読書文化で日本復活

一条真也です。
当ブログで「『緊急事態宣言』を『読書宣言』と陽にとらえて、大いに本を読みましょう! 」と訴え続けているわたしですが、「週刊新潮」5月7日・14日ゴールデンウィーク特大号に作家・数学者の藤原正彦氏の「緊急提言 コロナ後の世界 今こそ読書文化で日本復活」という記事を読み、我が意を得た思いをしました。非常に示唆に富んだ内容でした。

f:id:shins2m:20200509161901j:plain週刊新潮」5月7日・14日ゴールデンウィーク特大号

 

藤原氏は、全世界的な新型コロナウイルスの蔓延で、はっきりしてきた対立が2つあるといいます。1つは、中国の覇権主義とそれを警戒する国々との対立です。そして、もう1つは、グローバリズム新自由主義)と国民国家の対立です。
これら2つの対立が鮮明になったことで、世界各国では具体的に以下の4つの動きが顕著になります。第1は、国民国家への回帰がさらに発展して、トランプ政権のような自国ファーストが強く叫ばれるようになる。第2は、自由に対する規制が強化される。さらに今後は失業者が急増し、彼らを守るために、移民も規制する必要が出てきます。第3は、経済至上主義への懐疑が強まる。そして第4は、格差の是正と福祉政策が強化されます。

 

国家と教養(新潮新書)

国家と教養(新潮新書)

 

 

幕末の頃、世界中を植民地にしたヨーロッパ人が最後にやってきたのが極東の日本です。彼らは江戸の本屋で庶民が立ち読みしているのを見て、「これはとても植民地にはできそうにない」と思ったそうです。藤原氏は、著書『国家と教養』(新潮新書)の中で、「教養」とは、世の中に溢れるいくつもの正しい「論理」の中から最適なものを選び出す「直感力」、そして「大局観」を与えてくれる力だと喝破します。その教養を育てるものは、もちろん読書です。そして、国民の読書を支えるものは図書館や書店ですが、日本においては書店の数が減少する一方です。

 

本屋を守れ 読書とは国力 (PHP新書)

本屋を守れ 読書とは国力 (PHP新書)

  • 作者:藤原 正彦
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 新書
 

 

藤原氏には、『本屋を守れ 読書とは国力』(PHP新書)という最新刊があります。日本人の15歳の読解力はOECD経済協力開発機構)の学習到達度調査で急落しました。月に1冊も本を読まない中高生や、移動時間に新聞や文庫本を読まず、スマホしか見ない大人たちが増え、町の本屋の数は減る一方です。著者いわく、これらは国家全体に及ぶ「読書離れと教養の低下」にほかなりません。めざすは「書店の復活」だといいます。

f:id:shins2m:20200417153028j:plain近刊『心ゆたかな社会』(現代書林) 

 

さらに、緊急提言で藤原氏は以下のように述べています。
「これからもっとも大事なことは、コロナを奇貨としてよりよい社会、よりよい国にするということです。転んでもただで起きないことです。今、大切なのは楽観力です。有史以来、コロナよりはるかに悲惨な天災、疫病、飢饉、戦争をくぐり抜けてきた日本民族には、やさしさに加え不屈の精神があります。コロナ程度に負けるはずがないのです」
これは、100冊目の「一条本」となるわが近刊『心ゆたかな社会』(現代書林)におけるメッセージに通じます。

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西日本新聞」2020年4月21日朝刊

 

藤原氏の言う「今、大切なのは楽観力」というのも、まったく同感です。それは、わたしの言う「何事も陽にとらえる」ということにほかなりません。先日の「西日本新聞」の連載コラム最終回のタイトルでもある「何事も陽にとらえる」とは、父の教えです。今回の新型コロナウイルスによるパンデミックを陽にとらえ、前向きに考えるとどうなるか。それは、何と言っても、世界中の人々が国家や民族や宗教の枠を超えて、「宇宙船地球号」の乗組員だと自覚したことに尽きるのではないでしょうか。その意味で、「パンデミック宣言」は「宇宙人の襲来」と同じかもしれません。新型コロナウイルスも、地球侵略を企むエイリアンも、ともに人類を「ワンチーム」にする存在なのです。アフター・コロナは人と人が温もりを求め合う「心ゆたかな社会」です。世界は必ず良くなります。あなたはきっと幸せになります。
そう信じて、ともに前に進んでいきましょう!



2020年5月9日 一条真也