一条真也です。
わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は、「葬式は必要!」という言葉を取り上げることにします。
グランドライフ、グランドカルチャー、グランドシティなど老福社会における一連のキーワードを貫くコンセプトが「グランド」です。「グランド」とは、グランドホテル、グランドバザールの「グランド」です。また、グランドマザー、グランドファーザーの「グランド」です。わたしは、両者をあわせて「大いなる老いの」という意味で使っています。
グランドライフは、これまで余生とか老後とかシルバーライフとか呼ばれてきたもので、老いるほど豊かになり幸福になる老福人生です。グランドカルチャーは、高齢者にふさわしい文化です。かつての日本人は煩悩と苦労つづきの時代を力いっぱいに生き、できるだけ早く隠居しました。そして、盆栽、茶道、囲碁、俳句、水墨画、写経、能、相撲、落語、陶芸、骨董、園芸、琴、三味線、小唄、詩吟などのさまざまな文化を楽しんだのです。それらは若者のような運動神経や体力が求められるものではなく、経験と知恵が求められる、世界にも稀に見る「老熟」と「老成」の文化です。それらの高齢者のための老福文化をグランドカルチャーと呼びます。
そして、グランドシティは、人が老いるほど豊かになり幸福になれるグランドライフを実現する老福都市です。また、シティ・オブ・グランドマザーズ・アンド・グランドファーザーズです。そこに住む高齢者たちが安心して生活でき、学び、遊び、買い物することができる高齢者のための街です。当然、医療や介護施設の充実、また老人マンションや葬祭会館などの選択肢の多さも必要とされます。
グランドシティは、「高齢者特区」という行政の問題にまでつながります。日本は世界一の高齢化先進国であり、その日本が世界に先駆けて高齢者先進都市モデルを提案することが求められるのです。ブログ「北九州商工会議所 新年賀詞交歓会」に書いたように、2014年度の北九州商工会議所の新年賀詞交歓会において、利島康司会頭(安川電機会長:当時)より挨拶がありました。利島会頭は、「北九州の基本はモノづくり!」と訴えられながらも、最後に「これからは高齢者対策が重要です。とかく高齢者が多いことは困ったことだと考えがちですが、これを強みと考えましょう。“老いが老いを好む”街づくりを行って、北九州に老人特区を作りましょう!」と言われました。わたしが長年提唱してきたことを会頭に代弁していただき、とても嬉しかったです。
「グランド」というコンセプトを得て、「老い」は光り輝き、その目的地である「死」は人生の「グランドフィナーレ」となるでしょう。なお、「グランド」というコンセプトは拙著『老福論〜人は老いるほど豊かになる』(成甲書房)で初めて提唱しました。
2021年6月19日 一条真也拝