死を乗り越える蘇武の言葉

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生きてはまさに
また来たり帰るべし。

死してはまさに長く相思うべし。
(蘇武)

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、古代中国の蘇武(紀元前140年頃~紀元前60年)の言葉です。前漢の官人で、詩人としても知られました。匈奴の使者に任じられるも囚われ、19年間幽閉された。後に帰国しました。宣帝擁立に関与し、関内侯の位を賜り、張安世の薦めにより右曹・典属国に返り咲きました。80歳余りの高齢で亡くなっていますが、死ぬ以前、宣帝は蘇武が子の蘇元を失っていることを哀れみ、匈奴で軟禁された時に匈奴の女性との間に生まれた子の蘇通国を漢に呼び寄せて郎としました。また、麒麟閣には宣帝の名臣たちと並んで蘇武の像が描かれました。

 

漢書 全8巻セット (ちくま学芸文庫)

漢書 全8巻セット (ちくま学芸文庫)

  • 作者:班 固
  • 発売日: 1998/07/10
  • メディア: 文庫
 

 

蘇武の事跡等に関しては『漢書』蘇武伝がある他に、『文選』に李陵が蘇武に与えた詩3首と蘇武に答えた書と共に、蘇武の詩が4首収められています。蘇武と李陵の贈答の詩については、期の厳羽が記した『滄浪詩話』に「五言詩は李陵・蘇武に起こる」と記されています。中島敦の小説『李陵』にも蘇武が描写されています。

 

李陵・山月記

李陵・山月記

 

 

死んだ後に、どれだけの人に思い出してもらえるか。それは人間の価値の1つではないでしょうか。昨今、葬儀をしない(もしくは簡単に済ませる)という風潮が見られます。墓も作らないという人も多くいます。わたしは、自分の葬儀をイメージしてほしいという話を、よく高齢者の方にさせていただきます。誰が弔辞を読んでくれるのか、誰が参列してくれるのか――死を考えることは不謹慎なという人がいますが、そういう人は、この蘇武の残した言葉をかみしめてほしいと思います。

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わたしの入棺体験のようす

 

ブログ「入棺体験」にも書きましたが、わたしは棺の中に入ったことがあります。棺に入って目を閉じると不思議な感じで、本当に自分が死んだような気がしました。わたしは「これまでの人生に悔いはないか」と振り返り、自分の人生を遡ってみました。すると、いろんな思いが次から次へと浮かんできました。入棺体験は、自分を見つめ直す行為になると実感しました。わたしは「自分が人生を卒業する日はいつだろう。いずれにせよ、今日は残りの人生の第一日目だな」と思いました。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。ご一読下されば、幸いです。

 

死を乗り越える名言ガイド 言葉は人生を変えうる力をもっている

死を乗り越える名言ガイド 言葉は人生を変えうる力をもっている

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2020/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

2021年月21日 一条真也