パンデミック100年周期説

一条真也です。ブログ『ヒューマンスケールを超えて』には多くのアクセスが集まりました。鎌田東二先生も大変喜ばれ、特に「現在、人類社会は新型コロナウイルスの感染拡大の脅威にさらされています。世界有数の大都市が次々に首都封鎖(ロックダウン)され、ついにWHOは『パンデミック宣言』を行い、IOCは『オリンピック延期』を決定しました。いまだ収束の兆しは見えず、人類にとって暗黒のような日々が続いていますが、じつは地球環境の視点から見ると、中国でもアメリカでも大気汚染が劇的に改善されています。新型コロナウイルスを『地球の逆襲』と表現する人々もいるほどです。これこそ、ヒューマンスケールの視点ではBadでも、ネイチャースケールの視点だとGoodという典型例ではないでしょうか」というくだりに強く共感されました。

f:id:shins2m:20200329133926j:plain武漢の病院で患者を搬送する医療スタッフ(ロイター)

 

さて、パンデミックといえば、「パンデミック100年周期説」というものが流行しています。新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、問題が深刻化しているわけですが、これは100年に1回の伝染病による人類の危機なのではないかという説です。それは、以下の通りです。

 

1720年 ペスト

1820年 コレラ

1920年 スペイン風邪

2020年 新型コロナ

 

といった具合ですが、最初はオカルト界で流布されていましたが、2月7日配信の「東スポWeb」の「パンデミック100年周期説 1720年・ペスト 1820年・コレラ 1920年・スペイン風邪 2020年・新型コロナ」という記事で世間にも広く知られるようになりました。最初は、わたしも「どうせ、東スポお得意の与太話だろう」ぐらいに思っていたのですが、よく考えてみると、たしかにこの奇妙な周期は歴史的事実であり、無視できない問題であることに気づきました。ブログ「呪われたオリンピック」で紹介した40年おきに五輪開催には問題が発生するという説をはるかに上回るインパクトの強い周期説であります。



記事には、「1720年前後にはフランスで『ペスト』が大流行となり、10万人が死亡した。100年後の1820年前後にはアジアから中東、ヨーロッパ、アフリカまで『コレラ』が蔓延した。1920年前後には、世界で5000万~1億人が亡くなった『スペイン風邪』が猛威を振るった。感染者は5億人で、当時の世界の人口は20億人だった。そして今年、2020年に新型コロナウイルスによる新型肺炎が発生し、パンデミック寸前の状態となっている」と書かれています。その後、東日本大震災の発生から9年目となる2020年3月11日、新型コロナウイルスの感染者の数が世界で12万人に迫るのを目前にして、WHO(世界保健機関)が「パンデミック」を宣言しました。ついに、感染症の世界的大流行を認めたのです。 

 

また、記事では、100年周期で人類に脅威を与える伝染病が流行してきたことを踏まえ、オカルト研究家の山口敏太郎氏の「経済の動きや病気の流行には、周期的なものがあるといいます。人間が集団で動いた結果として歴史が刻まれていくわけですが、必然的に似たような流れは繰り返されてしまうんでしょう。“歴史は繰り返す”といわれてきましたが、このパンデミックの歴史も奇妙なシンクロ現象を起こしています。とても偶然とは思えません」という発言を紹介しています。



さらに、記事には以下のように書かれています。
「実は、陰謀説として『100年ごとに伝染病が流行しているのだから、今回は中国が意図的にアウトブレイクさせていたとしてもおかしくない』という見方も出ている。科学問題研究家の阿久津淳氏は『武漢は中国で唯一、世界で最も危険な病原体(BSL-4=バイオセーフティーレベル4)の研究施設がある場所。約100万人の中国人がアフリカで働いていることから、クリミア・コンゴ出血熱を引き起こす病原体を研究したり、エボラウイルスの変異速度やその治療法、ラッサウイルスなどの研究をしているといいます。(重症急性呼吸器症候群)SARSウイルスの流出が、北京の保管施設であったとの報告もあるぐらいですから』と言う」



続けて、記事にはこうも書かれています。
「人為的に悪質なウイルスを作ることが可能だった施設があったことは間違いない。さすがに意図的にばらまくことはしないだろうが、何らかのミスで漏れてしまったのか、誰かが盗み出した可能性はないのか。一方でこれらとは無関係で、報道されている通り、武漢の海鮮市場で販売されていたコウモリやヘビ、タケネズミなどの野生動物からの感染だったのか。一説には武漢の海鮮市場での第1号とされる感染者の前に、市場と無関係な者が新型肺炎の症状で病院に運び込まれたという話もある。いずれにしても、新型コロナウイルスが100年周期の世界的伝染病として広がる可能性が出てきたのは確かだ」

 

世直しの思想

世直しの思想

  • 作者:鎌田 東二
  • 発売日: 2016/02/24
  • メディア: 単行本
 

 

山口氏は「一部で、意図的に何者かが人工ウイルスを世界に拡散しているといわれていますが、人間の潜在意識の集合体としての歴史は、まるで神仏のように我々人類を定期的に間引いているのかもしれませんね」と指摘しています。神秘学研究の第一人者でもある宗教哲学者の鎌田先生はブログ『世直しの思想』で紹介した著書などで、などで、「スパイラル史観=現代大中世説」という、周期説を取られてきました。「パンデミック100年周期説」をめぐるわたし宛のメールで、鎌田先生は「自然界にも人間界にも周期があると確信しています。その周期には、氷河期などの大周期と、中周期と、小周期があると思います。20年単位の世代交代などは、小周期ですね。人間の平均寿命などは、小周期と中周期の間ですね。ハレー彗星76年も小周期と中周期の間です。したがって、100年単位の切り取りもあり得る1つの視角・視点だと思います」と書かれています。



ところで、「コンテイジョン」という2011年のアメリカ映画が、現在の新型コロナウイルスが猛威をふるう状況に酷似していると話題になっています。「オーシャンズ」シリーズや「トラフィック」のスティーヴン・ソダーバーグ監督が、地球全体を恐怖に陥れるウィルスの恐怖を豪華俳優陣で描くサスペンス大作です。接触によって感染する強力な新種のウイルスが世界各地に拡大していく中で、社会が混乱し人々が異常なパニック状態に陥っていく様子を映し出しているそうです。キャストには、マリオン・コティヤールマット・デイモンケイト・ウィンスレットなど実力派スターが集結し、映画としても極上のパニック・ムービーに仕上がっているとのこと。わたしも観てみようと思います。



映画といえば、最近、日本映画「復活の日」(1980年)をDVDで観ました。「愛は、人類を救えるか」というキャッチフレーズが流行した角川映画のSF超大作で、原作は日本SF界の巨匠・小松左京です。主演は草刈正雄、オリビア・ハッセ―です。「MM88」と名づけられた細菌兵器によって全世界はパニックとなり、45億人の人類が死亡する物語です。氷に閉ざされた南極大陸には863人の探検隊員が残されますが、滅亡寸前まで追いこまれた人類が生き残るドラマが壮大なスケールで描かれます。小松左京が原作である『復活の日』を書いたのは、なんと1964年。東京オリンピックの年でした。原作では、大相撲やプロ野球が短縮されたり中止になったりします。



映画の中のウイルスの画像は新型コロナに酷似しています。また、イタリアで完成拡大して「イタリア風邪」などと呼ばれるのですが、そのうち「新型ウイルス」という名前が付きます。最初は咳が出るので単なる風邪かと思ってしまうところも新型コロナにそっくり。感染は医療関係者にまで拡がり、医療崩壊を招いて、ついには日本全土に戒厳令が発令されます。そして、感染は世界中に拡大されて人類が存亡の危機を迎えるのでした。あまりにも映画の描写が現在の状況と似ているので、怖くなってきます。小松左京は予言者だったのでしょうか?

 

SF魂 (新潮新書)

SF魂 (新潮新書)

  • 作者:小松 左京
  • 発売日: 2006/07/14
  • メディア: 新書
 

 

コンテイジョン」や「復活の日」の他にも、人類がウイルスや細菌兵器と戦う映画はたくさんあります。それらは「SF映画」と呼ばれることが多いですが、ブログ『SF魂』で紹介した本の「あとがき」で、著者の小松左京は「SFとは思考実験である」「SFとは文明論である」「SFとは哲学である」といったSFの定義を延々と並べてから、最後には「SFとは希望である」と締めくくっています。人類が未曽有の危機に瀕している現在、わたしたちはSFにおける想像力を「人類の叡智」として使う時期なのかもしれません。そして、そこには「希望」があることを信じています。

 

2020年3月30日 一条真也