政局混迷の始まり?

一条真也です。
22日、任期満了に伴う横浜市長選が投開票されました。元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)が、前国家公安委員長小此木八郎氏(56)や4選を目指した現職の林文子氏(75)ら7人を破って初当選。この横浜市長選は、今後の日本の政局を占う非常に重要な選挙でした。


山中氏は早稲田大学政治経済学部の後輩です。もっとも、政経学部在学中にデータサイエンスの方法論に興味を抱いた山中氏は、卒業後に数理を学ぶため早稲田大学理工学部数学科と早稲田大学大学院理工学研究科数学専攻で学び、医療分野の複雑で多様なデータサイエンスを専門としました。早稲田大学大学院理工学研究科修了後は、九州大学医学部附属病院(現・九州大学病院)の助手を経て、アメリ国立衛生研究所(NIH)の所属機関に留学。2000年から2004年まで同研究所のリサーチフェローを務めました。2003年に博士号(理学)を取得しています。

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「NHKニュース」より 

 

その後、先端医療振興財団(現・神戸医療産業都市推進機構)の研究員、国立病院機構九州がんセンター室長、国立がん研究センター室長、部長などを務め、2014年に横浜市立大学医学部教授となりました。データサイエンス学部設置準備委員会委員長として同学部と大学院の設置に尽力。2018年にデータサイエンス学部と大学院が設置されるると、特命副学長、2019年に学長補佐、2020年に大学院データサイエンス研究科長などに就任。学外で内閣府文部科学省の委員会委員、日本癌治療学会、日本計量生物学会、日本統計学会、日本医療安全学会、稲門医師会で理事・評議員・委員などを務めました。医療のエキスパートであり、「コロナの専門家」でもある山中氏の感染症対策には大いに期待が集まっています。

f:id:shins2m:20210822204828j:plain「NHKニュース」より

 

現職の林氏は、自身が決めたIR(カジノを含む統合型リゾート)の横浜市内への誘致など市政の継続を訴えましたが、あえなく落選しました。誘致推進を求める地元経済界が支援しましたが、自民の分裂選挙により支持を伸ばすことができませんでした。IRといえば、新型コロナウイルスの感染拡大で取り巻く環境が一変し、全国各地で先行きが不透明となっています。訪日観光客の回復が見通せない中、IR整備を軸とする政府の成長戦略は軌道修正を迫られています。北九州市でも誘致を望む人々がいて、昨年、IR誘致を目的とする経済団体のようなものを立ち上げています。わたしにも理事になってほしいとの依頼が来ましたが、お断りしました。あの人たちは、今でもIRなどというものを本気で誘致したいと思っているのでしょうか?

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「NHKニュース」より 

 

そして、林氏の落選以上に注目を集めたのが、地元出身の小此木氏の落選です。小此木氏は安倍、菅両政権で入閣し、自民党神奈川県連会長なども歴任。6月下旬に立候補を表明し、IR誘致の取りやめを主張しました。自民党市連は自主投票となりましたが、自民系会派の市議36人のうち30人から支援を受けていました。菅氏も自ら電話などで有権者に支援を依頼。自主投票の公明党も実質的に支援しましたが、その効果は限定的でした。全面支援した小此木氏の敗北で菅氏の求心力低下は避けられず、自民党総裁選や次期衆院選へ影響することは確実です。

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「NHKニュース」より

 

菅首相が支援した小此木氏が敗北したことで、政局は一気に流動化しかねない情勢です。現下のコロナ感染の収束が見通せず、衆院議員の任期満了まで2ヵ月を切る中、首相が思惑通りに解散権を行使できない可能性もあります。横浜は首相のおひざ元でありながら、自民党をまとめきれずに分裂選挙に至りましたが、あえて支援した小此木氏を押し上げられなかったことは、求心力低下に直結します。菅首相自民党総裁任期は9月30日に迫り、総裁選は9月17日告示、29日投開票の日程を軸に調整が進んでいます。菅首相はすでに再選への意欲を示し、二階俊博幹事長や安倍晋三前首相らが再選支持を表明しています。しかし、「菅首相の顔では選挙で戦えない」と不満の声がくすぶっており、総裁選には下村博文政調会長高市早苗総務相らが名乗りを上げています。

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「NHKニュース」より

 

菅首相は難しいかじ取りを迫られてういますが、「朝日新聞DIGITAL」が22日20時に配信した「首相のおひざ元・横浜市長選でも敗北 求心力低下は必至、混迷の政局」という記事には、「『全敗』した4月の衆参3選挙や、過去2番目に少ない議席に低迷した7月の東京都議選に続く地元での敗北で、次期衆院選を控える党内からは『選挙の顔』として疑問視する声が高まっている。首相が当初描いたとされる総裁選前の衆院解散や、総裁選での無投票再選には反対論が根強く、首相交代や執行部刷新を求める声に押され、衆院選前の総裁選実施と対立候補を擁立する動きが本格化しそうだ。情勢次第では事実上の任期満了選挙に追い込まれる可能性もある」と書かれています。

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週刊文春」2021年8月26日号 

 

わたしの手元には「週刊文春」8月26日号があります。もちろん横浜市長選挙前に出版されたものですが、巻頭特集には「菅9・6『首相解任』」のタイトルで、「五輪開催でも下がり続ける支持率。離れていく秘書官や閣僚たち。それでも、パラ閉幕後の解散を狙う首相はひとり闘争心を燃やしている。官邸・事務所ぐるみで挑む横浜市長選だ。だが敗色は濃厚で、いよいよ首相は――」というリード文が書かれています。東京オリンピックパラリンピックの強行開催、コロナ患者の自宅放置に代表されるコロナ政策の迷走に、日本国民の怒りは最大限に高まっています。その結果は、衆院選で明らかになることでしょう。


ところで、わたしは23日の朝から東京に出張しなければなりません。22日の東京の新規感染者は4392人で、日曜日としての最多を更新しました。しかも、パラリンピックの開催の前日です。わたしはこれまで数え切れないほど東京には行きましたが今回だけは正直行きたくありません。もちろん、不要不急の出張ではありません。今回は、互助会保証の総会・取締役会・監査役会経済産業省への訪問、全互協の正副会長会議・理事会・総会・互助会政治連盟定期大会に出席するための必要な出張です。本当はリモート参加したいのですが、互助会保証は社外監査役、全互協と政治連盟は副会長の職にあるので、どうしてもリアル参加しなければならないのです。


感染大爆発の東京都ではコロナ病床に余裕が無くなっており、自宅療養者が増加する一方です。自宅療養中の患者が、症状が急変して死亡するケースも相次いでいます。それは、受け入れ先が見つからないからであり、全国で救急搬送困難事案が過去最多になっています。すれ違っただけで感染するというデルタ株に加えて、ペルーから入国した東京五輪関係者からラムダ株も見つかっており、もう東京は危険きわまりないです。ワクチンは2回接種済みですが、油断はできません。コロナに感染したり、何か他の急病になっても、病院には入れません。東京で死にそうになっても、野垂れ死にするだけです。ということで、家族と水盃を交わしてから北九州空港に向かおうと思います。

 

2021年8月23日 一条真也