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一条真也です。
たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。今回の「こころの一字」は、「気」です。


産霊気功を行うサンレーグループ社員たち

 

わが社は毎日の朝礼において、全員で気功を行っていました。何度も新聞やテレビで紹介されたこともあり、わが社のことを「気功の会社」とか「気の経営」と表現する人も一時は多かったようです。「気」とは何か。まず、宇宙と人間との関わりから考えてみましょう。人間、大宇宙すなわち自然の中に生命を与えられた小宇宙です。東洋医学では自然と人間との関係を示すのに五行説を用います。


1年の春夏秋冬を四季と呼びますが、夏と秋のあいだに土用が入って、季節は五季。人間の身体には肝、心、脾、肺、腎があって、これを五臓と呼びます。また、目、舌、口、鼻、耳から感じる感覚を五感と呼び、味についても五味という表現があり、自然と人間との関わりで「5」が重要なキー・ナンバーになっています。さらに、1年は12ヵ月、人間の体内に走っている経路は12脈、1年は365日、ツボと呼ばれる体内の経穴は365カ所、大動脈は12脈、静脈は365脈、大きな関節は12、小関節は365といったふうに、宇宙と人体はミステリアスなまでに対応しているのです。単なる比喩ではなくて、まさに人体とは「小宇宙」そのものなのです。

f:id:shins2m:20211023230235j:plain死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)より

 

その宇宙には気という生命エネルギーが満ちています。人間や動植物は、宇宙から気のエネルギーを与えられて生まれ、また宇宙の気のエネルギーを吸収して生きているのです。東洋医学では、人間は天の気(空気)と地の気(食物)を取り入れて、体内の気と調和して生存しているといいます。科学的に見れば、気は一つの波動なのです。したがって気が乱れると病気になってしまいます荘子は「気が集まればそれが生命である。気が拡散すればすなわち死である」と言いました。人間というものは天の気、地の気が集まってできた存在であり、その気がなくなれば死ぬというのです。東洋医学というより東洋思想の根本的な考えは「気」を中心に置いています。



東洋思想は、こう考えます。宇宙は混沌としたカオスの状態であり、その中から陰と陽の気が合体して一つになり、人間の生命が宇宙に誕生した。よって、人間の生命は気の統合によって生まれ、気によって生かされている、と。人間の身体とは、気の流れそのものにほかなりません。ちょうどバッテリーのようなもので、放電ばかりしていると、電気がなくなってしまいます。長くもたせたいなら、ときどき充電しなければなりません。人間も同じで、気の充電をしなければ気力もなくなり、やる気も起こらなくなって、ついには病気になって死んでしまいます。そして、気を充電する身体技術のことを「気功」と呼ぶのです。


気功で大事なのは、朝起きて自然のフレッシュな気を深呼吸すること。朝の5時から5時半という時間帯は植物も動物も目覚め、自然の気を取り入れます。人間も体内に朝の大気を丹田呼吸という下半身呼吸によって取り入れ、気を養うことを心がけるべきでしょう。また、朝、太陽の光を浴びることも大切です。さらには睡眠や食事も気の充電法として大事です。人間にとって睡眠は欠かすことのできないものであるとともに、自然のリズムに従った生物時計を回復する必要があります。人間は眠ることによって、日中放出した気を充電します。また、食物は地の気です。「医食同源」という言葉がありますが、食とは医であり、薬なのです。自然の摂理に従って旬のものを食べ、味に気づき、過食せず、規則正しく食を取ることが大事です。

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「気」を追求した佐久間進会長

 

わが社には、これらの考えをふまえ、独自に開発した「産霊気功」というものがあります。約30年前に中国の大連において初めて気功を知った佐久間進会長が、自ら開発して、改良を重ねたものです。現在でもわが社の各職場で行われている朝の気功として受け継がれています。わが社は冠婚葬祭やホテルというホスピタリティ・サービスを事業としますが、これらの仕事に携わる者にとって、最も必要とされるのがプラスの気です。なぜなら、自分自身が充電した気をお客様に対して放電しなければならないからです。サンレーグループの社員自らが気を充実させ、元気、陽気、楽しい雰囲気、厳かな雰囲気といったプラスの気をお客様に与えること、それが産霊気功の目的なのである。

f:id:shins2m:20201110212539j:plainサンレーの「気業宣言」

 

サンレー創業以来、「気づき、気配り、気働きこそホスピタリティそのもの」を会長は信念としてきた。その意味で、サービスは「気」に通じ、サービス業とは「気業」であるとも言えるでしょう。さらには、サービス業に限らず、企業そのものが気業であるとも考えられます。企業とは、経営者の持っている気が社員に乗り移る一個の生命体である、とわたしは思います。経営者が強気で陽気なら、強気で陽気な会社となり、その逆なら、弱気で陰気な会社となるのです。わが社は1988年に「気業宣言」を導入し、ことあるごとに「気」の重要性を社員に説いてきました。産霊気功を朝礼に取り入れたのもそれ以来です。



中村天風は「あらゆる力というものは、それが何の種類であると問わず、すべて気というものから生まれる」と語りました。積極的に力強く人生を生き抜くためには宇宙エネルギーを取り入れることが欠かせないという天風の教えの源流には、インドのヨガがあります。ヨガには、プラナヤマ(呼吸法)によって宇宙にあまねく存在しているプラーナ(宇宙エネルギー)を呼吸していくという考えですが、このプラーナは「活力」とも「気」とも呼ばれます。プラーナにしろ活力にしろ気にしろ、呼び方はさまざまですが、それらを取り入れ、活力のある会社にすることが何よりも大切でしょう。なお、「気」については、『孔子とドラッカー 新装版』(三五館)に詳しく書きました。

 

 

2021年10月24日 一条真也