MS責任者会議 

一条真也です。
25日の午後から、サンレー本社でサンレーグループMS責任者会議が開催されました。MSとは「MEMBERS SERVICE(メンバーズ・サービス)」であり、「MORAL SUPPORT(モラル・サポート)」のことです。日々、「人の道」としての冠婚葬祭の重要性をお客様に説明している人たちです。

f:id:shins2m:20190425162950j:plain最初に、表彰式をしました

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社長訓示をしました

 

会議の冒頭、各種の表彰を行いました。表彰式が終わると、わたしは16時半から60分ほどの社長訓話をしました。わたしはまず、佐久間進会長が唱える「良心の掟」を紹介しました。これは十七条憲法を参考にした天道思想に基づくもので、全部で17個あります。内容は、「正直であれ」「人を傷つけるな」「弱者をいじめるな」「人に優しくあれ(思いやりをもて)」「自分に厳しくあれ」「約束は守る」「卑怯な行いをするな」「前向きに生きよ」「他人に迷惑をかけない」「他人と仲良くせよ」「感謝の心を忘れない」「素直な気持ちを保て」「謙虚さを忘れない(謙のみ福を受く)」「明るくあれ(陽気にふるまう)」「努力を怠るな」「慎み深く驕るなかれ」「勤勉を旨とせよ」です。かつて佐久間会長は「国に憲法、人に礼法」との名言を吐きましたが、「良心の掟」はまさに十七条礼法であると述べました。

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「令和」について述べました

 

それから、ブログ「『桜を見る会』に参加しました」で紹介した行事について報告しました。それから、新元号の「令和」に言及し、以下のような話をしました。
官房長官が最初「レイワ」と口にしたとき、「ヘイワ」と聞こえて「平和」が新元号かと一瞬思いました。また、「令和」の「令」が「礼」だったら最高なのにとも思いました。しかしながら、新元号は「令和」です。

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「令和」と「礼和」


「令」の字といえば、じつは「天下布礼」とパソコンやスマホに打ち込んだとき、いつも最初は「天下布令」と出てきます。わたしは「令」の字を「礼」に変換するという作業を繰り返しています。新元号発表後に記者会見を開いた安倍首相によれば、『万葉集』三十二首序文の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す」が出典です。

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「令和」の出典は『万葉集

 

安倍首相は、「令和は、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味です。典拠となった『万葉集』は幅広い階層の歌がおさめられた日本の豊かな国柄をあらわす歌集であり、こうした日本が誇る悠久の歴史と香り高い文化、四季折々の自然の美しさという伝統を後世へ繫いでいく。また、厳しい冬の後に花開かせる梅の花のように、国民ひとりひとりがそれぞれの花を大きく開かせることが出来る時代になってほしい。その想いこめるにふさわしい元号として閣議で決定いたしました」と述べました。

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「和」の出典は『論語

 

また、「令和」を考案したと有力視されている国文学者の中西進氏は、「読売新聞」のインタビューに応じ、「元号の根幹にあるのは文化目標」とした上で、令和の「和」について「『和をもって貴しとせよ』を思い浮かべる」と述べ、十七条憲法の精神が流れているとの考えを語りました。聖徳太子の「和をもって貴しとせよ」のルーツは『論語』で、「有子が日わく、礼の用は和を貴しと為す。先王の道も斯れを美と為す。小大これに由るも行なわれざる所あり。和を知りて和すれども、礼を以ってこれを節せざれば、亦た行なわれず。」〈学而篇〉という言葉があります。「みんなが調和しているのが、いちばん良いことだ。過去の偉い王様も、それを心がけて国を治めていた。しかし、ただ仲が良いだけでは、うまくいくとはかぎらない。ときには、たがいの関係にきちんとけじめをつける必要もある。そのうえでの調和だ」という意味ですね。

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わが社にとっても意義深い元号

 

この「令和」という新元号ですが、史上初の日本古典に基づいた元号と言う意味で、大変画期的かと思います。国際社会の中で「日本らしさ」が求められる昨今、その原点とも言える『万葉集』から引かれたことは、大きな意味と節目になるかと思います。また、引用元の「令月」は何を行うのにも良い月、もしくは2月の異称とのことですが、元号とその由来に「月」と当社が目指す「和」がこめられていることは、わがサンレーにとっても大変意義深い元号なのではないでしょうか。

f:id:shins2m:20190425163836j:plain守っていかなければならないものとは?

 

大きく社会の様子が変化している現在だからこそ守っていかなければならないものがあります。それこそ、元号に代表される古代からの伝統であり、わが社が業とする儀式なのです。今回の改元が行われる曲折の中で、情報システム上の問題から、企業の元号離れが進んだといわれています。国際化などが進展する現代において、基準となる西暦以外の紀年法は必要ないのではないかという意見も聞こえました。

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元号は必要なのか?

 

もちろん、元号不要論の中には、単に西暦と併記することが億劫だからという理由もあるのでしょうが、果たしてそんな理由でこれまでの伝統をなくしてしまって良いのでしょうか? わたしの答えは「否」です。元号であれば、「大化」以降約1400年あまりにわたって受け継がれてきた伝統であり、今回の「令和」に至るまで、平成を含めて約250を経ています。これはルーツとなった中国においても既に喪われてしまったもので、現在は日本固有の文化だということができるでしょう。

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「和」の意味を考える

 

ここに見える希少性は、無論、今後も元号を続けるべき理由のひとつですが、それ以上に、元号にはこれまで日本が歩んできた道のりや、その時代を生きた人々の想いが凝縮されたものであることが何よりも大切なのです。今回の「令和」であれば、「昭和」に続いて「和」の一字が入ったことが大きいです。拙著『和を求めて』(三五館)でも述べたように、「和」は「大和」の和であり、「平和」の和です。日本の「和」の思想こそが世界を救うのではないかと思います。

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儀式は「文化の核」である!

 

それは儀式においても、まったく同様です。冠婚葬祭・年中行事に代表される儀式は、これまで日本人が培ってきた文化の淵源すなわち「文化の核」であり、元号と同じく、携わる人間が想いをこめて紡ぎ上げてきた、かけがえのない存在です。そのように重要な存在を、効率化や文明化の美名を被った「面倒くさい」という意識のもとになくしてしまうことは、決して許されるものではありません。そもそも、現代のわたしたちが「改元」や「儀式」を体験できることは、過去のご先祖様たちがわたしたちへ、この文化を繫いできてくれたからです。それを中継地点に過ぎないわたしたちが勝手に途切れさせてしまうことは「おこがましい」としか表現のしようがありません。

f:id:shins2m:20190425172332j:plain決定版 冠婚葬祭入門』を手にして

 

世の中には本当に意味のない、ムダな作法「虚礼」が存在することも事実です。このようなものは淘汰されてしかるべきですが、不易と流行の間にある線引きをどこに置くかについて、新時代を迎える今、わたしたちは慎重の上にも慎重に考えを巡らせなければなりません。わたしは、『決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)を手に持って、冠婚葬祭の重要性について話しました。平成が終わって新元号となったとき、さまざまな慣習や「しきたり」は一気に消え去ります。しかし、結婚式や葬儀、七五三や成人式などは消えてはならないものです。それらは「こころ」を豊かにする「かたち」だからです。人間の「こころ」は、どこの国でも、いつの時代でも不安定です。だから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。

f:id:shins2m:20190425171430j:plainコップを手に「かたち」と「こころ」を説明

 

そこで大切なことは先に「かたち」があって、そこに後から「こころ」が入るということ。逆ではダメです。「かたち」があるから、そこに「こころ」が収まるのです。人間の「こころ」が不安に揺れ動く時とはいつかを考えてみると、子供が生まれたとき、子どもが成長するとき、子どもが大人になるとき、結婚するとき、老いてゆくとき、そして死ぬとき、愛する人を亡くすときなどがあります。その不安を安定させるために、初宮祝、七五三、成人式、長寿祝い、葬儀といった一連の人生儀礼があるのです。

f:id:shins2m:20190425172541j:plain冠婚葬祭互助会は不滅です!

 

無縁社会」が叫ばれ、生涯非婚に孤独死や無縁死などが問題となる中、冠婚葬祭互助会の持つ社会的使命はますます大きくなります。いまや全国で2000万人を超える互助会員のほとんどは高齢者であり、やはり孤独死をなくすことが互助会の大きなテーマとなっているのです。わが社が行っている「隣人祭り」をはじめとした隣人交流イベント、グリーフケア・サポート、さらには見回りや買い物支援、そして婚活サポートなども互助会に求められてきます。平成が終わって新元号となり、あらゆるものが変化しようとも、「相互扶助」をコンセプトとした冠婚葬祭互助会は不滅です!

f:id:shins2m:20190425172626j:plain儀式の花開く時代へ!

 

ともあれ、ついに新たな元号「令和」が決定し、あと数日で改元となります。これから今上陛下の御譲位また皇太子殿下の新天皇への御即位にあたり、日本文化の核ともいえる践祚と即位に関する儀式群が幕を開けます。儀式に携わる者として、いま、この時に立ち会えた幸運に感謝し、その推移を見守らせていただくとともに、これから迎える新たな御代が誰にとっても平穏で、そして儀式の花開く時代となることを心より願う次第です。

f:id:shins2m:20190425172633j:plain最後は、もちろん一同礼!

 

拙著『礼を求めて』(三五館)にも書きましたが、儀式は「礼」を形にしたものです。「礼」をハードに表現したものがセレモニーであり、ソフトに表現したものがホスピタリティではないかと思います。至るところで冠婚葬祭が大切にされ、「おめでとう」と「ありがとう」の声が行き交うハートフル・ソサエティを実現したいものです。「令和」の出典である『万葉集』に収められている和歌で最も多いのは相聞歌と挽歌、つまり恋愛と鎮魂がテーマです。まさに冠婚葬祭そのものではありませんか。最後に、わたしは「令和の時代に、礼の輪を!」と訴えました。

f:id:shins2m:20190425175911j:plain懇親会でカンパ~イ!

 

社長訓話が終わった後は、松柏園の「長浜」で懇親会が開かれました。わたしは、「『儀式』と『相互扶助』は人類普遍の価値ある営みです。みなさんは、この世で最も価値のあるものを守っているのだという誇りを持っていただきたい」と述べました。それから、松田取締役の音頭で乾杯しました。

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懇親会のようす

 

各地から参集したみなさんは、お酒や料理を楽しみながら会話の花を咲かせました。最後は、北陸の中山所長による中締めの挨拶でした。中山所長は、 サンレー・オリジナルの「末広がりの五本締め」で締めました。これをやると、みんなの心が本当にひとつになる気がします。その後も、松柏園のラウンジで二次会を開催。わが社のコンパは和気あいあいと続いたのであります。わたしは明日から奈良に出張します。東大寺で開かれる「花まつり」に参加するのです。
「令和」への改元まで、あと6日です。

 

2019年4月25日 一条真也