『宗遊入門』 

一条真也です。
わたしは、これまで多くのブックレットを刊行してきました。わたしのブックレットは一条真也ではなく、本名の佐久間庸和として出しています。いつの間にか44冊になっていました。それらの一覧は現在、一条真也オフィシャル・サイト「ハートフルムーン」の中にある「佐久間庸和著書」で見ることができます。整理の意味をかねて、これまでのブックレットを振り返っていきたいと思います。 


『宗遊入門』(2007年10月刊行)

 

今回は、『宗遊入門』をご紹介します。2007年10月に刊行したブックレットですが、目次は以下の通りです。
●宗教から宗遊へ
●教遊一致と神道
キリスト教の芸術戦略
イスラム教と仏教の庭園文化
●リゾートとしての四国遍路
●すべての道はマンダラに通ず
●宇宙のシステムを表現する
十牛図の世界
●宗遊館の大いなる企み
●お葬式こそ宗遊である!


人間を幸福にする「宗遊」とは何か

 

宗教の「宗」という文字は「もとのもと」という意味で、わたしたち人間が言語で表現できるレベルを超えた世界です。いわば、宇宙の真理のようなものです。その「もとのもと」を具体的な言語とし、慣習として継承して人々に伝えることが「教え」です。だとすれば、明確な言語体系として固まっていない「もとのもと」の表現もありうるはずで、それが「遊び」なのです。音楽やダンスなどの「遊び」は最も原始的な「もとのもと」の表現であり、人間をハートフルにさせる大きな仕掛けとなります。


宇宙における情報システム

 

もはや何かを人間の心に訴えるとき、「教え」だけでプレゼンテーションを行なう時代ではないと思います。幸福、愛、平和といった抽象的なメッセージを伝えようとしても、今までは「教え」だけだったので説教臭くなって人々に受け入れられないという面がありました。そういった抽象的な情報は、言語としての「教え」よりも、非言語としての「遊び」の方が五感を刺激して、効果的に心に届きやすいのです。


宗遊の背景(1990年頃)

 

人間が心の底からメッセージを受け取るのは、肉体というメディアを通過させた「体感」によってです。情報と記号が氾濫する現代においては特にそのことが言えます。また、今後の社会を動かす原動力となる若者や子どもに対しては、直接に「教え」を授けるより、音楽、映画、ミュージカル、スポーツ、それにゲームなどを通じてメッセージを送った方が素直に受け入れられることは確実です。

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わたしは「遊び」を通してメッセージを送る、このプレゼンテーション・システムを宗教ならぬ「宗遊」と呼んでいます。もちろん「遊び」だけでは、宗教は単なるレジャー産業になってしまい、宗教ではなくなってしまいます。宗教にとっては決して「遊び」だけがすべてではありません。ハート化社会においては、「教え」と「遊び」のバランスを図って、幸福や愛をプレゼンテーションしていく「教遊一致」が必要とされるのです。
 
サンレーグランドホテル内に開設された「宗遊館

 

この「宗遊」というコンセプトをわかりやすく展示するミュージアムが「宗遊館」です。2004年2月に北九州市にオープンしたサンレーグランドホテル内に開設されました。なお、「宗教」というコンセプトは、1992年に刊行した拙著『ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー)の中で初めて示しました。

ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー

 

2021年8月21日 一条真也