呪わずに、祝おう!

一条真也です。
26日、朝から悲しくて泣いてばかりです。
本日、秋篠宮家の長女眞子さまと小室圭さんとの婚姻届が提出、受理されました。眞子さまは民間人の「小室眞子さん」となり、皇族の身分を離れました。女性皇族の結婚時に通例行ってきた結婚式や関連行事は全て省略した前代未聞の「異例の結婚」となりました。

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ついに結婚されました!(NHKより)


婚姻届は26日午前10時頃、宮内庁職員によって自治体に提出されました。眞子さんは午前10時頃、30年間住んだ秋篠宮邸を離れました。宮邸前で秋篠宮ご夫妻と妹の佳子さまとそれぞれ言葉を交わしました。最後に、佳子さまとは抱き合って別れを惜しむ場面もありました。皇室としては異例のハグでしたが、この場面をテレビで見ていたわたしは、秋篠宮ご夫妻の心中、また佳子さまの温かい思いやりに涙が出ました。これほど強い絆で結びついた姉妹は、なかなかいないと思います。


その後、眞子さんは職員や報道陣に一礼して車へ。ご夫妻や佳子さまが手をふって見送りました。弟の悠仁さまは中学校に登校して立ち会いませんでした。それから、眞子さんは小室さんとともに午後2時から、皇居正面にある「グランドアーク半蔵門」で記者会見に臨みました。最近の女性皇族の結婚では、結婚式直後にその会場で記者会見も行われてきましたが、今回は結婚式がなく、記者会見のみとなりました。会場費用に公費は使われず、小室夫妻が自費で負担したとか。お二人がそろって公の場に姿を見せたのは、2017年9月の婚約内定会見以来です。あれから4年、お二人は激動の時を過ごしてきました。

 

記者会見でのお二人は、見つめ合い、言葉を交わした後に着席。眞子さんは冒頭、「圭さんはかけがえのない存在です。結婚は、自分たちの心を大切に守りながら生きて行くために、必要でした」と語りました。圭さんは、「私は眞子さんを愛しております。1度きりの人生を愛する人と過ごしたいと思っております。眞子さんと人生を歩みたいという思いを持ち続けられたのは支えてくれた人のおかげです」と話しました。わたしは、ここまで堂々と言い切った小室圭さんのことを「大したものだ」と思いました。

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ヤフーニュースより

 

フランス在住の実業家で、ベストセラー作家の西村博之ひろゆき)氏は、自身のツイッターで、「皇族がお見合いではなく、恋愛結婚をしようとすると、学生時代の知り合いぐらいしか機会は無いわけです」とした上で、「バッシングに耐えながら異国の地で生活するための基盤を用意出来る『一般男性』なんてそうそう居ないので、眞子さんはマジで人を見る目あると思うおいらです」と持論を展開しました。さらに「これは惚れる気持ち分かりますよ。このタイプの人がお見合いとかで今後出て来ることは無いですからね」と小室さんを大絶賛していました。ひろゆき氏の意見ですが、普段は「逆目を狙ったな」とか「ずれてるな」と思うことが多いのですが、今回は共感しました。



これまで、お二人はマスコミやネットで激しい誹謗中傷を浴びてきました。マスコミの誹謗中傷に不快感を持っているという法政大学前総長の田中優子氏は、「以前から、美智子上皇后の時も、雅子皇后の時にもそういうこと(誹謗中傷)があった。で、今度は眞子さまが単に好きな人と結婚したいというだけのことなんですよね。彼ら(皇室)は国民のやることをなかなか批判できないし、それから訴訟も起こせないんです。つまり非常に弱い立場にいる。しかも女性ばかりです。皇室の中の女性ばかりを誹謗中傷の対象にしているっていう気がしてならないんです」と発言していますが、わたしもまったく同感です。「結婚反対」のデモまで行っている連中もいましたが、これは基本的人権を侵害する憲法違反の行為にならないのでしょうか?



今月19日、眞子さまは皇室の祖先などを祀る宮中三殿を私的にご参拝し、結婚の報告をされました。22日には天皇皇后両陛下のもとをおひとりで訪ね、お別れの挨拶をされました。女性皇族が結婚される場合、一般の結納にあたる「納采の儀」や結婚の日取りを伝える「告期の儀」など、さまざまな儀式があります。しかし、眞子さまの結婚では、そうした儀式は一切行われませんでした。それにしても、皇族の女性が一切の儀式を行わずに結婚されるという事態が、わたしは悲しくて仕方がありません。また、皇族の儀式文化のみならず、日本人の冠婚葬祭そのものの存続を脅かす出来事であると思っています。

f:id:shins2m:20211026160647j:plainヤフーニュースより

 

宮内庁関係者によれば、「小室圭さんと母・佳代さんを取り巻く金銭トラブルや疑惑が解消されておらず、世間が祝福ムード一色ではないということが、儀式を行わない大きな理由です。儀式の取りやめは、秋篠宮さまのお考えだったと聞いています。しかし、一方で天皇陛下は、女性皇族の結婚の中心儀式である『朝見の儀』は執り行うべき、というご意志をお持ちだったそうです」とのこと。朝見の儀とは、皇籍を離脱する女性皇族が両陛下にお別れの挨拶をする儀式で、行うかどうかは陛下がお決めになります。他の儀式は、秋篠宮家のプライベートなものです。ゆえに秋篠宮さまの一存で不開催は決められますが、朝見の儀天皇皇后両陛下が直接関わるだけに、陛下のご意志は無視できるものではないはず。しかし、秋篠宮さまは最終的に「やはり儀式を行うべきではない」と押し切られたとか。



日本はさまざまな年中行事や冠婚葬祭のある儀式の国ですそして、その中心にあるのは皇室の儀式文化です。天皇および皇室という存在は儀式によって成り立っていると言えますが、令和元年(2019年)11月14日の夕方から15日の夜明けまでは、「大嘗祭」の中心儀式である「大嘗宮の儀」が皇居・東御苑で古式ゆかしく行われた。これは天皇陛下皇位継承に伴い、一世に一度だけ行う皇室伝統の大がかりな神事だ。即位の礼大嘗祭と一連の儀式を合わせ、「御大礼」とも称されます。儀式産業そして儀式文化に携わる者として、この時代に立ち会えた幸運に感謝したものです。そして、新しい御代が誰にとっても平穏で、そして儀式の華ひらく時代となることを心より願いました。大嘗祭の終わった日には、全国各地で七五三が行われました。わたしは、謹んで「大嘗の祭終わりて七五三 儀式なくして日の本はなし」という歌を詠みました。

 

儀式論

儀式論

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拙著『儀式論』(弘文堂)にも詳しく書きましたが、儀式は「礼」を形にしたものです。わたしは、「令和」の時代は「礼輪」の時代となるように思いました。日本中の至ると場所で冠婚葬祭が大切にされ、「おめでとう」と「ありがとう」の声が行き交う社会が実現するのではないかと期待しました。しかし、コロナ禍によって日本中の七五三や成人式や結婚式が中止・延期となり、「礼輪」どころか「礼無」の状況が続いたことは周知の通りです。くだんの宮内庁関係者は、「皇室の伝統の守護者であり、今後も未来永劫と続いていく皇室に責任を持たれる立場の陛下としては、前代未聞のイレギュラーな形での皇籍離脱は、皇室の伝統と歴史に信頼を寄せる国民の気持ちを裏切ることになりかねず、慎重であらねばならないとお考えだったのでしょう」と語ってそうです。この天皇陛下のご提案を秋篠宮殿下は辞退されたそうですが、わたしは「朝見の儀」だけは執り行うべきだったと思います。

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ヤフーニュースより

 

ブログ「若い二人に結婚式を!」に書いたように、わたしは、お二人が自由の聖地であるニューヨークに行く前に、わたしはお二人に結婚式を挙げていただきたいと思いました。「皇室の儀式も結婚式も披露宴もなし」ではなく、せめて民間人としての結婚式だけは挙げていただきたいと思いました。十二単は着れなくても、眞子さんにウエディングドレスを着ていただきたいと願ったのです。そして、冠婚葬祭業界が一丸となって、お二人に結婚式をプレゼントさせていただければいいなと思いました。眞子さんが民間人となった時点で、東京で結婚式を挙げてから渡米していただくことはできないかと考え、そのアイデアを業界内の会議でも提言しました。しかし、諸般の事情で、わたしの願いは叶いませんでした。まことに残念です。

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サンデー毎日」2017年10月29日号

 

いかなる理由があるにせよ、わたしは、結婚するすべての若者には結婚式を挙げていただきたいと心から願っています。その理由はブライダル業界のためでも、個々の結婚式場やホテルのためでもなく、新郎新婦自身が幸せになるためです。2017年9月の婚約内定会見の直後に、わたしは「サンデー毎日」に連載中だった「一条真也の人生の四季」に「呪いの時代に、祝いの光を!」というコラムを書きました。わたしは「祝う」という営み、特に他人の慶事を祝う心と行為が人類にとって非常に重要なものであると考えています。よく「ありがとう」は最強の言霊だなどと言われますが、「おめでとう」はそれ以上のパワーを秘めているように思えます。なぜなら、「ありがとう」はレシーブですが、「おめでとう」とはサーブだからです。

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サーブとしての「祝い」には、ものすごい力があります。「祝」に似た字に「呪」がありますが、どちらも「兄」とつきます。漢字学の第一人者だった白川静によれば、「呪」も「祝」も神職者に関わる字であり、「まじない」の意味を持ちます。「呪い」も「祝い」ももともと言葉が「告(の)る」つまり「言葉を使う」という意味であり、心の負のエネルギーが「呪い」であり、相手を全否定し、闇をもたらします。一方、心の正のエネルギーが「祝い」であり、相手を全肯定し、光をもたらします。ネガティブな「呪い」を解く最高の方法とは、冠婚葬祭に代表される「祝い」を行うことなのです。


いま、世界も日本も、「呪い」の応酬がすさまじいと言えます。アメリカと中国、自民党と野党・・・それぞれが相手を完全破壊すべく、「呪い」を仕掛け合っています。ネット社会での個人の誹謗中傷、学校でのいじめ、会社でのハラスメントも立派な「呪い」です。このような「呪い」を「祝い」によって解くことは、暗闇を太陽の光が照らすようなものではないでしょうか。わが社の冠婚施設では、結婚披露宴のみならず、長寿祝い、厄除け祝い、還暦祝いなどが開かれ、多くの方々が参加しています。これからも、「おめでとう」と「ありがとう」の声、心のサーブと心のレシーブが行き交う社会の実現をめざしたいです。最後に、小室圭さんと眞子さんのご結婚に心よりお祝いを申し上げます。お二人の末永いお幸せを願っております。

 

2021年10月26日 一条真也