「PHP」取材

一条真也です。
お盆休み明けの北九州は厳しい猛暑で、生命の危機を感じるレベルでした。静岡県浜松市では日本歴代最高に並ぶ41・1度を観測したそうです。そんな暑い日に、京都からお客様が来られました。京都に本社を置くPHP研究所のPHP制作局の局長で、「PHP」編集長の大谷泰志さんです。

f:id:shins2m:20200819144726j:plain「PHP」の大谷編集長と  

 

じつは、矢作直樹さんとの対談本である『命には続きがある』(PHP研究所)の担当編集者が大谷さんでした。その当時、東京大学医学部大学院教授で東大病院救急部・集中治療部長だった矢作さんとわたしが「命」と「死」と「葬」をめぐって大いに語り合った同書は、版を重ねてスマッシュヒットになりました。同書の刊行は2013年でしたので、大谷さんとお会いするのも7年ぶりになります。

f:id:shins2m:20200817132457j:plain「PHP」のインタビュー取材を受けました

 

この日、大谷編集長がわざわざ京都から来られたのは「PHP」本誌に毎月連載している「私の信条」というコーナーでのインタビュー取材でした。さまざまな業界のトップの方が、会社のミッションや自身の信条を語る内容です。わたしは、まず、ブログ「礼は人の道である(松下幸之助)」で紹介した名言を挙げて、「人間尊重」というわが社のミッションについて語りました。「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助翁は、パナソニック創業者であり、PHP研究書の創設者でもあります。幾多の苦難の末に経営者として稀にみる大成功を収めた松下翁は、渾身の著書『人間を考える』(PHP文庫)において、「礼」の問題を追求しました。そして、「礼をするから人間である」、さらには「礼は人の道である」と喝破しました。

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大谷編集長の質問を聞く 

 

わたしが『人間を考える』を読んで何よりも感動したのは、松下翁が「礼」というものを重んじている点でした。サンレーという社名の意味のひとつに「讃礼」すなわち礼の精神を讃えることがあるように、わが社は何よりも「礼」を重んじる会社です。でも、礼には大きく分けて2つの意味があります。人の道としての礼と、作法としての礼です。「モラル」としての礼と、「マナー」としての礼と言ってもいいでしょう。わたしは前者を「大礼」と呼び、後者を「小礼」と呼んでいます。『人間を考える』で触れられている礼は、まさに「大礼」です。

f:id:shins2m:20200817154858j:plain松下幸之助翁の「礼」の思想を語る 

 

わたしは日頃から「礼経一致」の精神を大事にしたいと考えていますが、「経営の神様」といわれた松下翁も「礼」を最重要視していました。彼は、世界中すべての国民民族が、言葉は違うがみな同じように礼を言い、挨拶をすることを不思議に思いながらも、それを人間としての自然の姿、人間的行為であるとしました。すなわち礼とは「人の道」であるとしたのです。そもそも無限といってよいほどの生命の中から人間として誕生したこと、そして万物の存在のおかげで自分が生きていることを思うところから、おのずと感謝の気持ち、「礼」の気持ちを持たなければならないと人間は感じたのではないかと松下翁は推測します。

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礼は「人間の証明」である! 

 

ところが、最近になってその人間的行為である「礼」が、なにやら実際には行なわれなくなってきました。挨拶もしなければ、感謝もしない。価値観の多様化のせいか。だが、礼は価値観がどんなに変わろうが、人の道、「人間の証明」です。それにもかかわらず、お礼は言いたくない、挨拶はしたくないという者がいます。松下翁は、「礼とは、そのような好みの問題ではない。自分が人間であることを表明するか、猿であるかを表明する、きわめて重要な行為なのである」と説きました。 ましてや経営や組織で1つの目的に向かって共同作業をするとすれば、当然、その経営、組織の中で互いに礼を尽くさなければなりません。挨拶ができないとか、感謝の意を表わすことができないというのであれば、その社員は猿に等しいと言えます。

f:id:shins2m:20200817155027j:plain経営者も社員に対して礼の心を持て!

 

経営者も社員に対して礼の心を持つ必要があります。自身が範を示さず、社員に礼を求めるばかりでは指導者としての資格はありません。要するに経営者も社員も「人間」であるかぎり、互いに人間的行為、すなわち礼を尽くさなければならないということです。さらに、お客様に対する礼は、人間としての最高の礼を示さなければなりません。お客様の存在によって経営は成り立ち、社員は生活できることを考えれば、経営者も社員もお客様に対して「最高、最善の礼」を尽くすことは当然です。松下幸之助は「生産者は、いい物を安く作るのが人類への礼というものだろう」とまで言っています。江口克彦氏は、「なぜ松下幸之助が経営において成功したのか」について、この「礼」を自らも徹底し、社員にも強く求めたことが重要な成功理由の1つであるとしています。

f:id:shins2m:20200817155052j:plain礼は「人の道」である!
 

松下幸之助はさらに言います。礼とは、素直な心になって感謝と敬愛を表する態度である。商いや経営もまた人間の営みである以上、人間としての正しさに沿って行なわれるべきであることを忘れてはなりません。礼は人の道であるとともに、商い、経営もまた礼の道に即していなければならないのです。礼の道に即して発展してこそ、真の発展なのです。70年間で実に7兆円の世界企業を築き上げ、ある意味で戦後最大の、というよりも近代日本で最大の経営者といえる松下幸之助翁が最も重んじていたものが人の道としての「礼」と知り、わたしは非常に感動しました。

f:id:shins2m:20200817160749j:plainさらに「天下布礼」を進める覚悟です!

 

礼経一致」に基づくサンレーの企業姿勢が間違っていないことを確信し、わたしは「天下布礼」の道を歩む決意を固めました。コロナ禍の時代にあっても、いやコロナ禍だからこそ、さらに「天下布礼」を進める覚悟です。わたしのインタビュー記事は、10月10日発売の「月刊PHP」11月号に掲載の予定です。全国の書店やコンビニでも販売されますので、お買い求め下さいますよう、よろしくお願いいたします!

 

2020年8月17日 一条真也