「グリーフケアと葬儀」オンライン講義

一条真也です。
10月27日、上智大学グリーフケア研究所客員教授として特別講義を行いました。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大によってオンライン形式でした。新規感染者が減少した今年こそはリアル講義を楽しみにしていたのですが、残念ながら今年もオンライン講義でした。

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開始前のようす

f:id:shins2m:20211027183854j:plain開始前の打ち合わせ

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受講生が続々と入ってくる!

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マイクを持って挨拶しました

社会人の受講生も多いので、18時45分から講義を行いました。ただし、いつもの東京・四谷の上智大学キャンパスからではなく、小倉の松柏園ホテルのメインバンケット「グランフローラ」からのオンライン講義です。上智大学グリーフケア研究所島薗進所長もオンラインで参加して下さいました。

f:id:shins2m:20211027185222j:plain最初に自己紹介しました

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冒頭で動画を流しました

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これまでの取り組みを紹介

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オンライン講義のようす

冒頭、わたしは姿勢を正して、「わたしは、冠婚葬祭業を本業としております。この仕事に心から誇りを持っています。これまで、わたしが学んできたこと、行ってきたことのすべて、いわば人生のすべてをかけて、グリーフケアの研究と実践に尽力したいと考えています。どうぞ、よろしくお願いいたします」と受講生のみなさんに対して深く一礼いたしました。まずは、「グリーフケアの時代~サンレーの取り組み」と題する動画を流しました。

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儀式文化=冠婚葬祭+年中行事

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儀式の役割

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「こころ」と「かたち」のメタファー

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水とコップで「こころ」と「かたち」を説明

 

講義のテーマは「グリーフケアと葬儀」です。まずは儀式の定義、儀式の役割について説明し、それから「葬儀」についての自分の考えを明らかにしました。わたしは、人類の文明も文化も、その発展の根底には「死者への想い」があったと考えています。約7万年前に、ネアンデルタール人が初めて仲間の遺体に花を捧げたとき、サルからヒトへと進化しました。その後、人類は死者への愛や恐れを表現し、喪失感を癒すべく、宗教を生み出し、芸術作品をつくり、科学を発展させ、さまざまな発明を行いました。

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葬儀についての自説を展開

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すべての儀式は「卒業式」

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通過儀礼とは?

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問われるべきは「死」ではなく「葬」である!

 

つまり「死」ではなく「葬」こそ、われわれの営為のおおもとなのです。葬儀は人類の存在基盤です。葬儀は、故人の魂を送ることはもちろんですが、残された人々の魂にもエネルギーを与えてくれます。もし葬儀を行われなければ、配偶者や子供、家族の死によって遺族の心には大きな穴が開き、おそらくは自死の連鎖が起きたことでしょう。葬儀という営みをやめれば、人が人でなくなるように思えてなりません。葬儀という「かたち」は人類の滅亡を防ぐ知恵なのではないでしょうか。

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あなたは、どういう葬儀がしたいですか?

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日本人の死生観について

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パンデミックと葬儀

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グリーフフル・ソサエティ

それから、「グリーフケア」について話しました。わたしたちの人生とは喪失の連続であり、それによって多くの悲嘆が生まれます。大震災の被災者の方々は、いくつものものを喪失した、いわば多重喪失者です。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失った。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは特別です。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするためにあるのです。

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グリーフケアの必要性を説く

f:id:shins2m:20211027195400j:plainグリーフケアの時代』を紹介

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悲しみがもたらすもの

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ハートフル・エッセンシャルワーク

 

上智大学グリーフケア研究所といえば、島薗進先生の所長就任は2013年4月1日のことで、ブログ「島薗進先生からのメール」に書かせていただきました。さらには、ブログ「鎌田東二先生からのメール」に書いたように、2016年4月から「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生が特任教授に就任されました。わたしは、島薗・鎌田両先生との御縁で16年・17年と2年連続で特別講義を担当し、18年の4月から客員教授を拝命しました。19年には3人で『グリーフケアの時代』(弘文堂)という共著も出すことができました。佐久間庸和とは、わたしの本名です。島薗先生は東京大学名誉教授、鎌田先生は京都大学名誉教授でもあり、ともに日本の宗教学の世界のツートップです。このお二方と小生の名前が並ぶとは、今も信じられません。まことに光栄なことであります。

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島薗先生による講義の総括

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質疑応答のようす

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真摯にお答えしました

 

講義後の質疑応答では、3名の方が興味深い質問をして下さいました。わたしも、真摯に答えさせていただきました。「月あかりの会」についての質問もありました。2010年6月、わが社では念願であったグリーフケア・サポートのための自助グループを立ち上げました。愛する人を亡くされた、ご遺族の方々のための会です。月光を慈悲のシンボルととらえ、「月あかりの会」という名前にしました。同会の活動をはじめ、「隣人祭り」や「ともいき倶楽部」「笑いの会」など、これまで実践してきた実例を紹介しながら、無縁社会=グリーフ・ソサエティを超える方策についての私見を語りました。

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受講生の質問をお受けしました

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わかりやすく説明しました

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お疲れ様でした!

 

こうして、この日の「グリーフケアと葬儀」についてのオンライン講義は無事に終了しました。これまで自分なりに冠婚葬祭業界で実践してきたことを踏まえて、さらなる研究を重ね、グリーフケアの実践に努めたいと願っています。次回、11月10日は「グリーフケアと読書・映画鑑賞」をテーマにした講義をオンラインで行います。

 

2021年10月27日 一条真也