『岸惠子自伝』 

一条真也です。
125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第161回分が掲載されています。今回取り上げる本は、『岸惠子自伝』岸惠子著(岩波書店)です。

f:id:shins2m:20210929121042j:plainサンデー新聞」2021年10月2日号

 

わたしは自伝が好きでよく読むのですが、最近では一番面白かった本です。万華鏡のように煌めく人生の軌跡が記されていました。著者は、1932年横浜生まれ。1951年、女優デビュー。1957年、フランスの医師・映画監督であるイヴ・シァンピとの結婚のため渡仏。1963年、長女デルフィーヌ誕生。1975年離婚。女優として映画・TV作品に出演し、主演女優賞のほか数多くの賞を受賞しています。また、作家、国際ジャーナリストとしても活躍を続けています。女優としては日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、作家としては日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している著者ですが、こんな才色兼備の女性はなかなかいません。

 

古い日本映画が好きなわたしは、もともと著者のファンでした。1972年の斎藤耕一監督の「約束」が特に好きで、影のあるヒロインを演じた著者の美しさに魅了されました。本書の存在を知ったのは、2021年5月3日に放送されたテレビ番組「徹子の部屋」を偶然観たことからでした。同番組に久々に登場した著者は88歳の米寿を迎えていましたが、それが信じられないほどの美と健康を誇っており、まことに感嘆しました。著者はコロナ禍でも多忙な日々を過ごしていたそうで、それは88年間の人生を思い起こし、自伝にまとめる作業にとりかかっていたためと語っていました。1日に6時間にもおよぶ執筆で、書斎にこもる日々を送った結果生まれたのが本書だったのです。

 

早速、アマゾンで購入しましたが、雑事に追われ、ようやく本書が読めたのは7月の中旬でした。一読して、「日本にこんなすごい女性がいたとは!」と感服しました。本書には、戦争体験、女優デビュー、人気絶頂期の国際結婚、医師・映画監督であるフランス人の夫と過ごした日々、娘デルフィーヌの逞しい成長への歓びと哀しみなどが情感ゆたかな文章で綴られています。その馥郁たる人生を、ジャン・コクトー川端康成三島由紀夫市川崑長谷川一夫高峰三枝子田中絹代美空ひばり佐田啓二鶴田浩二力道山といった、さまざまな個性あふれる人々との交流や、中東・アフリカで敢行した苛酷な取材経験なども織り交ぜています。

 

著者が女子高生のとき、バレエのレッスン後に、有楽町の映画館でコクトーの「美女と野獣」のスティル写真に目を奪われました。校則違反を覚悟して鑑賞した著者の人生は、この1本の映画によって大きく変わります。著者は「白黒の映像は美しく、わたしは『映画』という不思議に魅せられた」と書いていますが、映画だけでなく、人との縁の不思議、人生の不思議をも教えてくれる1冊です。

 

 

f:id:shins2m:20211001175406j:plain

 

なお、同じ「サンデー新聞」2021年10月2日号に、この連載コラムの記事を1冊にした拙著『心ゆたかな読書』(現代書林)のプレゼント告知が掲載されています。10名様へのプレゼントで、応募締切日は10月6日(水)です。同紙には、「本紙好評連載中の『ハートフル・ブックス』が書籍化。『論語』から『鬼滅の刃』まで、150冊の古今東西の名著を、万巻の書を読み解いてきた最強の読み手が厳選!心をゆたかにする本たちとの至高の出合いがここにある!」と書かれ、以下の応募要項が記されています。

提供(株)サンレー
TEL.093-551-9950
住所.小倉北区上富野3-2-8
応募方法
①ご希望のプレゼント名②郵便番号③住所④氏名⑤年齢⑥電話番号⑦職業⑧性別⑨下記コーナーReader‘sVOICE 次のお題「買ってよかったもの」のエピソードを明記し、ハガキ・メール・WEBフォームでご応募下さい。

◎ハガキからのご応募
〒800-0286 サンデープレゼント係
※住所は不要です
◎WEB・メールからのご応募
WEB応募 「サンデーポータル」で検索
メール応募 present@sunda-ns.co.jp

◎QRコードからもご応募頂けます

※厳正なる抽選の結果、プレゼントをお送りさせていただきます。
※当選は発送をもってかえさせていただきます。
※ハガキの応募は消印有効。

 

 

2021年10月2日 一条真也