死が怖くなくなる本

一条真也です。金沢に来ています。
10日に行われる「大額紫雲閣」の起工式に参列するためです。京都から金沢に向かうサンダーバード19号の車中での読書中、LINEにメッセージが届きました。読者の方からで、あるブログに拙著『死が怖くなくなる読書』(現代書林)が取り上げられているという案内でした。

f:id:shins2m:20210609173840j:plain徒然図書館」より 

 

それは「徒然図書館」というブログでしたが、物語仕立てで『死が怖くなくなる読書』が紹介されています。討ち入り直前の赤穂浪士の1人が決行を目前にして迷っていると、怪しげな商人が現れて、「ははあ、仇討ちに参加することになったはいいものの、死ぬのが怖い、と」と言います。それを聞いた赤穂浪士は、「な、貴様、なぜそのことを」と言います。以下、このように書かれています。
「まるで見てきたもののように看破してきた商人に寒気を覚えた。彼は問いには答えず、ただ胡散臭い笑顔を浮かべたまま、一冊の書物を取り出した。『こちらなんか、おすすめでございます』『な、なんだそれは』表題には、『死が怖くなくなる読書』と書かれている。『死への恐怖。それを消してくれる書物を知ることができる書でございます。これがあれば、死など人の円環のほんの一瞬に過ぎないのだと、実感することができるでしょう』『まことか』嘘は申しません、と彼は言う。俺はすでに彼の妖しさも忘れ、その書に惹きつけられていた。欲しい。その言葉ばかりが、頭に浮かぶ。俺の死がすぐ間近にまで迫っていることは間違いないだろう。だが、死を恐れながら死ねば、俺はただの臆病者としての一生を終えるのだ。それで果たしてよいのか。否、答えなど、わかりきっている。どうせ死ぬならば、俺は英雄になりたい。おそらく遠い未来に英雄として語り継がれる同胞たちに肩を並べられるような、英雄に。俺はその本を手に取った。ご武運を、と彼は言う。途端、彼の姿は白昼夢のごとく消え失せてしまった。俺は道の半ばに茫然と突っ立っている。だが、見下ろしてみれば、『死が怖くなくなる読書』は、俺の手の中に握られていた。その時にはもう、俺の心は決まっていたのである」

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昨年、アップデートされました

 

徒然図書館」には他にもいろいろ書かれています。しかしながら、拙著はけっして「自死のススメ」のような本ではありませんので、誤解なきようにお願いいたします。でも、物語仕立ての書籍紹介は意表を衝かれ、とても面白いと思いました。『死が怖くなくなる読書』は2013年に上梓した本ですが、その後、同書のアップデート版として、2020年7月に『死を乗り越える読書ガイド』が現代書林から刊行されました。

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このページを読んだ直後にLINEが!! 

 

ところで、わたしがサンダーバード19号の車内で読んでいた本というのは『文明が不幸をもたらす』クリストファー・ライアン著、鍛原多惠子訳(河出書房新社)です。ちょうど80ページあたりを読んでいるときにLINEにメッセージが入りました。そのページには、「死後を恐れる理由はあるだろうか。マーク・トウェインはこう言った。『私は死を怖いとは思わない。なぜなら生まれる前に何十億年も死んでいたし、それで不便だったことなど一度もないからだ』」と書かれており、その箇所を読んだとき、わたしは『死が怖くなくなる読書』を思い出しました。本当です。その直後に、その本がブログで取り上げられているというLINEが入ったので、大変驚きました。これは、ユングの言う「シンクロニシティ」ではないですか! 
ブログの管理人情報には、「エェ・・・・・・管理人の甘楽にございます。手前、書をこよなく愛する未熟な放蕩者にございまして、小説、漫画に解説なんでもござれ。当ブログにて貴方様にオモシロイ本を紹介できればと思うております」と書かれていますが、そのユニークな表現法には感心いたしました。甘楽さん、このたびは拙著を取り上げていただき、ありがとうございました。

 

 

2021年6月10日 一条真也