死を乗り越えるシャトーブリアンの言葉

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人間の最大の誤りは、
幸福への願望において、
人間の本性とは切り離せない
死という持病を忘れることである。
必ず終わらねばならないのである。
シャトーブリアン

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、フランスの作家・政治家であるフランソワ=ルネ・シャトーブリアン伯爵(1768年~1848年)の言葉です。ブルターニュ生れの貴族であった彼は、フランス革命に失望、自然を求めて北米に渡り、帰国後反革命軍に加わります。負傷して英国に亡命中、無神論啓蒙思想を奉じた『革命論』(1797年)を書きますが,母と姉の死によりカトリックに復帰、感情的護教論としての『キリスト教精髄』(1802年)を著します。その挿話となっている短編小説「アタラ」「ルネ」はアンニュイ文学の典型であり、世紀末ニヒリズムに先駆し、ロマン主義に大きな影響を与えました。1809年にはエルサレム巡礼を行い,散文叙事詩『殉教者』を発表。王政復古時代に外交官、外務大臣を務めますが、1830年7月革命以後引退。晩年に自伝的回想録『墓の彼方の思い出』を執筆しました。



生きているあいだに、とくに若いときに忘れているものの代表は、「死」と「老い」ではないでしょうか。この世には、2つの絶対といえるものがあります。1つは人は絶対に死ぬということです。もう1つは、自分の目で自分を見ることはできないということです。じつは、自分の目に自分を見ることができないという絶対性は、鏡に始まって、写真や映像などの発明で薄れてきています。一方、死は依然として体験することができません。そして死と同じく忘れているものにはもう一つ「老い」があります。これは加齢により、否が応でも精神的にも肉体的にも自覚させられます。でも若い頃は、自分が老いるなど想像もできません。わたし自身もそうでした。

 

 

このシャトーブリアンの言葉が意味することは何でしょうか。死や老いを忘れることがなく、幸福を感じることの大切さを改めて戒めているのではないでしょうか。それは真の幸福ではないと。これは、若い人たちにこそ、贈られた言葉のような気がします。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2021年8月22日 一条真也