死を乗り越えるモーツァルトの言葉

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レクイエムが聞きたい。
あれは自分のために作曲したのだと、
言わなかったかな。(モーツァルト

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト(1756年~1791年)の言葉です。モーツァルトオーストリアの音楽家で、幼い頃から演奏家として「神童」と呼ばれました。のちにオペラから交響曲まで作曲を手掛けます。ハイドン、ベートーベンと並んで、ウィーン古典派を代表する1人です。「後宮からの誘惑」「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「コジ・ファン・ドゥッテ」「魔笛」の五大オペラなどの多くの傑作を遺しました。

 

 

モーツァルト自身は死についてまったく恐れてなかったといいます。彼は1787年の春、病に倒れた父レーオポルト宛ての手紙に次のように書いています。
「死は(厳密に考えますと)、僕たちの生の真の最終目的なのですから、僕は数年この方、この、人間にとって真実で最上の友と非常に親しくなっています。ですから、死の姿は恐ろしいものであるどころか、むしろ心を安らかにし、慰めてくれるものなのです! そして神さまが僕に、死というものが、われわれの真の幸せを開く鍵であると知る機会(おわかりですね)を賜ったことに、感謝しております。僕は毎晩ベッドに横たわる時に――若い身なのに――明日はもう生きていないのではないかと考えるのです。しかし誰も僕のことを陰気であるとか、悲しげだとかは言えないでしょう」(井上太郎訳)

 

 

モーツァルトは病床で、未完の「レクイエム」が気にかかり、死の直前に見舞いにきた親しい歌手に完成した部分を歌ってもらったといいます。「レクイエム」は、死神が作曲を依頼したという伝説もあったほど、この曲は死と向き合ったモーツァルトが全力を傾けたものでした。


モーツァルトが弟子のジュースマイヤーに遺したのが、「レクイエムが聞きたい。あれは自分のために作曲したのだと、言わなかったかな」という言葉です。若き天才は死を覚悟しながらも最期まで作品の完成に執念を燃やしていたのです。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2021年8月11日 一条真也