宮迫&亮の会見に思う

一条真也です。
21日(日)の北九州は早朝から大雨で、「避難準備・高齢者避難開始発令」まで出ましたが、11時くらいには雨も上がりました。わたしは自宅から近くの桜ヶ丘小学校(母校)まで歩いて行き、参議院選挙の投票を行いました。

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「スポーツ報知」2019年7月21日号

 

それにしても、昨日の会見には考えさせられました。特殊詐欺グループとの間に闇営業を行った問題で吉本興を契約解消処分となった「雨上がり決死隊」の宮迫博之と、謹慎中の「ロンドンブーツ1号2号田村亮が都内で開いた謝罪会見です。彼らは、涙ながらに「とんでもない不快な思いをさせて、申し訳ありません。取り返しのつかないことをしてしまった」などと謝罪し、さらには吉本興業隠蔽工作を糾弾しました。会見のインパクトは大で、マスコミの批判の矛先は宮迫から吉本興業へ。潮目が一気に変わりました。

 

約2時間半の謝罪会見でしたが、2人は闇営業問題の経緯や会社側とのやりとり、心あるアドバイスをくれた先輩芸人を裏切ったことの自責の念や、給料が少なく直接営業もせざるを得ない後輩芸人の現状など、さまざまな思いを語りました。何よりもショッキングだったのは、亮が「僕が辞めてもいいから会見させてほしい」と吉本興業に直訴したことで同社の岡本社長から恫喝されたと主張したことです。宮迫によると、岡本社長が、詐欺グループの会合に参加した宮迫や亮を含む5人以外を部屋から出した後で「おまえらテープを回してないやろな」と一喝。「亮ええよ。おまえが辞めて1人で会見してもいいわ。やってもいいけど、全員連帯責任でクビにするから。それでもいいならやれ。俺にはおまえら全員をクビにする力がある」と圧力をかけたというのです。わたしは、この会見を見ながら、「これは吉本にとって蟻の一穴になるかもしれない」と思いました。どんなに大きくて丈夫な建物でも蟻が掘って開けた小さな穴が原因となって崩落することがあります。

 

 

最近、『ハラスメントの境界線』白河桃子著(中公新書ラクレ)という本を読みました。セクハラやパワハラは今や「セ・リーグ」「パ・リーグ」などと呼ばれ、企業経営の重要な注意点になっています。外資系企業をはじめ、日本国内でも、ハラスメントに対する意識改善の波が押し寄せてきており、そんな世の中に企業側も対応せざるを得なくなっています。「ブラック企業か否か」と同じくらい、「ハラスメントへの意識が高いかどうか」は人材獲得のための重要なポイントでもあるわけです。

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「日刊スポーツ」2019年7月21日号

 

ダウンタウンのマネージャーだったという岡本社長は、体育会でかなりの敏腕らしいですが、宮迫の言葉が本当ならば、パワハラに対する意識はかなり低いようですね。吉本興業だけでなく、ジャニーズ事務所でも、パワハラやテレビ局への圧力などで、これから帝国が崩壊することは大いにありえます。なにしろ、あの電通でさえ、パワハラ事件で激震したのですから・・・・・・電通ジャニーズ事務所、そして吉本興業がなければ、現在の日本のテレビ業界は成り立たないと言われていますが、そもそも民放テレビ局というビジネス・モデル自体が時代遅れなのかもしれませんね。

 

それにしても、宮迫&亮の会見を見たお笑い界の大御所たちのレスポンスは見事でした。ビートたけしは、自身がキャスターを務めるTBS系「新・情報7daysニュースキャスター」で、「あんまり言うと、放送禁止だらけになっちゃうんだけどね。猿回しと一緒で、俺ら芸人は猿なんだ。猿が人を噛んで、猿に謝れって言ったってダメ。飼っている人が謝るんだよ。芸人にこういう姿を見せるのはダメ。あの時の涙を流して記者会見をしたヤツの芸を誰が見て笑うんだってなるから、これはやらせたくないんだよ。これはやってくれるなと思う。芸事はそういうことを全部忘れて、明るくくだらないなと見てもらうのが芸なんだから」とコメントしました。たけしは、「あと、もっと考えないといけないのが、闇営業とかをやらないと食えないような状態の事務所の契約は何だということ。若手も出てきて、事務所がこういう仕事をして、いくらくれるとか言ったほうがいいんだって。家族がいて食えないようにしたのは誰なんだと。だったら雇うなよってこと。最低保証ぐらいしろよと」とも言及しました。わたしは「よくぞ言った!」と思いました。

 

明石家さんまも、パーソナリティーを務めるMBSラジオ「ヤングタウン土曜日」に出演し、「(宮迫が)フリーになったので、うちの事務所にほしい」とさんまの個人事務所「オフィス事務所」で雇う仰天構想を明かしました。番組の収録は今回の会見より前に行われたのですが、「会社、芸人サイドそれぞれの立場はあるけど、なにがあってもわれわれは芸人サイドの味方」と話し、「どっかの事務所も狙っているかもしれないけど、うちも声かけてみようと思う。会社(吉本)も手放すか~宮迫を」と、芸人仲間として宮迫をフォローする意向を見せました。

 

そして、ダウンタウン松本人志。会見で宮迫は、自身にとって大きな恩義のある松本について聞かれると、「ウソをついてしまっていました。(電話で)すいませんと伝えました。そうしたら松本さんは、僕の出ている番組に『ノーギャラでも出たるから』と。最低なウソをついてしまったヤツのために『ノーギャラでも出たる』と。すいません」と嗚咽しながら打ち明けました。
会見後に松本はツイッターを更新し、後輩芸人達は不安よな。松本 動きます」と投稿。その後、吉本の本社を訪れ、会長・社長と面談しています。
翌日となる今日、レギュラーを務めるフジテレビ系「ワイドナショー」に同じくレギュラーの東野幸治とともに生出演し、「会見を大阪の仕事の合間に見まして。思っていたよりハードで、なかなか無視できない。収録していたワイドナショーの内容とあまりにも違う。記者会見を想定していなかった」と生放送決定の経緯を説明しました。

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 「日刊スポーツ」2019年7月21日号

 

時代は大きく変わったものです。
ビートたけしは、いくらお笑い界の大御所と言っても、吉本とは無関係の芸人です。部外者が天下の吉本の経営にダメ出しするなど、かつてなら有り得なかったでしょう。さんまは個人事務所を通じて吉本興業に所属していますし、松本は正真正銘の吉本の大黒柱。彼らが一様に吉本批判を展開した姿を見て、わたしは「ああ、大企業に忖度したり、会社に逆らってはいけない時代なんて終わったんだな」と悟りました。そして、あの会見からもわかるように、「社員が会社にリベンジする方法などいくらでもある」とも思いましたね。それにしても、「うちの浜田が本当に・・・。二度と帰ってこないでほしい」、「岡本には陣内が一番、嫌われてますけどね」、「近い将来、岡本社長と宮迫が乳首相撲をやることですべて解決する」などなど、あの悲惨な会見を笑いのネタに変えた松本人志はさすがです。彼とは同年齢ですが、本物の天才ですね!

 

一方で、笑えない人もいました。会見後、ネット生中継やニュースを見た芸能人や著名人がツイッターなどでさまざまに反応しましたが、ZOZOの前澤友作社長はツイッターで「宮迫さんの会見ちょっと見たけど、神妙な顔して謝罪してるのになぜかくすっと笑ってしまった」としつつ、「存在や佇まい自体が面白いキャラ確立してるって凄いことだよな。まだまだ活躍する人だなって思った」と宮迫についてコメント。また「会見場の雰囲気やライティング、お二人のメイク、事務所の暴露話、どれをとってもしっかり作り込まれているように感じた。とても反省はしているんだろうけど、このお二人、いろいろ諦めていないと思う」と分析したのです。これには「泣きながら謝罪している人に向かって、上から目線で何ということを言うのか」と批判のツイートが殺到し、大炎上したそうです。こんな人の心がわからない人が社長を務めていることが悲しいですね。彼は月に行くなどと言っているようですが、彼には月に行く資格はないと思います。たけし、さんま、松本、東野、陣内、フジモン・・・・・・今回の件で株を上げた人は多いですが、反対に株を一番下げたのは前澤サンかもしれませんね。
現在、21日のちょうど13時半です。
また、雨足が強くなってきました。

 

2019年7月21日 一条真也