『グランドカルチャーの世界』

一条真也です。
わたしは、これまで多くのブックレットを刊行してきました。わたしのブックレットは一条真也ではなく、本名の佐久間庸和として出しています。いつの間にか44冊になっていました。それらの一覧は現在、一条真也オフィシャル・サイト「ハートフルムーン」の中にある「佐久間庸和著書」で見ることができます。整理の意味をかねて、これまでのブックレットを振り返っていきたいと思います。 


『グランドカルチャーの世界』(2006年10月刊行)

 

今回は、『グランドカルチャーの世界〜心ゆたかな老後のために〜』をご紹介します。2006年10月に刊行したブックレットです。序文「グランドカルチャーとは何か」の冒頭で、わたしは「人は老いるほど豊かになります。そして高齢者が何より豊かにもっているのが時間です」と書きました。時間にはいろいろな使い方があるでしょうが、「楽しみ」の量と質において、文化に勝るものはありません。さまざまな文化にふれ、創作したり感動したりすれば、右脳がフルに使われて「グランドライフ」が輝いてきます。

 

また、高齢者が増えれば経済的活力が低下すると言われています。わたしはそうとは思わないのですが、もしそうだとしても高齢者によって日本の文化が向上すればそれを補って余りがあります。経済成長のためには、自然、そして人間の心がいくら荒廃してもかまわないというのが従来の工業社会の考えでしたが、21世紀ではもう通用しません。もともと日本人の国民性は政治や経済よりも文化に向いていると言えます。そして、高齢者こそは経済より文化に貢献できるのです。

 

文化には訓練だけでなく、人生経験が必要とされます。日本人の文化生活の向上を経験豊かな高齢者に求めるのは間違いでしょうか。若者はいつも流行や輸入文化に安易にとびつくものです。彼らが自分たちの身に付いた文化を創造するためにも、また創造された文化を育てていくためにも、高齢者の存在はとてつもなく大きいのです。高齢者が高い壁として立ちはだかり、若者にそれを越えることを求めてはじめて、文化は向上され、その国の人々の心は豊かになります。


高齢者にふさわしい文化とは?

 

そして文化には、高齢者にふさわしい文化というものがあります。永年の経験を積んでものごとに熟達していることを「老熟」といい、永年の経験を積んで大成することを「老成」といいます。私は「大いなる老いの」という意味で「グランド」と名づけています。この「老熟」や「老成」が何よりも物を言う文化を「グランドカルチャー」と名づけました。グランドカルチャーは、将棋よりも囲碁、いけばな生花よりも盆栽、短歌よりも俳句、歌舞伎よりも能・・・・・とあげていけば、そのニュアンスが伝わるのではないでしょうか。将棋に天才少年は出ても、囲碁の天才少年というのはあまり聞いたことがありません。短歌には恋を詠んだ色っぽいものが多いが、俳句は枯れていないと秀句はつくれないといいます。

 

もちろん、どんな文化でも老若男女が楽しめる包容力をもっていますが、特に高齢者と相性のよい文化、すなわちグランドカルチャーというものがたしかにあります。本当はグランドカルチャーの種類はまだまだたくさんあるのですが、このブックレットでは21世紀にちなんで21のジャンルを紹介しました。以下の通りです。

 

グランドカルチャーはまた、高齢者の心を豊かにし、潤いを与えます。テレビアニメの「サザエさん」一家の家長である磯野波平はどう見ても老人ですが、彼は家でくつろぐとき、いつも着物の上からチャンチャンコを着て1人で碁を打っています。また「ちびまる子ちゃん」には友蔵という、まる子の祖父が出てきますが、彼は何かあると「友蔵 心の俳句」といってすぐ俳句をつくります。囲碁や俳句といったグランドカルチャーがいかに波平や友蔵の心を豊かにしていることか。そして潤いを与えていることか。グランドカルチャーは老いを得ていくこと、つまり「得る老い」を「潤い」とするのです。なお、このブックレットは サンレーグループの諸施設にも置いています。

 

2021年6月24日 一条真也