気が集まればそれは生命である。
気が拡散すればすなわち死である。
(荘子)
一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、荘子(紀元前369年~紀元前286年頃)の言葉です。老子の後には荘子が出ました。よく「老荘思想」といわれ、二人の思想には共通項が多いように語られますが、二人の間には明らかな相違があります。老子が政治的関心から出発して形而上の世界へ入っていったのに対して、荘子は最初から永遠の世界に入ろうとしています。それだけに荘子のほうが、より哲学的であり、宗教的だと言えるでしょう。
二人が道家思想の巨人として並び称せられるようになったのは、前漢、紀元前139年にできた『淮南子』という百科思想書に「老荘」として初めて登場してからであり、魏晋南北朝時代の頃には『易経』『老子』『荘子』「三玄の書」と呼ばれこれらを基にした玄学が隆興しました。
「老荘思想」は「道家思想」とほぼ同じ意味に用いられています。これは前漢の頃には信頼できる道家の思想書が『老子』と『荘子』くらいしか残っていなかったからです。
「気が集まればそれは生命である。気が拡散すればすなわち死である」とは、ギリシア哲学を思わせるような表現です。生命と死を対比させることで、それぞれを際立たせています。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。
2020年8月29日 一条真也拝