一条真也です。
3月29日は満月です。わたしは、満月の夜ごとに「バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生とWeb上の往復書簡「シンとトニーのムーンサルトレター」を交わしています。第1信から第30信までが『満月交感 ムーンサルトレター(上)』、第31信から第60信までが『満月交感 ムーンサルトレター(下)』(ともに水曜社)にまとめられています。2011年1月27日に上梓したこの2冊が、50冊目と51冊目の「一条真也による一条本」となります。
『満月交感 ムーンサルトレター』上下巻
(2011年1月27日刊行)
とにかく本のカバー・デザインがインパクト大でした。満月に向って吠える二匹の狼が描かれているのですが、まるで伝奇小説のようなイメージでした。わたしは上巻の「まえがき」の最後に、「満月に吠える二匹の狼が世直しめざす人に化けたり」という歌を詠みました。上下巻ともに300ページを優に超え、その過密な字組みは業界に衝撃をもたらし、多くの出版社の編集部で回覧されたとか。
上巻の帯の裏
上巻の「目次」は、以下の通りです。
まえがき(一条真也)
第1信 ●月狂い ●未来の風
第2信 ●ドラッカーの死 ●戸隠のムスビ
第3信 ●クリスマスの正体 ●アニメの活力
第5信 ●高野聖 ●四国遍路
第8信 ●主の祈り ●モノとは何か?
第9信 ●言霊 ●大駱駝鑑
第10信 ●第一次世界大戦 ●ガラス玉演戯
第11信 ●原爆と小倉 ●大物主神
第14信 ●賢治と妹・トシ ●久高オデッセイ
第15信 ●心の社会 ●東山修験道
第16信 ●サ神 ●比叡山
第18信 ●前野徹 ●母の死
第19信 ●愛する人を亡くした人へ ●過去を見出す
第20信 ●もの・こころ・たましい ●中沢新一
第23信 ●八大聖人 ●上田秋成
第25信 ●水と火と ●たましい
第27信 ●真の富 ●ルナティック・パワー
第28信 ●サンタクロース ●おん祭
第29信 ●人間嫌い ●食あたり
第30信 ●目に見えないもの ●遍路とほら貝
あとがき(鎌田東二)
下巻の帯の裏
下巻の「目次」は、以下の通りです。
まえがき(一条真也)
第31信 ●ドバイ ●通勤路
第33信 ●シュメール ●東山修験道
第34信 ●ワザ―ART ●シュタイナー
第36信 ●ホグワーツ魔法魔術学校 ●天狗の里
第37信 ●月とファンタジー ●神々と祭り
第39信 ●がんばれ仏教 ●八ちまた
第40信 ●飼い犬の恨み ●こころの未来
第42信 ●ザ・ムーン ●発光ダイオード
第43信 ●悼む人 ●水の心
第44信 ●花は散りぬる ●土地のスピリット
第45信 ●一番小さな海 ●世阿弥のトランス
第46信 ●1Q84 ●不全
第47信 ●思い出ノート ●カマトト文学
第48信 ●ロウソクの灯 ●セロトニン
第50信 ●フリーメイソ ●友愛党員
第52信 ●マイケル・ジャクソン ●悲の器
第53信 ●辺境より ●子規と真淵
第54信 ●沈まぬ太陽 ●解器
第55信 ●匿名の卑怯 ●親鸞
第56信 ●天河 ●神懸り
第57信 ●葬式は必要! ●アースデイ
第58信 ●守礼之邦 ●アブラハムの宗教
第59信 ●グリーフケア ●解き放つ
第60信 ●妖精を見る ●来世までも
あとがき(鎌田東二)
東京自由大学にて
わたしのレター・ネームの「Shin」というのは鎌田先生がつけて下さいました。もちろん「一条真也」の「真」から取っているのでしょうが、メソポタミア神話の最古の神である月神シンの意味もあるそうです。「Tony」というのは、「東二」の音読みです。また、コメディアンの「トニー谷」をもじってもいるそうですが、「トニー・パリ・カマターニュ」という名のフランス人みたいでカッコいいですね。そういえば、先生が以前パリの街を歩いていたとき、パリを自分の故郷であるように感じられたとか。
本書の出版記念「隣人祭り」のようす
わたしは、いわゆる「往復書簡集」の類が好きで、フロイトとユング、夏目漱石と正岡子規、柳田國男と南方熊楠の文通などを愛読してきました。そのわたしが、敬愛してやまなかった鎌田先生と21世紀のWeb版往復書簡を交わすなどとは夢にも思いませんでした。ましてや、それが2巻組の単行本になろうなどとは! 2人の間に交わされた膨大なレターを読み返してみて、自分でもあきれました。
上巻の帯
5年の間、いろいろな話を鎌田先生としたものです。お互いの著書のこと、プロジェクトのこと、考えていること。話題も政治や経済、社会から、宗教、哲学、文学、美術、映画、音楽、教育、倫理、さらには広い意味での「世直し」まで。まあ、わたしがある話題に終始すれば、鎌田先生はまったく違う話題に終始するといった具合にあまり噛み合っていないこともありましたが、それもまた良し!(笑)お互いが言いたいことをつれづれなるままに書き、たまにはスウィングしながら、少しでも「楽しい世直し」につながっていけばいいなと思っていました。
下巻の帯
わたしが商売人の身であるにもかかわらず、文化人や学者の方々とお話しても何とかついて行けるのは、鎌田先生との文通で展開してきた議論のおかげかもしれません。わたしには、「自分は日本を代表する宗教哲学者と文通を続けているのだ」という自負と、「だから誰と対話することになっても怖くない」という自信があります。葬儀の存在意義をめぐって某宗教学者とNHKの番組で討論することになったときも、鎌田先生はアドバイスとして、「冠婚葬祭は形は変わっても絶対に必要です。人類は神話と儀礼を必要としています。それが人間です」との言葉を下さいました。まことに嬉しく、ありがたかったです。わたしが儀礼文化のイノベーションをめざしていく上で、鎌田先生のアドバイスがどれほど心の支えになっていることか!
パネルディスカッションでの2人
本書の上下巻とも、「まえがき」はわたし、「あとがき」は鎌田先生が書いたのですが、上巻の「あとがき」に鎌田先生は次のように書いて下さいました。「一条真也氏は一種の『超人』あるいは『ウルトラマン』である。冠婚葬祭業の大手会社の社長を務めながら、業界の広報委員長の役目を強い使命感を持って果たし、『葬式は、要らない』という論客に対して『葬式は必要!』と果敢に打って出る。経営者の傍ら50冊以上の書物を出版する作家であり、大学の客員教授としても教壇に立つ。並みの人間にできることではない。『ウルトラマン』と言いたくなるのも理解してくださるだろう」
わたしは、この文章を読んで、もう恐縮の至りなどという次元を通り越して、穴が入ったら入りたい心境でした。その旨を鎌田先生にも申し上げたところ、「いいじゃないですか」と笑っておられました。普通は「超人」というと「スーパーマン」が出てくるところですが、なぜ「ウルトラマン」なのか。これには2つの理由があるそうです。1つには、スーパーマンは等身大ですが、ウルトラマンは巨大だから。もう1つは、スーパーマンはアメリカ生まれですが、ウルトラマンは日本が生んだヒーローだからだそうです。いやはや、本当に申し訳ないような気持ちでいっぱいです。
それはそうと、「シン・ウルトラマン」(!)という映画が今年公開されるそうですね。おいおい、俺のことか?(笑) まさに、シン(!)クロニシティではないですか!(笑)しかも、ブログ「シン・エヴァンゲリオン劇場版」やブログ「シン・ゴジラ」で紹介した映画を監督した庵野秀明監督の最新作というから楽しみです! 本当は今年初夏の公開予定でしたが、東宝より「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)により、制作スケジュールに影響が出たため、予定していた『2021年初夏公開』ではなく、新たな公開時期へ調整させて頂きます。スタッフ一丸で鋭意制作中です。どうか楽しみにお待ち頂ければと思います」との発表がありました。
京都の北野天満宮にて
また、「まえがき」「あとがき」の最後に2人は短歌を詠んでいます。
満月に吠える二匹の狼が
世直しめざす人に化けたり
一条(上巻・まえがき)
満月の夜にいななく虫たちの
天地つらぬく越楽の声
鎌田(上巻・あとがき)
人はみな神話と儀礼求むると
文を交わせし師に教えられ
一条(下巻・まえがき)
ココと来て月を見上げてしずまりぬ
火宅世界に包まるるとも
鎌田(下巻・あとがき)
ココというのは、鎌田家の愛猫です。もう亡くなりましたが・・・・・・これらの短歌にも、2人の個性がよく現れているような気がします。
鎌田先生の応募完了画面
わたしの応募完了画面
進化論のチャールズ・ダーウィンの祖父にエラズマス・ダーウィンという人がいました。彼は月が大好きだったそうで、18世紀、イギリスのバーミンガムで「ルナー・ソサエティ(月光会)」という月例対話会を開いたといいます。わたしたちは、現代日本のルナー・ソサエティのメンバーなのかもしれません。そして、われらのルナー・ソサエティは、ハートフル・ソサエティをめざしています。そして、ブログ「月旅行に応募しました!」で紹介したように、常人離れした月狂いであるわたしたちは、スタートトゥデイの前澤友作社長が企画する月周回旅行「dearMoonミッション」の同乗者に揃って応募しました。現在、世界249ヵ国で約100万件、日本からは約7.6万件の応募があったそうです。かなり多い数で驚きました。はてさて、どうなることやら?
2021年3月29日 一条真也拝