MS責任者会議

一条真也です。
19日、わが社のグリーフケア推進課の市原課長の御尊父のお葬儀が行橋紫雲閣で執り行われ、参列いたしました。これまで多くの悲嘆者に寄り添ってきた市原課長が、今日は同志たちから寄り添われている姿に静かな感動をおぼえました。故人の御冥福を心よりお祈りいたします。

f:id:shins2m:20210419131815j:plain行橋紫雲閣の前で

 

14時からは、 サンレー本社でサンレーグループMS責任者会議が開催されました。MSとは「MEMBERS SERVICE(メンバーズ・サービス)」であり、「MORAL SUPPORT(モラル・サポート)」のことです。日々、「人の道」としての冠婚葬祭の意義と必要性をお客様に説明している人たちです。ブルシット・ジョブの対極に位置する最重要の仕事です。

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最初は、もちろん一同礼!

f:id:shins2m:20210419153405j:plain最初に、表彰式をしました

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トロフィーを授与しました

f:id:shins2m:20210419140417j:plain社長訓示をしました

 

会議の冒頭、各種の表彰を行いました。表彰式が終わると、わたしは14時半から60分ほどの社長訓話をしました。パープルの不織布マスクを着けたわたしは、まず、「この会議を開くのは2年ぶりですね。昨年、世間では新型コロナウィルスと『鬼滅の刃』の話題で持ちきりでした。『鬼滅の刃』とは、吾峠呼世晴氏の漫画ですが、アニメ化・映画化され大ヒットし、もはや社会現象にまでなっています」と言いました。

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今日は、紫色の不織布マスクで・・・

 

続いて、マスクを外して、以下のような話をしました。「鬼滅の刃」という物語ですが、基本的には戦の話です。一方に、鬼舞辻無惨をリーダーとして、「上弦」たちがトップを占める「鬼」のグループ。他方に、「お館様」こと産屋敷耀哉をリーダーとして、「柱」たちがトップを占める「鬼殺隊」のグループ。この両陣営が死闘を繰り広げる組織vs組織の戦争物語です。

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マスクを外して、「鬼滅の刃」を語りました

 

鬼滅の刃」には、マネジメントやリーダーシップの観点からも興味深い点が多々あります。恐怖心で鬼たちを支配する鬼舞辻無惨はハートレス・リーダーであり、鬼殺隊の剣士たちを心から信頼し、リスペクトする産屋敷耀哉はハートフル・リーダーです。両陣営の闘いは「ブラック企業vsホワイト企業」と言ってもいいでしょう。ホワイト企業には志や使命感があることも確認できました。そして、わが社の行き方が間違っていないことも確認できました。

f:id:shins2m:20210419145412j:plain炭治郎と金次郎について

 

今年1月末に上梓した『「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)が好評ですが、その中でも「鬼滅の刃」が日本人の「こころ」の奥底に触れたために社会現象にまで発展する大ブームになったという部分に共感してくれた読者が多かったようです。そして、わたしは「鬼滅の刃」の主人公である竈門炭治郎には日本人の「こころ」を支える三本柱である神道儒教・仏教の精神が宿り、二宮金次郎のイメージに重なると書いたところ、大きな反響がありました。

f:id:shins2m:20210419154254j:plain二宮尊徳の偉業を語る

 

妹の禰津子を背負う炭治郎の姿は薪を背負って読書する金次郎の姿を連想させますが、外見的に似ているだけではなく、金次郎もまた神道儒教・仏教の精神を宿した人でした。二宮金次郎は、戦前の国定教科書に勤勉・倹約・孝行・奉仕の模範として載せられ、全国の国民学校の校庭には薪を背負い本を読む銅像が作られました。わたしの書斎には、尊徳の銅像のミニチュアが鎮座しています。金次郎は長じて、尊徳と名乗りました。幕末期に、農民の出身でありながら、荒れ果てた農村や諸藩の再建に見事に成功させた人物として知られます。

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『代表的日本人』の1人として 

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熱心に聴く人びと

 

内村鑑三が名著『代表的日本人』の中で、西郷隆盛上杉鷹山中江藤樹日蓮と並んで二宮尊徳を取り上げていますが、明治以降、近代日本を創り上げていった人々が尊徳を「師」と仰ぎました。渋沢栄一をはじめ、安田善次郎、御木本幸吉、豊田佐吉松下幸之助土光敏夫といった偉大な成功者たちも、みな尊徳を信奉していました。道徳、勤労、積小為大、推譲といった尊徳思想のキーワードについて、『教養として知っておきたい二宮尊徳』を書いた松沢成文氏は、「これらの教えは、日本人の社会規範や道徳としての精神的価値の基盤になっているといっても過言ではない。尊徳ほど、独創的な考え方や創造的な生き方を通じて社会を変革した人はいない」と述べています。

f:id:shins2m:20210419142943j:plain尊徳は日本が世界に誇りうる大思想家だった!

 

尊徳は、600以上の大名旗本の財政再建および農村の復興事業に携わりました。彼は同時代のヘーゲルにも比較しうる弁証法を駆使した哲学者であり、ドラッカーの先達的な経営学者でもありました。そう、二宮尊徳は日本が世界に誇りうる大思想家だったのです。自らの実践を通じて「至誠」「勤労」「分度」「推譲」「積小為大」「一円融合」などの改革理念や思想哲学を生み出し、人々を導いてきました。これらの教えは、日本人の社会規範や道徳としての精神的価値の基盤になっています。

f:id:shins2m:20210419143532j:plain「心学」の流れを語る

 

その尊徳は、石田梅岩が開いた「心学」の流れを受け継ぎました。心学の特徴は、神道儒教・仏教を等しく「こころ」の教えとしていることです。日本には土着の先祖崇拝に基づく神道があり、中国で孔子が開いた儒教、インドでブッダが開いた仏教も日本に入ってきました。しかし心学では、この三つの教えのどれにも偏せず、自分の「心を磨く」ということを重要視しました。

f:id:shins2m:20210419140544j:plain尊徳ほど偉大な人はいない!

 

尊徳は、代表作である『二宮翁夜話』において、「神道は開国の道、儒教は治国の道、仏教は治心の道である」と喝破しました。彼は、いたずらに高尚を尊重せず、また卑近になることを嫌わずに、この三道の正味だけを取ったといいます。正味とは人間界に大事なことを言います。大事なことを取り、大事でないことを捨て、人間界で他にはない最高の教えを立てたわけで、これを「報徳教」と名付けました。また、「神儒仏正味一粒丸」という名前をつけており、「その効用は広大で数えきることができないほどである」と述べてています。

f:id:shins2m:20210419144557j:plain「天道」とは何か?

 

尊徳は、常に「人道」のみならず「天道」を意識し、大いなる「太陽の徳」を説きました。それは大慈大悲の万物を慈しむ心であり、尊徳の「無利息貸付の法」も、この徳の実践でした。その尊徳の心の中心にあった「天道」の名を冠した研修施設が、北九州市小倉北区上富野の「天道館」です。現在、天道館では、実践礼道小笠原流の礼儀作法を取り入れ、サンレー社員としての基本的なスキルを学ぶ場になっています。また、ご近所の皆様が気軽に集える「公民館」や「市民センター」のような施設として、ご利用いただいています。さらには、高齢者同士が隣近所付き合いを活性化させ、共に支え合う社会を目指す拠点です。

f:id:shins2m:20210419160116j:plain渋沢栄一と「論語と算盤」について

 

「天道」をつねに意識しながら「天下布礼」に励みたいものですが、二宮尊徳は多くの偉人から尊敬されました。その中の1人に渋沢栄一という方がいます。NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公で、新1万円札の顔になる渋沢栄一です。彼は、約500の企業を育て、約600の社会公共事業に関わった「日本資本主義の父」として知られています。晩年は民間外交にも力を注ぎ、ノーベル平和賞の候補に二度も選ばれています。その彼が生涯、座右の書として愛読したのが『論語』でした。渋沢栄一の思想は、「論語と算盤」という一言に集約されます。それは「道徳と経済の合一」であり、「義と利の両全」です。

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「人間尊重」について

f:id:shins2m:20210419141506j:plain熱心に聴く人びと

 

結局、渋沢のめざしたところは「人間尊重」そのものであり、人間のための経済、人間のための社会を求め続けた人生でした。第一国立銀行(現在の東京みずほ銀行)を起こしたのをはじめ、日本興業銀行東京銀行(現在の東京三菱)、東京電力東京ガス王子製紙、石川島造船所、東京海上火災東洋紡清水建設麒麟ビール、アサヒビールサッポロビール、帝国ホテル、帝国劇場、東京商工会議所東京証券取引所聖路加国際病院日本赤十字病院、一橋大学日本女子大学東京女学館など、おびただしい数の事業の創立に関わりました。

f:id:shins2m:20210419145050j:plain礼経一致」の系譜について

 

渋沢は、「自分さえ儲かればよい」とする欧米の資本主義の欠陥を見抜いていました。ですから、彼は「社会と調和する健全な資本主義社会をつくる」ことをめざしますが、その拠り所を『論語』に求めました。それは、彼が会社を経営する上で最も必要なのは、倫理上の規範であると知っていたからです。渋沢の思想は、有名な「論語と算盤」という一言に集約されます。それは「道徳と経済の合一」であり、「義と利の両全」です。結局、めざすところは「人間尊重」そのもので、人間のための経済、人間のための社会を求め続けた人生でした。その影響を受けたわが社の佐久間会長は「礼経一致」を提唱しています。

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 『論語』の素晴らしさを大いに語る

 

論語』はわたしの座右の書でもありますが、その真価を最も理解した日本人が3人いると思っています。聖徳太子徳川家康渋沢栄一です。聖徳太子は「十七条憲法」や「冠位十二階」に儒教の価値観を入れることによって、日本国の「かたち」を作りました。徳川家康儒教の「敬老」思想を取り入れることによって、徳川幕府に強固な持続性を与えました。そして、渋沢栄一は日本主義の精神として『論語』を基本としたのです。聖徳太子といえば日本そのものを作った人、徳川家康といえば日本史上における政治の最大の成功者、そして渋沢栄一は日本史上における経済の最高の成功者と言えます。

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ぜひ、『論語』を読んで下さい!

 

 この偉大な3人がいずれも『論語』を重要視していたということは、『論語』こそは最高最大の成功への指南書であることがわかります。わたしがリスペクトする経営学ピーター・ドラッカーは、著書『マネジメント』上田惇生訳(ダイヤモンド社)で渋沢栄一に言及し、「率直に言って私は、経営の『社会的責任』について論じた歴史的人物のなかで、かの偉大な明治を築いた偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを知らない。彼は世界の誰よりも早く、経営の本質は『責任』に他ならないということを見抜いていたのである」と絶賛しました。

f:id:shins2m:20210419150205j:plain「相互扶助」がキーワード

 

コロナ禍という前代未聞の国難を経て、社会が大きく変化しています。わたしは関連書をまとめて読みましたが、「資本主義の終焉」とか「ビジネスの役割は終わった」とか「新しいコミュニズムの時代」といったショッキングな論説が多いです。確かに一理ありますが、少し行き過ぎた部分も感じます。しかし、「グレート・リセット」とか「エコノミーにヒューマニティを取り戻す」などのキーワードは的確だと思います。そして、今後の社会においては「相互扶助」が最大のキーワードになっています。

f:id:shins2m:20210419154523j:plain最後は、もちろん一同礼! 

 

これらのキーワード群を前にしたとき、わたしは「これからの社会は、冠婚葬祭互助会の時代ではないか」という思いがしてなりません。冠婚葬祭業は医療や介護と並んで、社会に必要なエッセンシャル・ワークであると考えています。そして、医療・介護・冠婚葬祭といったエッセンシャル・ワークに従事する人々の待遇がもっともっと高くなる社会でなければならないと思っています。ぜひ、営業責任者のみなさんも、冠婚葬祭互助会の会員を増やすことは世直しであることを知り、「天下布礼」に努めていただきたいと思います。今回は、こんな話をしました。なお、時節を鑑みて懇親会は行われませんでした。

 

2021年4月19日 一条真也