「礼」を知らない国・中国

一条真也です。
11日、読売新聞オンラインが配信した「中国、安倍首相の蔡氏への謝意ツイートを抗議・・・日台連帯に警戒か」という記事には驚きました。

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ヤフー・ニュースより 

 

記事には、「中国政府が、新型コロナウイルスへの対応を巡り、安倍首相がツイッターで台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統による日本への応援メッセージに謝意を示したことについて、日本に外交ルートで抗議していたことがわかった。日本政府関係者が明らかにした。『1つの中国』原則を掲げる中国は、感染対策を巡り日台間で連帯感が強まることを警戒しているとみられる。蔡氏は、安倍首相が東京都など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令した7日、『手を携えてこの闘いに勝ちましょう』と日本語でツイッターに投稿した。これを受け、首相は8日、自らのツイッターに『温かい声援に心より感謝いたします。ウイルスとの闘いに打ち勝ち、この試練を共に乗り越えていきましょう』などと投稿した。日本政府関係者によると、この投稿を問題視した中国外務省が北京の日本大使館に抗議した」と書かれています。



この記事を読んだとき、わたしは怒髪天を衝く思いでした。
そもそも、パンデミックにまで発展した新型コロナウイルスの感染拡大は中国発ではありませんか。感染によって多くの死者を出した世界各国に対して謝罪するべきところを、自分たちが原因で迷惑をかけた日本と台湾に因縁をつけるとはどういうことか? 台湾の総統が「手を携えてこの闘いに勝ちましょう」と日本語でツイッターに投稿したならば、日本の首相が自らのツイッターに「温かい声援に心より感謝いたします。ウイルスとの闘いに打ち勝ち、この試練を共に乗り越えていきましょう」と投稿する行為のどこがおかしいのですか? 相手から受けた善意に対して、感謝の意を表明するのは当然の「礼」です。「1つの中国」原則といった政治の理論など関係ありません。「礼」は政治に優先する「人の道」です。中国人は「礼」という概念を知らないのでしょうか?

f:id:shins2m:20200413085916j:plain中国人は「礼」を知らないのか?

 

ブログ『「礼」とは何か』にも書いたように、「礼」とは、2500年前の中国の春秋戦国時代において、他国の領土を侵さないという規範として生まれたものだとされています。その「礼」の思想を強く打ち出した人物こそ孔子です。そして、逆に「礼」を強く否定した人物こそ秦の始皇帝でした。それは、始皇帝は自ら他国の領土を侵して中国を統一する野望を抱いていたからです。彼は『論語』をはじめとする儒教書を焼き払い、多くの儒者を生き埋めにしました。世に言う「焚書坑儒」です。人類史上に残る愚行とされています。しかし、始皇帝が築いた秦帝国はわずか14年間しか続きませんでした。しょせんは「人の道」を踏み外した人間の作った国など、長続きしなかったのです。現在の中国の支配者である習近平は、どうやら始皇帝になりたいようですね。



現代の中国には、「礼」のかけらもありません。それを痛感したのが、2004年のサッカー・アジア杯における日本戦での中国人サポーターたちの態度です。相手国の国歌斉唱時の際にブーイングをしたり、国旗を焼くなどの傍若無人のふるまいは、「非礼」「失礼」「無礼」千万でした。こんな国が国際社会に参加する資格などありませんが、このたびの新型コロナウイルスの感染拡大の責任放棄だけは許せません。中国のメディアは「過剰に自己批判する必要はない」などと報じ、新型コロナウイルスを巡る中国政府の初動対応への批判を払拭させようとするプロパガンダを強化しています。完全に人類社会の公益に反しています。感染拡大が終息したポスト・コロナの世界は「中国なき世界」かもしれません。

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台湾・台北孔子廟にて

 

一方、中国人の知らない「礼」をよく知っているのが台湾の人々です。ブログ「孔子廟」に書いたように、2017年、わたしは冠婚葬祭業すなわち「礼業」であるサンレーグループの同志たちとともに台湾の台北市にある孔子廟を訪れました。台湾には儒教の精神が生きており、多くの孔子廟が存在します。わたしは、人類史上で最も孔子を尊敬しています。孔子ほど「社会の中で人間がどう幸せに生きるか」を追求した人はいません。そんな想いや行動が認められ、2012年には第二回「孔子文化賞」を受賞する栄誉に浴しました。わが社の50周年という大きな節目に台北孔子廟に参拝し、孔子が説いた「礼」の精神を守っていくことを誓いました。感染拡大が終息したら、また台湾を訪れたいです!

f:id:shins2m:20200411154443j:plainサンデー毎日」2017年4月2日号

 

2020年4月11日 一条真也