があります。2人の経営、人間、人生、自然、そして宇宙の真理に至るまでの深い洞察と見識には、まさに哲人経営者と呼ぶにふさわしいものがあるのです。

 

 

松下幸之助翁は言いました。宇宙に存在するすべてのものは、つねに生成し、たえず発展する。万物は日に新たであり、生成発展は自然の理法である。人間には、この宇宙の動きに順応しつつ万物を支配する力が、その本性として与えられている。人間は、たえず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし、活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができるのである、と。

 

 

稲盛和夫氏は言いました。魂を浄化、純化、進化するために、人類は有史以来大変な苦労をしてきた。人間としての最終目的が魂の浄化にあるために、一生涯をかけて修行している人が数多くいるわけだ。わたしたちは今こうして現世に生まれてきて、事業経営を行なっている。自分一人生きるのも大変なのに、一人でも二人でも従業員を雇い、その家族を養っていくことは並の苦労ではできない。そのことがすでに、利他行であり、魂の浄化への道なのだ、と。

 

 

真理を問うことは、志の高さにつながります。今後のマーケットは経営者の志を見て企業を評価するようになると言われています。ビジョンやミッションやアンビションはもちろん、フィロソフィーまで求められるのが新しい企業像ではないでしょうか。なお、「真」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。

 

 

2021年11月21日 一条真也