「あなたの番です」

一条真也です。
新型コロナウィルスの感染拡大で映画館に行くことができません。本当は、「スケアリーストーリーズ　怖い本」「ジュディ　虹の彼方に」「Ｆｕｋｕｓｈｉｍａ５０」「星屑の町」などの新作を観たいのですが、北九州でも感染者が出たこともあって劇場での映画鑑賞を自粛しています。映画中毒のわたしとしてはストレスがたまりますが、代わりに自宅でＤＶＤを観ています。ここ数日かけてＴＶドラマの「あなたの番です」のＤＶＤ－ＢＯＸを全部観ました。

「あなたの番です」ＤＶＤ－ＢＯＸ （表）

「あなたの番です」（通称「あな番」）は、日本テレビ系「日曜ドラマ」にて２０１９年４月１４日から９月８日まで毎週日曜２２時３０分―２３時２５分に放送されていたテレビドラマです。わたしは基本的にＴＶ番組をオンエアでは観ない人間ですが、このたびＤＶＤ－ＢＯＸが発売されたので購入し、全２０話を観ました。ドラマを一気に観たのはブログ「アンナチュラル」で紹介したドラマ以来です。

「あなたの番です」ＤＶＤ－ＢＯＸ （裏） 

「アンナチュラル」以外でも、小栗旬主演の「ＢＯＲＤＥＲ　警視庁捜査一課殺人操作第４係」とか現在も最新作「絶対零度～未然犯罪潜入捜査～」が放映中の「絶対零度」シリーズなどはネットで全話を観ました。いずれも「死」というか「殺人」がテーマの物語ですが、そこに「グリーフケア」の要素があるという共通点があります。「あな番」の場合は、愛する人を亡くした人が故人と会話できるアプリが登場していると聞いて、グリーフケア最前線を探る意味でも鑑賞しました。ちなみに、「あな番」は日本テレビでは２５年ぶりとなる２クール連続ドラマで、第１章と第２章・反撃編の二部構成になっています。

ＤＶＤ－ＢＯＸのアマゾン【イントロダクション／ストーリー】には、こう書かれています。
「あなたには今、殺したい人がいますか―――？
『あいつ、絶対殺してやるー』
『あ～もう死ねばいいのに～』
誰しも冗談で口にしたことがありそうな、こんな一言。その言葉が、いつのまにか一人歩きし、現実になったとしたら・・・？　とあるマンションに引っ越してきた一組の新婚夫婦。マイホームを手に入れ『穏やかで、幸せな暮らしが待っている―――』そう信じていた。しかし、マンションの周囲で次々と人が死んでいく・・・！　謎の連続死・・・その裏には、住民の間で行われたあるゲームがあった。それは、１３人の住民がそれぞれ『殺したい人』を書いてその紙をランダムに引いていく“交換殺人ゲーム"。『まぁ、ゲームだし。ムカつくやつの名前書いたらスッキリするかも。』みな軽い気持ちだったはずが、書かれた人間がどんどん殺され始めた・・・。『まさか、誰かがゲームを実行してるんじゃ・・・？』『そんなつもりじゃなかった、のに。』そして、届く脅迫状。―――“あなたの番です"後悔しても、もう戻れない。動機なき殺人の連鎖が始まる・・・！」

続いて、ＤＶＤ－ＢＯＸのアマゾン【イントロダクション／ストーリー】には、こう書かれています。
「―――誰が、誰の名前を書いたのか？―――その紙を引いたのは、誰なのか―――自分が名前を書いた“あの人"も、誰かに殺されてしまうのか？―――もし“あの人"が殺されたら、今後は自分が殺す番なのか？―――もう殺人を犯した人が、この中にいるのか・・・？隣人たちの疑心暗鬼の渦に飲み込まれる夫婦が、超難解な連続殺人の謎に挑む半年間のノンストップ・ミステリー! ! ―――その殺意、現実になったらどうしますか・・・？」

登場人物(ＤＶＤ－ＢＯＸのブックレットより）

全２０話を観た感想ですが、一連の連続殺人の真犯人は最終話までわかりませんでした。その意味では、視聴者の予想を裏切り続けてきたわけで、ミステリーとしては成功かもしれません。役者陣も、まず黒島沙和を演じた西野七瀬がキュートでしたし、二階堂忍を演じた横浜流星もカッコ良かったです。じつは、この２人、このドラマで初めてその存在を知りましたが、逸材ですね。それから、管理人を演じた竹中直人をはじめ、生瀬勝久、田中要次、徳井優、野間口健、安藤政信、西村淳、さらには前原滉まで、なんともクセのある怪優を揃えていて、見応えがありました。
ただし、一番の怪優は田中圭でした。彼が演じる主人公の手塚翔太が究極の「能天気」というか「お花畑」人間で、原田知世演じる妻の菜奈とじゃれ合うシーンなどはウザすぎて、不愉快というレベルを通り越し、観ているのが苦痛でした。よほどＤＶＤの鑑賞を中止しようかと思いましたが、我慢して観続けたところ、第２章・反撃編からは人間が変わったようにシリアスになったのでビックリ！

「ＡＩ菜奈ちゃん」と会話する 翔太

なぜ翔太のキャラが変わったかというと、ここだけはネタバレ覚悟で書きますが、愛妻の菜奈を何者かに殺されたからです。翔太はその犯人を捜すべく復讐鬼と化すのでした。菜奈を亡くした翔太の喪失の悲嘆は大きく、それを見かねた横浜流星演じる二階堂忍が翔太のために「ＡＩ菜奈ちゃん」というアプリを製作します。これこそ、故人と会話できるというグリーフケア・アプリなのでした。翔太が「ＡＩ菜奈ちゃん」と会話するシーンは、ブログ「ＶＲとグリーフケア」で紹介した韓国人女性がＶＲ（バーチャルリアリティ）で３年前に亡くなった娘と再会したエピソードを連想しました。そして、ＡＩを駆使したグリーフケアの可能性は否定はしないまでも、やはり強い違和感を抱いたことも事実。グリーフケアにおいては、「忘れる力」も大切であると思いました。

グリーフケアといえば、「あな番」の反撃編の主題歌は、「会いたいよ」というグリーフケア・ソングになっています。田中圭が手塚翔太の役名で歌っているのですが、これが沢田知可子の「会いたい」と平井堅の「瞳を閉じて」を足して２で割ったような歌で、白けました。「会いたい」と「瞳を閉じて」は感動の名曲ですが、「会いたいよ」にはまったく感動できませんでした。作詞は秋元康です。「あなたの番です」というドラマ自体の企画・原案も秋元康となっています。わたしは彼の仕事にはいつも「あざとさ」を感じてしまうのですが、今回も同じです。いかにも「グリーフケア・ソング」といった感じの歌が「こんなもんだろう」とパパッと作られた印象で、正直言って複雑な気分になりました。「ＡＩ菜奈ちゃん」をＬＩＮＥで展開したことなども含めて、「グリーフケアをなめるなよ！」と言いたくなりましたが、まあ、秋元康のような稀代のトレンド仕掛人がグリーフケアに注目したということだけは興味深く思った次第です。

あなたの番です[DVD-BOX]

２０２０年３月８日　一条真也拝