研究所の活動を振り返って   

 

一条真也です。
11日の午後、東京から北九州に戻りました。
10日、冠婚葬祭総合研究所の客員研究員会議に出席しました。今年の5月をもって研究所が一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団へ業務が移行されることになり、それを受けての会議でした。そこで季刊誌「CORI」の最新号(2019年春号)が配布されました。

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「CORI」2019年春号

 

「CORI」は冠婚葬祭の未来を見つめるオピニオン・マガジンで、わたしもこれまで何度も登場し、わが社の施設や事例も多く紹介されてきました。この2019年春号は研究所としては最後の刊行になります。そこで「研究所の活動を振り返って~新たな第一歩に向けて~」と題して、わたしの文章が特別寄稿として掲載されました。 

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株式会社冠婚葬祭総合研究所は、冠婚葬祭の未来のために設立された初の本格的シンクタンクとして、互助会保証株式会社の全額出資により、2015年6月1日に設立されました。私は、同研究所の客員研究員を拝命いたしました。
設立から2ヵ月あまりを経た同年8月5日に浜松町の結婚式場「エルブライトハウス」で、設立披露パーティーが盛大に開催されました。冠婚葬祭互助会関係者をはじめ、200名を超す多くの方々が参加され、大変な賑わいでした。

 

「ソナエ」「SOGI」「フューネラルビジネス」「仏事」などの編集長さんも勢揃いし、さながら葬儀マスコミのサミットといった観がありました。
特に、この年は戦後70年という大きな節目の年であり、まさに日本中が「死者への想い」を強く抱いている最中に、冠婚葬祭総合研究所は誕生したのです。

 

パーティーでは研究所紹介のスライドが上映され、会社概要、役員および客員研究員の紹介、研究所設立の目的(儀式に対する社会認識の変化、他業種の冠婚葬祭事業への新規参入など)、研究所の取り組み内容(調査研究、情報提供サービス、高度な経営改善支援)に続いて、客員研究員が1名ずつ紹介されました。私は九州国際大学客員教授の肩書で、本名の「佐久間庸和」としてではなく、ペンネームの「一条真也」として紹介されました。

 

冠婚葬祭総合研究所の主な調査テーマとしては、「少子高齢化」「無縁社会」「海外の冠婚葬祭ビジネス」などがありました。互助会保証主宰の「アジア冠婚葬祭業国際交流研究会」を研究所が継承し、韓国、台湾、ベトナムミャンマー、インド、中国への海外視察を行いました。そのすべてに参加したのは、研究所の現社長である柴山文夫氏(ラック社長)と私の2人だけです。海外視察では大きな刺激を受け、大変勉強になりました。帰国後のレポート作成に苦労したのも、なつかしい思い出です。

 

互助会保証および研究所は、さまざまなテーマでの講演会も行ってきましたが、特に私の印象に残っているのは、中国哲学者で儒教研究の第一人者である加地伸行氏、「日経ビジネス」の元記者で『寺院消滅』の著者である鵜飼秀徳氏、そして宗教哲学者で上智大学グリーフケア研究所特任教授の鎌田東二氏の講演です。鎌田氏の講演テーマは「弔いの思想と葬儀の社会的価値と機能~人類は、なぜ葬儀を発明したのか?~」。終了後は会場内でティー・パーティーが開催され、鎌田氏は互助会関係者と名刺交換や質疑応答を行っていました。私は、30年来の交流がある鎌田氏と互助会業界の仲間たちが歓談している姿を見て、不思議な想いとともに、非常に感慨深いものがありました。

 

客員研究員として、私は「冠婚葬祭必要論」の理論武装をはじめ、儀式文化のイノベーションなどを研究してきました。私は、人間は神話と儀式を必要としていると考えます。社会と人生が合理性のみになったら、人間の心は悲鳴を上げてしまうでしょう。
「人間は儀式的動物である」とは哲学者ウィトゲンシュタインの言葉ですが、「人間にとって儀式とは何か」を追求することこそ、冠婚葬祭互助会業界に関わる者の最大のテーマだと思います。私を含め、業界諸氏は冠婚葬祭総合研究所のこれまでの成果を生かしていかなければなりません。

 

2019年5月12日 一条真也