死を乗り越える熊沢蕃山の言葉

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世の中に何も迹を残さず、
名も残さずに終わりたい。
(熊沢蕃山)

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、熊沢蕃山(1619年~1691年)の言葉です。「迹を残さず」は「あとをのこさず」と読みます。蕃山は、江戸時代初期の陽明学者。京都に生まれ、中江藤樹の門下に入り陽明学を学ぶ。著書に『集義和書』『集義外書』『大学或問』など。

 

 

功成り名を遺す――そんな思いが心をよぎります。
現代社会は、「承認欲求の時代」だといわれています。自分という存在をアピールするため、フェイスブックやインスタグラムなど、各種のメッセージや写真を投稿する、そして「いいね」を獲得する、そんな時代に生きているということです。自分は「何者か」、そんなことが人生の目的の一つにもなっています。



現代社会は、路傍の石のように、あるいはつましく生きる、そんなことに価値を感じさせない時代かもしれません。ヘイトスピーチにみられるような、匿名での投稿を繰り返す人たちや、「ネット炎上」などという言葉に代表されるような、ネット社会が生み出した他者への攻撃性などを見聞きすると、人類が変容しているかのように感じます。

 

 

しかもそうした風潮は若者に限ったことでもないようです。高齢者には自費出版などの手段で自伝などを出版するなど、老いも若きも名を残すことばかりを考えている人もいます。江戸時代の陽明学者が残したこの言葉を聞くと、現代人の寂しさやむなしさを感じます。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。ご一読下されば、幸いです。

 

2021年6月19日 一条真也拝