Ⅹマスに亡き人を想う

一条真也です。
17日の早朝から松柏園ホテルの神殿で月次祭が行われました。その後、天道塾で講話をしてから、北九州空港へ。そこからスターフライヤーで東京へ。今年最後の出張です。
さて、「西日本新聞」に「令和こころ通信 北九州から」の第16回目が掲載されました。月に2回、本名の佐久間庸和として、「天下布礼」のためのコラムをお届けしています。今回は「Xマスに亡き人を想う」です。

f:id:shins2m:20191217083442j:plain西日本新聞」2019年12月17日朝刊

 

ローマ教皇フランシスコの来日は記憶に新しいですね。つねに核兵器の廃絶を訴えてきた教皇は、被爆地である長崎や広島を訪れ、東京では東日本大震災の被災者や東京電力福島第1原発事故の避難者らと対話しました。さらには東京ドームで5万人参列の大規模ミサを行い、日本人信者に向けてイエス・キリストの大いなる愛を説きました。

 

そのイエス・キリストの誕生日とされているのがクリスマスです。いま、街中はクリスマス一色。わが家でも、妻が作ったオリジナルのクリスマスツリーが飾られています。前日のクリスマス・イヴに押され気味だとはいえ、クリスマスには世界中の家族や仲間、恋人がこの日を祝い合います。

 

しかし、この日はイエスの本当の誕生日ではないといいます。意外に思われるかもしれませんが、イエスの本当の誕生日がいつかは現在でもわかっていません。ゆえに4世紀の初頭までキリスト教徒は、後にキリスト教会の重要な祝日となるこの日に、集まって礼拝することもなく、キリストの誕生を話題にすることもなく、他の日と何の変わりもなく静かに過ごしていました。

 

これに対して、同じ頃、まだキリスト教を受け入れていなかったローマ帝国では、12月25日は太陽崇拝の特別な祝日とされていたといいます。当時、ローマには太陽を崇拝するミトラス教が普及していました。その主祭日がローマ暦で「冬至」に当たる12月25日に定められていたのです。

 

また、真冬のクリスマスとは死者の祭でした。人類学者のクロード・レヴィ=ストロース中沢新一氏の共著『サンタクロースの秘密』(せりか書房)に詳しいですが、冬至の時期、太陽はもっとも力を弱め、人の世界から遠くに去る。世界はすべてのバランスを失っていきます。そのとき、生者と死者の力関係のバランスの崩壊を利用して、生者の世界には、おびただしい死者の霊が出現するのです。

 

そこで生者は、訪れた死者の霊を心を込めてもてなします。また、贈り物を与えて、彼らが喜んで立ち去るようにしてあげます。そうすると世界には、失われたバランスが回復され、太陽は再び力を取り戻して、春が訪れます。すなわち、凍てついた大地の下にあった生命が、一斉によみがえりを果たす季節が、また到来してくることになるのです。

 

このように日本のお盆にも似て、クリスマスとは死者をもてなす祭だったのです。これがクリスマスの正体です。ヨーロッパで生まれた死者の祭は、アメリカに渡ってハロウィーンとなりました。ご馳走を食べたり、騒ぐのもいいですが、聖夜には、今は亡き人たちを想ってみてはいかがでしょうか。なつかしい故人を思い出しながら、メリー・クリスマス!

 

2019年12月17日 一条真也