東京の夜は島薗進先生と

一条真也です。
5日の夕方、紀尾井町のホテルから四谷まで歩きました。
そして、客員教授を務めている上智大学を訪れました。

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四ッ谷駅前で上智大学を背に

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キャンパスには入れず

f:id:shins2m:20210405171545j:plain聖イグナチオ教会の前で

コロナ騒ぎで久々の上智訪問だったので、中を散策しようかと思ったら、いつもの入口は学生専用で、教員といえども入れませんでした。やはり、徹底した感染症対策を行っていますね。隣接する聖イグナチオ教会の前で「コロナ終息」の祈りを捧げた後、 上智大学グリーフケア研究所島薗進所長とお会いすべく、指定された四ッ谷駅近くのイタリアン・レストランを訪れました。

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島薗進先生と

ブログ「京都の夜は鎌田東二先生と」で紹介したように、先月30日、京都大学名誉教授で上智大学グリーフケア研究所特任教授の鎌田東二先生と久しぶりにお会いしましたが、東京大学名誉教授の島薗先生とお会いするのも久しぶりです。オンライン講義では対面していましたが・・・。この日は、上智大学グリーフケア研究所が監修し、一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)のグリーフケアPTが企画・実行し、一般財団法人 冠婚葬祭文化振興振興財団が運営する「グリーフケア資格認定制度」について、また同財団が設立を計画中の現代儀礼・儀式文化学会(仮称)について、意見交換させていただきました。


今夜はディナー・ミーティングということで、ワインのグラスを重ねていくうちに話題は広がり、ブログ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」ブログ「シン・エヴァンゲリオン劇場版」で紹介したアニメ映画、ブログ『葬送のフリーレン』で紹介したコミックなどについても大いに語り合いました。島薗先生は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を観て泣かれたそうです。エヴァについての熱い想いも語って下さいました。まだ、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」はご覧になられていないそうですが、エヴァの劇場版「序」「破」「Q」のDVDを観て復習&予習されているとか。わたしが「シン・エヴァンゲリオン劇場版」には相互扶助の村のような共同体が登場し、そこはエッセンシャルワークのみで成立していたことをお話すると、非常に興味を持って下さいました。

 

また、わたしが「最近は、どんな小説を読んでも、どんな映画を観ても、テーマがグリーフケアであることに気づきます。この理由には3つの可能性があると思います。1つは、わたしの思い込み。2つめは、神話をはじめ、物語というものはすべてグリーフケアの役割を果たしていること。3つめは、本当にグリーフケアを題材とした作品が増えていること。わたしは3つとも当たっているような気がします」と申し上げたところ、島薗先生はうなずいて下さいました。さらには、新型コロナウイルスの変異種、東京五輪、日本民俗学、日本人の先祖供養、東アジアの死者崇拝、カトリック儀礼文化、イスラームの巡礼、コロナ後の世界の宗教地図、そして、鎌田先生とわたしが応募中の月周回旅行・・・・・・次々に派生する話題を縦横無尽に語り合いました。約2時間のトークセッションでしたが、わたしにとって得難いハートフルな時間となりました。

 

徳川時代の宗教 (岩波文庫)

徳川時代の宗教 (岩波文庫)

  • 作者:R.N.ベラー
  • 発売日: 1996/08/20
  • メディア: 文庫
 

 

ブログ「儀式が日本人を不幸にする?」で、わたしは「入学式も卒業式もムダ。3月4月すべての儀式が日本人を不幸にする」というネット記事を批判するとともに、上智大学で1年遅れの入学式が行われたことを高く評価しました。このブログ記事を読まれた島薗先生からメールが届き、そこには「集団の統率や『空気に従う』ということと、責任の欠如というところで日本の集団主義的な側面を批判するのは、今も意義があると思いますが、儀式不要論は的を射損ねていると思います。ご批判ごもっともです。私が師事したロバート・ベラーはある時期に儀礼を軽んじるプロテスタント的なアメリカ文化の弱点に気づき、日本の儀礼文化の価値を見直すようになります。岩波文庫の『徳川時代の宗教』に収録されている80年代に執筆された新たな序文にそのことが書かれています」とありました。

 

儀礼の過程 (ちくま学芸文庫)

儀礼の過程 (ちくま学芸文庫)

 

 

また、島薗先生からのメールには、「儀礼の意義を重視したのは、社会学ではエミール・デュルケムでその系譜を引く、ヴィクター・ターナーやメアリー・ダグラスの業績を貴んでもいました。日本でその動向の影響を受けたのは、阪大の社会学教授で真宗僧侶だった故大村英昭さんで、真宗Pという主流派に対して、真宗Cを掲げて論陣を張っていました。Pはプロテスタント、あるいはピューリタン、Cはカトリシズムを指します。上智大学がしっかり1年遅れの入学式をやったのは、儀礼を尊ぶカトリックの影響があると思います」とも書かれていました。このような密度の濃いメッセージが日本における宗教学の第一人者から届くというのは、まことに幸運かつ光栄なことです。

f:id:shins2m:20200122162901j:plain島薗先生は「人生の師」です!

 

学問だけではなく、人間としても心から尊敬できる島薗先生は、「グリーフケア」というジャンルを超えて、わが人生の師であると思っております。今夜は、美味しいディナーも御馳走になり、非常に恐縮しています。
島薗先生、大変ごちそうさまでした。
今後とも、御指導よろしくお願いいたします!

 

2021年4月6日 一条真也