「終活」から「修活」へ

一条真也です。
17日、「西日本新聞」に「令和こころ通信 北九州から」の第10回目が掲載されました。月に2回、本名の佐久間庸和として、「天下布礼」のためのコラムをお届けしています。今回のタイトルは「『終活』から『修活』へ」です。

f:id:shins2m:20190917083744j:plain西日本新聞」2019年9月17日朝刊

 

このたび、わたしが監修した『修活読本』(現代書林)が刊行されました。「人生のすばらしい修め方のすすめ」というサブタイトルがついています。いま、人生は100年時代を迎えたといいます。厚生労働省の「平成29年簡易生命表の概況」によると、現在60歳の平均余命は男性23.72歳、女性で28.97歳。「平均余命」とは、平均的にあと何年生きられるかを示したものです。60歳にこの余命年数を足せば寿命がわかるわけで、男性もついに80歳を超え、女性は90歳に迫ろうとしています。

 

「人生100年時代」が、けっしてオーバーな表現でないことがおわかりいただけるでしょう。そんな中で、「終活」という言葉が高齢者にとって重要なテーマになっています。多くの犠牲者を出した東日本大震災の後、老若男女を問わず、「生が永遠ではないこと」そして必ず訪れる「人生の終焉」というものを考える機会が増えたことも大きな原因とされているのです。

 

いま、多くの高齢者の方々が、生前から葬儀やお墓の準備をされています。また、「終活」をテーマにしたセミナーやシンポジウムも花ざかりで、わたしも何度も出演させていただきました。いつの間にか、わたしは「終活」の専門家のように見られるようになり、関連書も数冊書きました。

 

終活とは、「終末活動」を縮めた言葉です。つまり、端的にいうなら「人生の最期をいかにしめくくるか」ということで、人生の後半戦の過ごし方を示した言葉ではありません。しかし、わたしは「いかに残りの人生を豊かに過ごすか」こそ大切であると思っています。そこで、人生の修め方という意味で「終末活動」ではなく「修生活動」、「終活」ではなく「修活」という言葉を提案しています。

 

よく考えれば、「就活」も「婚活」も広い意味での「修活」であるという見方ができます。学生時代の自分を修めることが就活であり、独身時代の自分を修めることが婚活だからです。そして、人生の集大成としての「修生活動」があるわけですね。かつての日本人は、「修業」「修養」「修身」「修学」という言葉に象徴される「修める」ということの意味を知っていました。これは一種の覚悟です。いま、多くの日本人はこの「修める」覚悟を忘れてしまったように思えてなりません。

 

そもそも、老いない人間、死なない人間はいません。死とは、人生を卒業することであり、葬儀とは「人生の卒業式」にほかなりません。老い支度、死に支度をして自らの人生を修める。この覚悟が人生をアートのように美しくするように思います。残りの人生を美しくするヒントがたくさんの『修活読本』を、ぜひご一読、ご活用ください。

 

修活読本 人生のすばらしい修め方のすすめ

修活読本 人生のすばらしい修め方のすすめ

 

 

2019年9月17日 一条真也拝