憲法改正と五輪中止を!

一条真也です。
大型連休中ですが、わたしはステイホームしています。本当は連休を利用して『五輪は、要らない』という本を書き下そうかとも考えましたが、どうぜ今から書いても遅いと気づいて止めました。代わりに、次回作である『心ゆたかな読書』(現代書林)のゲラが出たので校正しています。さて、5月3日は「憲法記念日」ですね。

f:id:shins2m:20210503165152j:plain時事通信」より

 

わたしは憲法改正肯定派ですが、昨年まで盛り上がっていた憲法改正に向けた機運が一気にしぼんでしまい、残念に思っています。安倍前首相は首相在任中、国会演説などで改憲への意欲を示して、与野党論議を強く促してきました。これに対し、菅首相は言及自体が少なく、3月の自民党大会では改憲を「党是」としながらも具体像は語らず、「まずは国民投票法改正案成立を目指す」と述べるにとどめました。改憲に消極的な印象の菅首相ですが、改憲論議の前提となる国民投票法改正案の審議は進展し、今国会成立へ与野党の調整が大詰めを迎えています。

f:id:shins2m:20210503165222j:plain神戸新聞NEXT」より 

 

憲法といえば、日本国憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(生存権)を有する」と明記しています。「国は社会福祉社会保障、公衆衛生の向上と増進に努めなければならない」とも規定していますが、長引くコロナ禍は社会に暗い影を落としています。厚生労働省によると、2020年の全国の自殺者は前年より912人多い2万1081人。09年のリーマン・ショック以来、11年ぶりに前年を上回りました。


男性は11年連続で減ったものの、女性は過去5年で最多になっています。小中高生の自殺者数も急増し、499人という結果は統計のある1980年以来、最多になりました。コロナ禍で、特に深刻なのが、ひとり親世帯や雇用が不安定な女性たちです。「神戸新聞」には、「憲法の施行から3日で74年。改めて生存権が問われている」と書かれています。「衣食足りて礼節を知る」と言いますが、こんな状況でありながら東京五輪を強行開催するのは狂気の沙汰だと考えるのは、わたしだけではありますまい。


日本国憲法では、あらゆる日本国民の平等を保証していますが、それは五輪憲章でも同じこと。五輪においては、あらゆる参加選手は平等であり、公平に扱われることを保証しています。しかし、ながら、今回の東京五輪は非常に公平性を欠く流れになっています。感染症の世界的権威であるオタゴ大学のマイケル・ベイカー公衆衛生学教授が東京五輪の中止を勧告したと、ニュージーランドの大手メディア「スタッフ」報じました。感染症を専門とする立場から東京五輪の中止または再延期を切実に訴えたベイカー教授は、開催を強行すれば「オリンピック精神への裏切り」と厳しく断じました。

 

「高所得国はアスリートに高い安全性を保証することができるかもしれないが、低所得国のアスリートが参加する場合はどうか。特に予防接種を受ける場合、それはぜい弱な人々からワクチンを奪うことを意味する」と国の状況によって五輪への準備に大きな格差ができてしまうと指摘。さらに、「五輪はグローバルな一体感とフェアプレー精神によって祝福されることを目的としている。低所得国はパンデミックによって荒廃している。そこにフェアプレー精神はない」と糾弾したのです。

f:id:shins2m:20210503165554j:plain
琉球新報」より 

 

もはや公平性の欠片もない東京五輪ですが、ブルシット・セレモニーとしての「聖火リレー」はまだ続いています。新型コロナウイルス感染拡大中の沖縄県内では、2日間にわたって聖火リレーが繰り広げられました。感染拡大対策で、沖縄本島内で公道でのリレーが中止となり、無観客の特設コースが名護市と糸満市に集約されました。会場周辺には「立入禁止」と書かれた規制線や目隠しのフェンスが数百メートルにわたり張り巡らされました。この状況での聖火リレーに、ツイッターでは「無意味の極み」「もうVR(仮想現実)でええ」などと批判や皮肉るコメントも多く見られたそうです。


ある投稿者は、「聖火リレーが地元に来て尚更(なおさら)思うのが、せっかく近くを走ってるのに見に行けないし『今日だったの?』ていう人も多いと思う。こんな状況でオリンピックやる気でいるのが理解できない。地域の祭り、学校行事が中止でオリンピック開催?何言ってんだ」と率直な意見をつぶやいていたそうです。まったく、その通りですね。というわけで、日本政府には、「憲法改正」と「五輪中止」への働きかけを強く望む次第です。

 

2021年5月3日 一条真也