リブランディングによる他社会館の価値創造

一条真也です。
いま、新幹線のぞみ29号で名古屋から小倉に向かっています。前夜の通夜式に続いて、28日は出雲殿互助会取締役会長の故浅井明子様の告別式に参列しました。

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荘厳な告別式でした

f:id:shins2m:20210927172849j:plainイズモ葬祭名古屋  貴賓館」の前で

会場は名古屋駅近くの「イズモ葬祭名古屋  貴賓館」でしたが、7階建ての非常に立派な会館で驚きました。浅井社長のお好きな赤ワインに例えれば、オーパスワンのような味があります。会館といえば、前夜、冠婚葬祭文化振興財団の井辺専務理事から「お宅の会館が『フューネラルビジネス』に紹介されていましたね」と言われました。

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「フューネラルビジネス」2021年10月号の表紙

 

わたしはまったく知らなかったのですが、冠婚葬祭業界のリーディング・マガジンである「月刊フューネラルビジネス」の最新号にサンレー北陸の「神田紫雲閣」が紹介されたようです。同誌の2021年10月号の特集は「リブランディングによる他社会館の価値創造」でした。

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「フューネラルビジネス」2021年10月号

 

特集記事のリード文は、「以前から中小葬儀社を中心に葬祭事業からの撤退というニュースは漏れ伝わっていたが、コロナ禍の影響でその動きに拍車がかかっているようだ。その背景には、会葬者減に伴う経営不振や従前から指摘されている後継者不在がある。だが、(その意識の程度の差はあれど)すでに社会インフラとして消費者生活を支える葬祭事業者の撤退はつまり、その地域における葬祭サービスの担い手の喪失であり、失ってはじめてその存在の大きさに気づく住民も多いはずだ。こうしたなか、撤退を表明した企業を救う友好的『M &A』『事業提携(アライアンス)』といった動きもあれば、出店戦略上の『敵対的買収』などが水面下でより活発化している。会館開設手法第3弾となる今号では、他社会館をグループインして価値創造をなし得た5社6事例をクローズアップ。そのプロセスと価値創造の手法について学ぶ」と書かれています。

f:id:shins2m:20210928144505j:plain「フューネラルビジネス」2021年10月号

 

そのケーススタディとして、「多様化する葬送ニーズに応えるべく1日1件貸切型として他社会館取得」のタイトルで以下のように書かれています。
北九州市を拠点に、福岡県、大分県、宮崎県、沖縄県の九州・沖縄エリアに加え、北陸の石川県で冠婚葬祭事業を展開する(株)サンレー(本社北九州市小倉北区、社長佐久間庸和氏)。現在、その会館数はグループ全体で90か所(2021年8月現在)と順調に版図を拡大している。石川県内においては、金沢市小松市白山市加賀市野々市市七尾市珠洲市で15拠点の葬祭会館を展開している。そのなかの1つである『神田紫雲閣』(金沢市)は、他社会館を購入後、リニューアルオープンした。本稿では、その経緯等について同社北陸エリア(以下、サンレー北陸)の紫雲閣事業部部長である青木博氏に話を伺った」

 

また、「老舗葬儀社倒産後 競売となった会館を購入」として、以下のように書かれています。
「石川県のほぼ中央に位置する金沢市は、石川県の県庁所在地であり北陸最大の都市である。21年8月1日現在、人口は46万2,448人(国勢調査人口速報集計)を数える一方で、年間死亡数は2011年に4,000人を超え17年には4,526人と右肩上がりの状況にある(厚生労働省人口動態調査)。このため、金沢市内には10社34会館が凌ぎを削っている。前述のとおり、サンレー北陸は石川県内15拠点の葬祭会館を展開しており、県都金沢市においては、JR西日本・IRいしかわ鉄道が乗り入れる金沢駅に近接するサンレー北陸のフラッグシップ店『金沢紫雲閣』をはじめ、7か所の会館を展開し、会員サービスに努めてきた。今回、取り上げる『神田紫雲閣』もそのなかの1つだが、同会館はもともと『ほくそう セレモニー神田』(以下、旧館)が営業していたものを、同社が取得しリノベーションを施したもので、17年1月、『神田紫雲閣』として新生オープンしている。前経営体における年間施行件数は60件ほどだったが、徐々に減少。さらに、同会館は北陸自動車道金沢西ICに続く県道25号沿いに立地するものの、正確に言えば北陸本線を超える高架下の側道に入らなければならず、かつ、当時は駐車スペースも少なく、使い勝手やアクセス面にもやや難点を抱える会館だったという。かかる課題・問題を抱える会館でありながらも、サンレー北陸が旧館を取得するに至った経緯について、青木部長は、『旧館の競売情報を得るにあたり、社内でも購入すべきか否かについては議論されたところでした。というのも、旧館は、すでに当社会館が展開する3会館(金沢紫雲閣泉が丘紫雲閣古府紫雲閣)の2kmエリアのほぼ中央に位置していたことから、会員カバー率からすればすでに十分ではないかという意見もありました。しかし、当社が跡地を購入することでさらに市南西部エリアの施行を盤石にしていくべきという意見もあったのです。そうした経緯を経て、最終的に購入という決断に至りました」と語る」

 

次に、「館内諸室のダウンサイジング化図り 中小規模葬特化の道を選択」として、以下のように書かれています。
「旧館はサンレー北陸が展開する金沢紫雲閣(84年開業、3式場)、泉が丘紫雲閣(89年開業、2式場)、古府紫雲閣(98年開業、2式場)の2kmエリアのほぼ中央に位置している。旧館の諸室構成をみると、1階は100~150人規模に対応する大式場、2階は小式場と遺族控室といった構成となっていた。しかし、近接する既存3会館の大式場も100~250人に対応する規模であったため、1式場しかない旧館を既存3会館と同じ位置づけにする必要はない。そこで、会館のリノベーションにあたっては、当時の時代の流れを鑑み、中小規模の葬祭会館とすることで既存3会館との差別化を図るとともに、1日1件貸切型をセールスポイントとした葬祭会館として位置づけるようにした。具体的には、1階の大式場部分を最大50人規模の式場とリビング、ベッドを備えた仮眠室、和室、浴室などからなる開放的な遺族控室に変更。2階は大きな改装を行なわず、既存の遺族控室として利用していた和室をそのまま法要会場として、2階小式場は会食室として利用。また、2室あった寺院控室を1室に集約させるなどの改装に留めた。一方、外観については、躯体をそのまま活かし壁面をアイボリーベースに変更するとともに、壁面サイン看板などは、道路高架下ということもあるなか、条例で許される範囲内まで拡張し、高架上を走るドライバーや近隣住民からの視認性をさらに高めるといったリノベーションを実施した」

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さらに、記事には以下のように書かれています。
「なお、旧館時代は駐車スペースも十分とはいえない状況だったが、旧館に隣接する横地が、旧経営会社の本社だったこともあり、こちらの土地も取得して、現在は40台収容可能な駐車場を整備している。こうした経緯を経て誕生した神田紫雲閣は、既存会員からの評価も高く、特に近隣に住む会員からは『近くにできて便利になった』という声があがっているそうだ。そのほか、『小規模な葬儀で故人をお見送りしたいという葬家様はもちろん、見学会や葬儀に参列され事前に会館をご覧いただいた葬家様からは、このエリア付近の方でなくでも、わざわざこちらの会館で施行を依頼される方も多い』(青木部長)とのことで、既存会館との明確な差別化を推し量ったことが結果として奏功している状況となっている。加えて、既存3会館のように、『複数式場を有する会館では、どうしても葬家が混在してしまうのですが、ここ数年の傾向として、他の葬家とバッティングを避けたいと希望される方も多くなっておられますので、そうした葬家様から喜ばれています』と、プライバシー重視の葬家からの支持率も高いことがうかがい知れる」

 

そして、「貸切という特別空間としての 利用を促すグリーフケア士の存在」として、こう書かれています。
神田紫雲閣は中小規模に特化しているものの、実はそれだけの利用を促すポジショニングとして存在しているわけではない。『先日あった例ですが、別の紫雲閣に事前相談でお見えになりお話をしているなかで神田紫雲閣を紹介させていただいたところ、会館の設えが1日1施行ということでお客様のニーズと一致し、実際に施行をしていただきました。その方から御礼の手紙をいただき、またSNSなどでも当社を紹介していただいたエピソードがあるほどです』(青木部長)それゆえ、『事前相談等を通してしっかりと時間をかけヒアリングを行なうなかで、故人様に対する想いを汲み取りながらお客様のニーズにあった施設を紹介しています。ただ、昨今は、神田紫雲閣を選ばれるケースがふえています』と、サンレー北陸が管轄する15拠点のなかでも特別な式場として位置づけてられているようだ。そして、その事前相談に対応するサンレー北陸の社員については、(一財)冠婚葬祭文化振興財団がこの6月から運用をはじめた『グリーフケア士資格試験』の合格者を中心に担当するのも大きな特徴といえるだろう。その背景には、有資格者が事前相談を担当することで、相談者は安心感を得ることができ、事前相談の担当者も葬家の心のケアのために寄り添った葬儀式の提案、さらにはアフターケアを含めた遺族サポートの充実が叶うとしているからだ。
なお、サンレー北陸では、このコロナ禍においては、既存会館については大・中式場をゆったり使うことでソーシャルディスタンスの確保を優先した利用を促進しつつ、神田紫雲閣においては、他の葬家とバッティングを避けたい葬家やグリーフケア士との事前相談を経て神田紫雲閣を利用したいとする葬家、という大まかな会館運用の方向性がみえるほか、施行後の葬家とサンレー北陸に属するグリーフケア士との接点の場として神田紫雲閣の活用という戦略がうかがい知れる。今後も同社では、多種多様な会員ニーズに応える会館運営とオペレーション、さらにはグリーフケア士によるサポートというように、多方面から会員を支えていくとしている」

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神田紫雲閣

 

2021年月日 一条真也