『命には続きがある』

一条真也です。
62冊目の「一条真也による一条本」は、『命には続きがある』(PHP研究所)です。サブタイトルは「肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと」です。東京大学医学部大学院教授で東大病院救急部・集中治療部長(当時)の矢作直樹氏とわたしの「命」と「死」と「葬」をめぐる対談本です。2013年6月に刊行されました。


命には続きがある』(PHP研究所)

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本書の帯

 

本書の帯には「愛する人は死なない」と大書され、「臨死、霊聴、霊夢、交霊、対外離脱、憑依、お迎え現象・・・・・・見えない存在をめぐって、生と死の交差点に立つ者同士が語り合う。人を看取り、葬送する意義、悲嘆に暮れる人を癒すグリーフケアについての温かい思索」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

帯の裏には「人生はこの世限りではない」と大書され、続けて以下の言葉が並んでいます。
◎霊との遭遇
◎医療現場にある「お迎え現象」
◎葬儀の場でも起こる「不思議」
◎死者は「声」を使って接してくる
◎死を思うことは、幸福を考えること
◎供養は生きている者のため
◎神話こそグリーフケアのルーツ
◎「おくりびと」の本当の意味


この2冊がクロスオーヴァーしています

 

本書は、矢作氏の大ベストセラー『人は死なない』(バジリコ)とわたしの『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)の2冊の本がクロスオーヴァーした内容と言えます。


本書のカバー前そで

 

カバーの前そでには「死は終わりではない」、後そでには「死は不幸ではない」と大きく書かれています。この2つの言葉こそは、矢作氏とわたしに共通した死生観というべきものであり、1人でも多くの方に伝えたい想いです。


本書のカバー後そで

 

ブログ「勇気の人」に書いたように、わたしは2011年10月4日に東大病院を訪れ、矢作氏と初対面しました。そのときのことを矢作氏は本書の「はじめに――生と死の交差点に立つ者同士」の中に書かれています。わたしについての過分な評価も書かれており、大変お恥ずかしいのですが、わたしたちの対話の雰囲気がわかっていただけるのではないかと思います。矢作氏はこう書かれています。
「わざわざ病院のほうにお越しいただき、初対面させていただきました。その中で洗練された文章の裏には幼少時からご自宅の書庫に蓄えられた父上の膨大な蔵書を読破されてこられたことをお聞きして感心しました。それとともに、この文章のもとになる豊富な現場経験をお持ちでいらっしゃることを確認して納得がいきました。本書を手にされた方は、一条真也氏について私よりもよくご存じの方も多いとは存じますが、ご存じない方のためにすこしご紹介すると、50冊を超える著作を持つ作家として、つとに有名ですが、同時に冠婚葬祭業を営まれる企業の代表、経営者としての顔をお持ちです。社長室で執務をするだけではなく、時には葬儀や結婚式などの儀式の現場に立ち会われているとお聞きしています。つねに日本人の死生観と冠婚葬祭業界の使命を熱く語られる姿には、私のほうが年上ではありますが、心から尊敬に足る人物の一人であることを書き添えておきます」


矢作直樹氏との初対面

 

まことに恐縮の至りですが、わたしも「あとがき――グリーフケアの時代」で次のように書きました。
「不思議な運命の糸に手繰り寄せられてやっと会えたわたしたちは、長い間ずっと喋り通しでした。こういうことを言うと不遜かもしれませんが、これほど話題や考え方が自分と合う方には久々にお会いしました。京都大学こころの未来研究センター教授で宗教哲学者の鎌田東二先生以来の運命の出会いかもしれません。とにかく、二人でずっと『命』と『死』と『葬』について夢中になって語り合いました。矢作先生が担当されている患者さんの名前をお聞きして、わたしは驚きました。間違いなく我が国における超VIPの方々ばかりです。矢作先生ご自身が日本を代表する臨床医なわけですが、そんな凄い方が『魂』や『霊』の問題を正面から語り、『人は死なない』と堂々と喝破されました。これほど意義のあることはありませんし、ものすごい勇気が必要だったと思います。しかし、現役の東大医学部の教授にして臨床医が『死』の本質を説いたことは、末期の患者さん、その家族の方々にどれほど勇気を与えたことでしょうか! 多くの死に行く人々の姿を見ながら、多くの尊い命を救いながら、またあるときは看取りながら、矢作先生は真実を語らずにはいられなかったのです。まさに、矢作直樹先生こそは『義を見てせざるは勇なきなり』を実行された『勇気の人』であると思います」


矢作氏との対談のようす

 

本書の目次は、以下の構成になっています。
はじめに「生と死の交差点に立つ者同士」矢作直樹
第1部 死の不思議――スピリチュアル体験の真相
   第1章:死の壁を越えて
    ベストセラーの意外な反響
    霊との遭遇
    山で体験した臨死
    2度目の滑落と霊聴
    体外離脱の経験者
    憑依について
    医療現場にある「お迎え現象」
    葬儀の場でも起こる「不思議」
    カルマが天災を生んだのか
    ダライ・ラマとの対話
    童話が生まれた理由
    第2章:見える世界と見えない世界をめぐって
    見えるものだけを信じる
    死者は「声」を使って接してくる
    現代人の不幸とは何か
   第3章:死者=霊魂は存在するか
    死を思うことは、幸福を考えること
    人間は死者として生きている
    延命治療、だれが望んでいるのか
    迷惑が肥大化している
    先祖を思ってきた日本人
第2部 看取り――人は死とどう向き合ってきたか
   第4章:日本人の死生観を知る
    すべては生者と死者とのコミュニケーション
    供養は生きている者のため
    お盆は日本人が編み出した供養の形
    母との交霊体験
   第5章:死を受け入れるために
    死が生活の中から遠くなってしまった
    神話こそグリーフケアのルーツ
    グリーフケアとしての読書
    読書は交霊術である
   第6章:日本人の死に欠かせないもの
    宗教の役割――答えは自分の心の中にある
    天皇の偉大さを語る
    愛国心と日本人のこころ
    日本には「祈る人」がいる
第3部 葬送の意味――人はいかに送られるのか
   第7章:葬儀という儀式に込められたもの
    母の晩年とその死が教えてくれたもの
    自分の葬儀を想像する
    團十郎の葬儀に思う
    もう1つの「シキ」とは?
    辞世の歌や句を残す習慣
    「おくりびと」の本当の意味
    問題は人が死ぬことではなく、どう弔うかにある
   第8章:人は葬儀をするサルである
    人はなぜ葬儀をするのか
    葬儀は何のためにあるのか
    霊安室が持つ機能
    葬儀が自由でいい理由
    ブッダは葬儀を否定したのか
    フューネラル産業の未来
おわりに「グリーフケアの時代」一条真也


対談後に矢作氏と

 

この目次構成を見てもおわかりのように、矢作氏とわたしは霊や魂といった、いわゆるスピリチュアルな問題についても正面からガチンコで語り合っています。わたし自身、これほどスピリチュアルな話題を語ったのは、『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)以来ではないでしょうか。そして何よりも、医療界のトップにある方とわたしのような冠婚葬祭業者が「死」について徹底的に語り合ったのは世界でも初めてだと思います。この対談の前から、わたしは、愛する人を亡くした人の悲しみを軽くするための「グリーフケア」の普及をめざしてきました。グリーフケアは医療・葬儀・そして宗教の3つのジャンルが協力しながら進めていくべき大いなる「こころ」の仕事です。この矢作氏との対談本が、日本人にとってのグリーフケア普及の一助となることを願いましたが、幸いにも本書は版を重ね、多くの読者を得ました。

f:id:shins2m:20210906194806j:plain命には続きがある』(PHP文庫)

 

その後、ブログ「対談には続きがある」で紹介した2020年11月20日のコロナ禍中での特別対談を経て、2021年2月にPHP文庫版『命には続きがある』が刊行されました。文庫化によって、同書は現在も多くの方々からよく読まれているようです。

 

 

2021年9月13日 一条真也