グリーフケアと葬儀

一条真也です。
東京に来ています。昨年より、わたしは上智大学グリーフケア研究所客員教授を務めています。上智といえば、日本におけるカトリックの総本山として知られており、わたしは大いなるミッションを与えられました。11月13日の18時45分から講義を行いました。社会人の受講生も多いので、この時間となりました。

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今夜の上智大学にて

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聖イグナチオ教会のステンドグラス

 

2年前までは、特別講義を行った時は受講を兼ねたサンレー社員が随行していたのですが、昨年から自分1人で講義を行っています。この日も、1人で四谷の上智大学を訪れました。そして、自分1人でパソコンを立ち上げ、パワポを操作して、講義を行いました。昨年は初体験でドキドキしましたが、今年はもう手慣れたものです。(笑)

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ローマ法王上智にやって来る!

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上智大学の正門のようす

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上智大学の正門前で

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講義を行った6号館

 

冒頭、わたしは姿勢を正して、「わたしは、冠婚葬祭業を本業としております。この仕事に心から誇りを持っています。これまで、わたしが学んできたこと、行ってきたことのすべて、いわば人生のすべてをかけて、グリーフケアの研究と実践に尽力したいと考えています。どうぞ、よろしくお願いいたします」と受講生のみなさんに対して深く一礼いたしました。みなさん、温かい拍手を下さいました。

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講義を行った6号館の409教室

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409教室の前で

 

講義のテーマは「グリーフケアと葬儀」です。
まずは、「葬儀」についての自分の考えを明らかにしました。わたしは、人類の文明も文化も、その発展の根底には「死者への想い」があったと考えています。約7万年前に、ネアンデルタール人が初めて仲間の遺体に花を捧げたとき、サルからヒトへと進化しました。その後、人類は死者への愛や恐れを表現し、喪失感を癒すべく、宗教を生み出し、芸術作品をつくり、科学を発展させ、さまざまな発明を行いました。

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教室のようす

 

つまり「死」ではなく「葬」こそ、われわれの営為のおおもとなのです。葬儀は人類の存在基盤です。葬儀は、故人の魂を送ることはもちろんですが、残された人々の魂にもエネルギーを与えてくれます。もし葬儀を行われなければ、配偶者や子供、家族の死によって遺族の心には大きな穴が開き、おそらくは自死の連鎖が起きたことでしょう。葬儀という営みをやめれば、人が人でなくなるように思えてなりません。葬儀という「かたち」は人類の滅亡を防ぐ知恵なのではないでしょうか。

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グリーフケアと葬儀」について講義しました 

 

それから、「グリーフケア」について話しました。わたしたちの人生とは喪失の連続であり、それによって多くの悲嘆が生まれます。大震災の被災者の方々は、いくつものものを喪失した、いわば多重喪失者です。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失った。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは特別です。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするためにあるのです。

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真摯に講義をさせていただきました

 

2010年6月、わが社では念願であったグリーフケア・サポートのための自助グループを立ち上げました。愛する人を亡くされた、ご遺族の方々のための会です。月光を慈悲のシンボルととらえ、「月あかりの会」という名前にしました。同会の活動をはじめ、「隣人祭り」や「ともいき倶楽部」「笑いの会」など、これまでわたしが実践してきた実例を紹介しながら、無縁社会=グリーフ・ソサエティを超える方策についての私見を語りました。

f:id:shins2m:20191113180618j:plain1人でパワポを操作しました

 

上智大学グリーフケア研究所といえば、以前は髙木慶子先生が所長を務めておられました。かつて、わたしはブログ『悲しんでいい』で髙木先生の著書を紹介しました。そして現在の所長は、日本を代表する宗教学者である島薗進先生です。島薗先生の所長就任は2013年4月1日のことで、ブログ「島薗進先生からのメール」に書かせていただきました。さらには、ブログ「鎌田東二先生からのメール」に書いたように、2016年4月から「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生が上智大学グリーフケア研究所の特任教授に就任されました。


島薗所長、鎌田副所長と

 

わたしは、島薗・鎌田両先生との御縁で16年・17年と2年連続で特別講義を担当し、昨年の4月から客員教授を拝命しました。今年は3人で『グリーフケアの時代』(弘文堂)という共著も出すことができました。佐久間庸和とは、わたしの本名です。島薗氏は東京大学名誉教授、鎌田氏は京都大学名誉教授でもあり、ともに日本の宗教学の世界のツートップです。このお二方と小生の名前が並ぶなんて、信じられない思いです。本書は98冊目の「一条本」であり、本名では4冊目の著書となります。

f:id:shins2m:20190817095753j:plainグリーフケアの時代』(弘文堂)

 

講義後の質疑応答では何人もの方が興味深い質問をして下さいました。もしかしたら、そこでのわたしの回答のほうが講義の要点を押さえていたかもしれません。終了後も廊下で儀式の役割について質問をされる方などもいて、その熱心さには頭が下がりました。これまで自分なりに冠婚葬祭業界で実践してきたことを踏まえて、さらなる研究を重ね、充実した講義を行いたいと願っています。来週、11月20日は「グリーフケアと読書・映画鑑賞」をテーマにした講義を行います。講義後、外に出ると、四谷の夜空には満月が浮かんでいました。そういえば、今夜は一瞬だけ鎌田先生の姿も拝見しました。ムーンサルトレターの返信、まだかなあ?

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上智大学の上空に浮かぶ満月

 

2019年11月14日 一条真也