不敬といふ事

一条真也です。
23日の夜、東京オリンピックの開会式が国立競技場で行われましたが、その内容は感動の伴わないお粗末なものでした。とにかく演出のレベルが低く、ユダヤ人問題がなくても中止にした方が良かったとさえ思いました。しかし、それよりももっとわたしが怒髪天を衝く思いをした出来事がありました。その怒りのせいで昨夜はあまり眠れず睡眠不足ですが、24日の朝一番で「FLASH」が配信した記事の内容がわたしの心中を代弁してくれました。

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ヤフーニュースより 

 

天皇陛下の開会宣言に着席したまま・・・菅首相に『不敬にも程がある』と非難の声」という記事なのですが、「『私は、ここに、第32回近代オリンピアードを記念する、東京大会の開会を宣言します』7月23日におこなわれた東京五輪の開会式。206に及ぶ国と地域の選手団が入場。組織委員会橋本聖子会長(56)やIOCのバッハ会長(67)がスピーチした後、冒頭のように開会を宣言されたのは天皇陛下だった」と書かれています。

f:id:shins2m:20210723231348j:plain開会宣言される天皇陛下 (NHKより)

 

また、記事には、「『天皇陛下が開会を宣言される様子は、しっかりと中継で放送されました。しかし、その際に隣で座っていた菅義偉首相(72)と小池百合子都知事(69)のふるまいに、批判が集まっているのです』(スポーツ紙記者)実は菅首相小池都知事天皇陛下の開会宣言が始まっても着席したままだったのだ。その後、小池都知事菅首相に目配せすると、いそいそと立ち上がった2人。このことにネットで厳しい声が上がっている」とも書かれています。その通りだと思います。

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座ったままの菅首相小池都知事(NHKより)

 

さらに、記事には以下のように書かれています。
「《陛下が話し始めてから起立する小池氏と菅総理不敬にも程がある》《天皇陛下が席をお立ちになったらすぐ立つべき。恥ずべき映像を世界に流してしまった》《陛下の開会宣言のVTRが流れるたびに、菅が座ってたところも映るのか・・・・・・あまりに不敬》6月25日、宮内庁の西村泰彦長官(65)が天皇陛下のご懸念について『オリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないかご懸念されている、ご心配であると拝察をいたします』と語り、波紋を呼んでいた。だが当時、菅首相はそんな異例の『拝察』発言にも『長官ご本人の見解を述べたと理解している』と語るのみだった。はたして天皇陛下の開会宣言は、菅首相に届いていたのだろうか――」

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予定時間を大幅超過したバッハ会長の挨拶(NHKより)

 

わたしは自宅のテレビで開会式の生中継を開始から終了までしっかり見ましたので、この天皇陛下の開会宣言の場面の出来事はすぐに気づきました。開会宣言の直前のバッハ会長の挨拶がとにかく長いのには度肝を抜かれました(大会組織委員会橋本聖子会長とバッハ会長の挨拶は併せて9分の予定でしたが、なんと20分になったそうです。しかも、バッハ会長は13分の独演会であり、あまりの話の長さに着かれて座り込んだり、寝転がる各国選手も続出)。つねづね、わたしは「挨拶が長いのは愚か者の証」だと考えているのですが、それを見事に証明してくれました。直後の天皇陛下の開会宣言が非常に短かかったので、それが見事なコントラストとなって、バッハ会長の非常識さが世界中にくっきりと示されました。

f:id:shins2m:20210724202649j:plain慌てて立つ菅首相(NHKより) 

 

天皇陛下が起立して開会宣言を始められたのに菅首相小池都知事が座ったままなのはテレビにもしっかり映し出されましたが、最初は信じられませんでした。次に、きっと二人はあまりにもバッハ会長の挨拶が長いので寝落ちし、起きたばかりでボーッとしているのではないかと推察しました。なにしろ、二人とも高齢ですから、夜とはいえ真夏の屋外競技場に長時間いること自体が辛いでしょう。しかし、録画した映像を何度も観直すと、寝起き直後といった感じではありませんでした。いずれにせよ、こういうシーンが全世界に流れてしまったことは菅首相としては痛恨の極みだと思います。この映像は永久に残りますから。


1964年の東京五輪の開会式では、観客含めて全員起立しているところへ天皇皇后両陛下が歩いて席に降りてこられたことが映像で確認できます。カメラは真実を写します。わたしは、東京五輪の強行開催に関連して言われることの多い「スポーツの力」などではなく、「映像の力」というものを感じました。いずれにせよ、 こういう陛下に対して無礼きわまりない段取りになったのは、開会式のプログラムを考えた者にも重大な責任があります。きちんとした儀式の専門家に相談せず、サブカルの差別集団などを頼るからこんなことになるのです。



まあ、普段から皇室に敬意を払っていないと急に行動に移すのは難しいでしょう。思うのですが、自民党から誕生した総理大臣はこれまで皇室への敬意を忘れていませんでしたが、どうも安倍首相のときからそれが薄れたように思えてなりません。わたしは、「東日本大震災追悼祈念式典」や例の「桜を見る会」にも参加しましたが、安倍首相のふるまいはまるで天皇のようでした。そもそも、「桜を見る会」などは、完全に天皇陛下園遊会を模した「園遊会ごっこ」だと感じました。そこにあるのは「天皇より自分の方が上だ」という不遜にして傲慢な意識であり、それは後任の菅首相にも受け継がれたのではないでしょうか。

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天皇陛下エスコートするバッハ会長(NHKより)

菅首相とともに「不敬」を問われた小池都知事も、今後いくら国政に復帰しようとも、日本初の女性宰相の目は完全になくなったと思います。そして、菅首相小池都知事以上に不敬が目立ったのはバッハ会長です。開会式の「天皇陛下臨席」の際に、バッハ会長が陛下をエスコートするという変な進行だったのですが、エスコート役のバッハ会長は天皇陛下と並び、なんとテレビカメラに向かって手を振り始めたのです。これには温厚なわたしも、「ふざけるな!」と思いました。お前は、マッカーサーか!?(怒)そもそも、各国の国王や国家元首、あるいは国連のトップならいざ知らず、IOCごときチンピラ組織の会長が天皇陛下と並ぶなど図々しいにも程がある!(怒)

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自分だけ手を振るバッハ会長(NHKより
 

まあ、「日本人」を「中国人」と言い間違えたり、平気で一泊300万円の部屋に宿泊したり、自分の持ち時間の倍以上の自己陶酔スピーチをするような男ですから、天皇陛下と並んだときに自分だけ手を振ることぐらいは当たり前なのでしょう。日本国民の象徴たる天皇陛下も甘く見られたものです。ブログ「書斎のアップデート」で紹介したように、わが書斎の目につく場所には『三島由紀夫全集』が鎮座していますが、「人間天皇」というものを深く嘆いていた三島がいま生きていいたら、トーマス・バッハを絶対に許さなかったと思います。



それにしても、最高位のスポンサー企業の社長も、経団連経済同友会日本商工会議所経済三団体のトップも、あろうことか東京五輪招致時の首相にして1年延期を決定した当事者である安倍前首相でさえ参加を見合わせるという開会式に、コロナ禍に苦しむ国民に心を寄せながら忸怩たる思いで臨席された天皇陛下の心中を拝察すると、わたしは深い悲しみと強い怒りを感じました。しかも、陛下はワクチンを1回して接種しておられないのです。

 

一方で、陛下が「祝い」という言葉を「記念」に言い換えられたことには安心いたしました。やはり、新型コロナウイルスの感染によって亡くなられた多くの方々、今も闘病しておられる方々、そして医療の現場で必死に闘っている医療従事者の方々、さらには東京五輪ありきの緊急事態宣言によって苦境にある飲食店関係者などの心中を思えば、「祝い」という言葉はふさわしくないからです。

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地獄の釜の蓋が開く?(NHKより)

 

しかし、なにしろ今回の五輪は「呪われた東京五輪」です。閉会式が終わるまでは何が起こるかまったく予想がつきません。ここまでトラブルが続き、開会式の前日になって超弩級の大問題が発生した東京五輪のこれまでの流れを思い起こすにつれ、人智を超えた神や仏、そして天というサムシング・グレートの存在を感じずにはいられません。「不敬」とは単なるマナーの問題ではなく、天すなわち自然の摂理に反する行為を指すのではないでしょうか。天に反する行いをする者には、必ずや天罰が下るでしょう。

 

2021年7月24日 一条真也