心のケアが世界を救う!

一条真也です。
18日、ブログ「秋季例大祭」で紹介した神事と朝粥会の後は、同じく松柏園ホテルのメインバンケット「グラン・フローラ」で恒例の「天道塾」を開催。最初にサンレーグループ佐久間進会長が登壇し、訓話をしました。

f:id:shins2m:20210818085637j:plain最初は、もちろん一同礼!

f:id:shins2m:20210818090021j:plain天道塾のようす

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訓話する佐久間会長

 

佐久間会長は、自身が提唱している「八共道」のうちの「共浴」について語り、ウィズコロナ時代の「日帰り湯治天国」の構想などを示しました。福岡県田川郡福智町にある「日王の湯」をわが社が運営することが決まり、リニューアル工事をした上で、いよいよ9月10日から営業開始です。会長は、その意気込みを語りました。また、「日王」ということから天照大神をはじめ、世界中の太陽神について話題を広げました。最後は、貝原益軒の「養生訓」に言及して、健康がいかに大切であるかを力説しました。

f:id:shins2m:20210818093457j:plain夏用マスク姿で登壇しました

f:id:shins2m:20210818093501j:plain息苦しいので、マスクを外しました

 

それから、わたしが登壇しました。わたしは夏用の不織布マスクをつけたまま、「まずは、このたびの豪雨でお亡くなりになられた方々の御冥福を心よりお祈りし、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げたいと思います」と言ってから、マスクを外しました。それから、「昨日、福岡県への緊急事態宣言の発出が決定しました。正直、『またか』という思いです。政府はお盆の帰省も控えるように強く訴えていましたが、それなら東京五輪の強行開催も控えてほしかった。わたしは、オリンピックなどよりもお盆で先祖供養し、祖父母と孫が顔を合わせることの方がずっと大切だと考えています」と述べました。

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水について話しました

 

先日の大雨では各地の方々からは「九州、大丈夫ですか?」とのメールやLINEを頂戴しました。九州だけでなく、全国に長雨による洪水や土砂崩れなどの警戒報道が出ていました。今週中頃にかけて大雨が長期化するため、さらに災害のリスクが高まるそうで、引き続き警戒が必要です。特に、ブログ「紫雲閣を避難所に」で紹介したように、わが社の施設は災害避難所に指定されていますので、一刻も気が抜けません。水害といえば、大量のアクセスが寄せられたブログ「夜叉ヶ池」で紹介した日本映画のラストには、大洪水で村が消滅するシーンが登場します。龍神との約束を守らずに鐘を撞かなかったために大洪水が起こるのです。『旧約聖書』の「ノアの大洪水」をも連想させるスペクタクル・シーンでしたが、地球環境破壊に対する自然界からの警告のようにも思えます。

f:id:shins2m:20210818114705j:plain火についても話しました

 

豪雨、洪水、津波といった水害に最近の人類は翻弄されていますが、一方で地球温暖化による猛暑にも悩まされています。国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は今月9日、人間が地球の気候を温暖化させてきたことに「疑う余地がない」とする報告を公表しました。人類はまさに「火」と「水」をコントロールできずに窮地に立っているわけですが、そのことは2008年に上梓した拙著『世界をつくった八大聖人』(PHP新書)で指摘したことでした。火と水。わたしは、ここに人類の謎があるような気がします。人類がどこから来て、どこへ行こうとしているかの謎を解く鍵があるように思います。もともと世界は水から生まれましたが、人類は火の使用によって文明を生みました。ギリシャ神話のプロメテウスは大神ゼウスから火を盗んだがゆえに責め苦を受けますが、火を得ることによって人間は神に近づき、文明を発展させてきたのです。そして、文明のシンボルとしての火の行き着いた果てが核兵器でした。

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熱心に聴く人びと

 

ヒロシマ ナガサキ」という原爆のドキュメンタリー映画があります。その映画に登場する広島で被爆した男性が「原爆が落ちた直後、きのこ雲が上がったというが、あれはウソだ。雲などではなく、火の柱だった」と語った場面が印象的でした。その火の柱によって焼かれた多くの人々は焼けただれた皮膚を垂らしたまま逃げまどい、さながら地獄そのものの光景の中で、最後に「水を・・・」と言って死んでいったといいます。命を奪う火、命を救う水という構造が神話のようなシンボルの世界ではなく、被爆地という現実の世界で起こったことに、わたしは大きな衝撃を受けました。考えてみれば、鉄砲にせよ、大砲にせよ、ミサイルにせよ、そして核にせよ、戦争のテクノロジーとは常に「火」のテクノロジーでした。火焔放射器という、そのものずばりの兵器などもあります。

f:id:shins2m:20210818114653j:plain「火水(かみ)」とは「神」なり! 

 

兵器だけではありません。自動車も飛行機もロケットもパソコンもスマホも、文明の利器というものは基本的に「火」のテクノロジーです。わたしたちは、もはや火と別れることはできないのでしょうか? しかしながら、水が人類にとって最も大切なものであることも事実です。ならば、どうすべきか。わたしは、人類には火も水も必要なことを自覚し、智恵をもって火と水の両方とつきあってゆくしかないと思います。人類の役割とは、火と水を結婚させて「火水(かみ)」を追い求めていくことではないでしょうか。「火水(かみ)」とは「神」です。これからの人類の神は、決して火に片寄らず、火が燃えすぎて人類そのものまでも焼きつくしてしまわないように、常に消火用の水を携えてゆくことが必要ではないかと思います。

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何が「制御不能」なのか?

 

そして、人類は火でも水でもない新たな難敵と遭遇しました。新型コロナウイルスです。東京五輪の直後から、日本各地で感染者数や重症者数が過去最多を更新。12日午後に開かれた東京都の専門家会議では、「かつてない速度で感染拡大が進んでいて、『制御不能』な状況となっている」など、強い危機感が示されました。菅首相があれだけ「安心・安全」と念仏のごとく繰り返した東京五輪の閉幕直後、日本では「災害レベルの非常事態」にまで感染大爆発したわけですが、これが世界中に波及し、東京が武漢に代わって「パンデミックの原産地」とならないことを願うばかりです。

f:id:shins2m:20210818100528j:plain自然を畏れ、人智の限界を悟れ!

 

制御不能なのは、ラムダ株などの新型コロナウイルスだけではありません。温暖化による猛暑も、やはり温暖化による豪雨も制御不能です。そう、人類は火も水もコロナもコントロールすることができないのです。ITに代表されるテクノロジーの進歩で人々が「万能感」を抱く傾向にありますが、自然の脅威の前にはそんな万能感などたやすく挫かれてしまいます。人類はもっと自然を畏れ、人智の限界を謙虚に悟ることが必要でしょう。しかし、最も問題なのは人間の「こころ」だと思います。東京五輪といえば、開会式の前日までゴタゴタがありました。音楽担当者の「いじめ自慢」、演出責任者の「ユダヤ人虐殺ギャグ」などが大問題となったからです。

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熱心に聴く人びと

 

ゴタゴタ続きの東京五輪は閉幕しましたが、その後も、メンタリストDaigo氏の「ホームレス差別発言」が大問題になっています。彼はなんと月収9億を豪語していていましたが、YouTuberとしての成功体験もふまえ、やはり歪んだ「万能感」が仇になったように思います。そもそも、メンタリストなどと称して「人間の心はコントロールできる」と考えること自体が不遜であり危険なわけですが、「こころ」を扱うという意味ではグリーフケアにも言えることであり、気をつけなければいけないと痛感しています。

f:id:shins2m:20210818094834j:plain「心のケアの時代」について

 

ブログ「グリーフケア講演in横浜」で紹介した講演会でも話しましたが、いま、「心のケアの時代」です。そこでは「サービス」から「ケア」への転換が行われ、縦の関係(上下関係)であるサービスと横の関係(対等な関係)であるケアの本質と違いが重要になります。学生のアルバイトに代表されるようにサービス業はカネのためにできますが、医療や介護に代表されるようにケア業はカネのためにはできません。特に、無縁社会に加えてコロナ禍の中にある日本において、あらゆる人々の間に悲嘆が広まりつつあり、それに対応するグリーフケアの普及は喫緊の課題です。

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「仕事の進化論」について

 

さらには、「ケアすることは、自分の種々の欲求を満たすために、他人を単に利用するのとは正反対のことであり、相手が成長し、自己実現することを助けること」などのケアについての自分の考えを明らかにしました。葬祭業は、サービス業というよりもケア業です。他者に与える精神的満足も、自らが得る精神的満足も大きいものであり、いわば「心のエッセンシャルワーク」あるいは「ハートフル・エッセンシャルワーク」と呼ばれるでしょう。これは葬祭業に限らず、ブライダル・ビジネスでも同様です。これからの冠婚業は新郎新婦をはじめ、祝われる方々のさまざまなケアを心掛けなければいけません。

f:id:shins2m:20210818100523j:plain心のケアが世界を救う

 

そして、何よりも重要なことは、「ケア」というのは他人を尊重し、他人のために尽くす営みであり、「いじめ」や「差別」などの対極にあるということです。いくらカネを稼いでいるビジネスマンや膨大な再生回数を誇るYouTuberであっても歪んだ万能感を抱き、「いじめ」や「差別」を肯定する者など人間のクズです。彼らの仕事はブルシット・ジョブです。反対にハートフル・エッセンシャルワーカーとしてのケア業に従事する人々は「人間尊重」の精神に基づいています。そして、わたしは「心のケアが世界を救うのです!」と言ってから降壇しました。

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最後は、もちろん一同礼!

 

2021年8月18日 一条真也