『本当は面白い世界の神々』 

一条真也です。
24日の夜、高松から岡山を経由して小倉に戻りました。
33冊目の「一条真也による一条本」は、『本当は面白い世界の神々』(双葉社)です。2009年7月19日に刊行された監修書で、造事務所の編著です。コンビニなどに置かれるいわゆるワンコイン本で、定価は500円でした。しかし、値段を遥かに超えて内容は充実しています。


本当は面白い世界の神々』(2009年7月19日刊行)

 

表紙にはゼウス、アフロディーテオーディン、カーリーといった東西の神々が描かれ、「『神々』の破天荒すぎるエピソード51話を収録!」「神さまは人間よりも人間くさい!!」と書かれています。

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
[はじめに]人間以上に人間くさい「世界の神々」
一条真也
[独断と偏見で選ぶ]神々のムチャ話ベスト10
【Episode 1】神々の暴走
親殺し、子殺しは日常茶飯事!?暴力がうずまく神話の世界
●親をだまし討ちして最高神となった ゼウス
●妻子をあいついで殺害した ヘラクレス
●昼寝を邪魔する者を恐怖に陥れる パーン
●父を倒すも息子に倒された クロノス
●自分を自分の生贄にささげた オーディン
●キレると手がつけられない ク・ホリン
●悪魔をも出しぬき大暴れした インドラ
●亭主を踏んづけて狂乱演舞 カーリー
●姉を引きこもりに追いつめた スサノオノミコト
●荒っぽい少年時代をすごした ヤマトタケルノミコト
●海神の力で兄を水責めにした 山幸彦
●友の葬儀場をぶち壊した アジスキタカヒコネ
●暴風で父の船を沈ませた ホアカリノミコト
●炎に包まれながら子を産んだ コノハナノサクヤヒメ
まだまだある!神々の暴走 
この世の物はオレの物!?なんでも破壊する神々
【Episode 2】神々の愛欲
人間同様に恋に落ち、嫉妬し、浮気までしてしまう神の恋愛模様
●ダメ夫の浮気にキレまくる ヘラ
●美少年を追いかけまわした アフロディーテ
●怪物メデュウサを愛人とした ポセイドン
●不倫現場を押さえられた アレス
●美少年にふられて逆恨みした ゼピュロス
●男をイノシシに変えて乗りこなす フレイヤ
●恋に迷って魔法の剣を手放した フレイ
●快楽の園をつくった マナナン・マクリル
●娘を追いかけまわして妻とした ブラフマー
●ほれた相手に一直線! パールバティ
●母性本能をくすぐる少年だった オオクニヌシ
●愛人が総勢120人以上もいた イシュタル
●つねに男性器が勃起している ミン
まだまだある!神々の愛欲 
ピー音なりっぱなし?百花繚乱、神々の恋愛事情
【Episode 3】神々の制裁
おごる人類、久しからず 天変地異で民を罰する神々
●裸を見た男を八つ裂きにした アルテミス
●狂乱のカルト集団を率いた ディオニュソス
●船乗りたちを破滅させた セイレン
●戦士に陣痛の苦しみを味わわせた ヴァハ
●戦士に破滅をもたらす モリガン
●破壊のあと再生をもたらす シヴァ
●国生みの母から殺人鬼に変貌した イザナミ
●引きこもって世界を闇にした アマテラスオオミカミ
●人間に「寿命」の概念を誕生させた ニニギノミコト
●崇りまくって神となった 菅原道真
●人間にバカにされ、怒りを爆発させた ラー
●人類大虐殺をくり広げた セクメト
●騒音に怒り大災害を連発した エンリル
まだまだある!神々の制裁 
気分しだいで一刀両断ケタハズレな天罰の数々
【Episode 4】神々の悲運
神という特別な存在でさえも、「運命の急降下」からは逃れられない
●冥界で根性が腐ってしまった ハデス
●妻にさんざん浮気された ヘパイストス
●肝臓をワシに喰われつづけた プロメテウス
●毒液の顔面シャワーでもだえた ロキ
●女装させられて武器をとり返した トール
●悪党の嫉妬で命を落とした バルドル
●妻と性格が合わずスピード離婚した ニョルズ
●両親の過失によって「象頭」となった ガネーシャ
●恩知らずの人間に虐待された トヨウケノオオミカミ
●弟に殺されバラバラにされた オシリス
●子孫に注意して殺された ティアマト
まだまだある!神々の悲運 
運命のイタズラ!?とめどなく流れる血の涙


ゼウス

 

「神」と聞くと、あなたは何を連想するでしょうか。
宇宙の最高権力者にして、われわれ人間とはかけ離れた絶対的な存在、いわゆる「雲の上の存在」をイメージする人が多いのではないでしょうか。
しかし、そういった崇高な神の姿は、ユダヤ教キリスト教イスラム教といった「一神教」における唯一絶対神のイメージに近いです。一神教には宗教的寛容性がないから対立し、どうしても戦争になってしまいます。


スサノヲノミコト

 

これに対して、本書に登場する神々は、世界各地の神話で活躍する「多神教」の神々です。日本の神道をはじめとする多神教の良さは、他の宗教を認め、共存していけるところ。自分だけを絶対視せず、根本的に開かれていて寛容です。よって、宗教戦争など考えられません。 


ポセイドン

 

そして、『聖書』や『コーラン』に出てくる神は厳格そのものですが、『ギリシャ神話』や『古事記』に登場する神々は、酒に酔っ払いもすれば、ブチキレて大暴れもするし、好色で浮気もする・・・・・・こういった度外れて大らかな神々のエピソードを知ると、なんだかホッとします。


イシュタル

 

多神教の神々にふれると人間の魂は奥底から癒される。そう主張したのは、アメリカの心理学者ジェームズ・ヒルマンです。ユング派「元型心理学」の創始者として知られるヒルマンによれば、それぞれの人間の魂には必要とする神々がいるそうです。オリュンポス12神なども、人間たちが求める役割を果たしているといいます。もともと人間の魂は一神教には馴染まず、多神教を求めるものなのかもしれません。


アレス 

 

本書を読めば、人間よりも人間くさい、とにかく何事もやりすぎで過剰な神々の物語を楽むことができます。その中に、あなたが求めている神を見つけていただきたいと思います。そうすれば、あなたの欲求不満は解消され、魂はきっと癒されるはずです。最後に、本書を読んだことによって、「神話の面白さを知りました」という読者の方に何人もお会いしました。そのたびに、とても嬉しかったです。
「令和」への改元まで、あと6日です。


 

2019年4月25日 一条真也