『葬送のフリーレン』

一条真也です。
相変わらずのコロナ禍の中、ついに5月になりましたね。
125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第156回分が掲載されています。今回は、『葬送のフリーレン』山田鐘人原作、アベツカサ作画(小学館)です。

f:id:shins2m:20210428134955j:plainサンデー新聞」2021年5月1日号

 

マンガ大賞2021」大賞を受賞した話題のコミック『葬送のフリーレン』の第1巻~4巻を読みました。「週刊少年サンデー」で連載中ですが、魔王を倒した勇者一行のその後を描く後日譚(アフター)ファンタジーです。まったく知らない作品でしたが、タイトルに「葬送」とあれば、スルーできません! 魔王を倒して王都に凱旋した勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼン、そして魔法使いフリーレンの勇者パーティ4人。彼らは、じつに10年間の旅路を終えました。

 

しかし、1000年は軽く生きる長命種のエルフであるフリーレンにとっては、その旅はとても短いものでした。50年に一度降る「半世紀(エーラ)流星」を見た4人は、次回もそれを見る約束をしてパーティを解散します。50年後、すっかり年老いたヒンメルと再会したフリーレンは、ハイターやアイゼンとも連れ立って再び流星群を観賞します。その直後にヒンメルは亡くなりますが、彼の葬儀でフリーレンは自分がヒンメルについて何も知らず、知ろうともしなかったことに気づいて、涙を流します。その悲しみに困惑した彼女は、人間を「知る」ための旅に出るのでした。

 

このマンガは魔法の物語です。魔法とは正しくは「魔術」といいます。魔術とは何か。それは、人間の意識つまり心のエネルギーを活用して、現実の世界に変化を及ぼすことです。そして、魔術には二種類あります。心のエネルギーを邪悪な方向に向ける「黒魔術」と、善良な方向に向ける「白魔術」です。そして、「黒魔術」で使われる心のエネルギーは「呪い」と呼ばれ、「白魔術」で使われる心のエネルギーは「祈り」と呼ばれます。

 

面白いのは、この物語では、魔法使いの資格認定制度が登場することです。大陸魔法協会という組織があり、魔法使いの一級から五級までの試験を行って資格を認定しているのです。その中で、一級魔法使いは、魔法使いの中でも一握りの熟練者として描かれます。わたしは、全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)のグリーフケア・プロジェクトチームの座長として現在取り組んでいる「グリーフケア資格認定制度」を連想しました。この資格は一級から三級まであります。

 

考えてみれば、グリーフケア士というのも魔法使いのような存在かもしれません。それは人々の悲嘆に寄り添い、「癒し」や「祈り」と深く関わる「白魔術師」という魔法使いです。そう、魔術の本質とは人間の心に影響を与えて現実を変えることであり、グリーフケアこそは白魔術ではないでしょうか。絵柄も優しく、死者への想いに満ちたこのマンガは、グリーフケアの物語そのものだと言えます。
世の中、グリーフケアに満ちていますね!

 

 

2021年5月1日 一条真也