「令和」の時代に礼の輪を!

一条真也です。「天下布礼」に休みなし!
全互連の理事会に出席するため16日に東京に飛び、17日に全互協の正副会長会議および委員長会議を終えてから北九州に戻りました。18日は、早朝から松柏園ホテルの神殿で月次祭が行われました。

f:id:shins2m:20190418080254j:plain月次祭のようす

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拝礼する佐久間会長

f:id:shins2m:20190418081608j:plainわたしも拝礼しました

f:id:shins2m:20190418082042j:plain神事の最後は一同礼!

 

皇産霊神社の瀬津神職が神事を執り行って下さり、祭主であるサンレーグループ佐久間進会長に続いて、わたしが社長として玉串奉奠を行いました。わたしは、社業の発展と社員のみなさんの健康を祈願しました。

f:id:shins2m:20190418083628j:plain天道塾のようす

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冒頭に話す佐久間会長

 

神事の後は、恒例の「天道塾」を開催しました。
まずは佐久間会長が登壇し、最初に福岡県知事選挙の結果と今後の街づくりについて話しました。それから、最近の話題の人物として、大相撲新大関貴景勝、引退を発表したプロ野球イチロー選手、柔道家山下泰裕氏などについて話しました。

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訓話を行う佐久間会長

 

それから佐久間会長は「令和」という新元号を取り上げ、「和」という字から聖徳太子の「和をもって貴しとなす」を思い浮かべるとして、十七条憲法を参考にした天道思想「良心の掟」なるものを17個披露しました。内容は、「正直であれ」「人を傷つけるな」「弱者をいじめるな」「人に優しくあれ(思いやりをもて)」「自分に厳しくあれ」「約束は守る」「卑怯な行いをするな」「前向きに生きよ」「他人に迷惑をかけない」「他人と仲良くせよ」「感謝の心を忘れない」「素直な気持ちを保て」「謙虚さを忘れない(謙のみ福を受く)」「明るくあれ(陽気にふるまう)」「努力を怠るな」「慎み深く驕るなかれ」「勤勉を旨とせよ」です。かつて佐久間会長は「国に憲法、人に礼法」との名言を吐きましたが、「良心の掟」はまさに十七条礼法であると思いました。

f:id:shins2m:20190418090819j:plainわたしが登壇しました

 

それから、社長のわたしが登壇して講話をしました。
冒頭、ブログ「『桜を見る会』に参加しました」で紹介した行事について報告しました。それから、「新元号は『令和』に決まりました」と述べ、以下のような話をしました。
官房長官が最初「レイワ」と口にしたとき、「ヘイワ」と聞こえて「平和」が新元号かと一瞬思いました。また、「令和」の「令」が「礼」だったら最高なのにとも思いました。しかしながら、新元号は「令和」です。
「令」の字といえば、じつは「天下布礼」とパソコンやスマホに打ち込んだとき、いつも最初は「天下布令」と出てきます。わたしは「令」の字を「礼」に変換するという作業を繰り返しています。新元号発表後に記者会見を開いた安倍首相によれば、『万葉集』三十二首序文の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す」が出典です。

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「令和」について話しました

 

安倍首相は、「令和は、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味です。典拠となった『万葉集』は幅広い階層の歌がおさめられた日本の豊かな国柄をあらわす歌集であり、こうした日本が誇る悠久の歴史と香り高い文化、四季折々の自然の美しさという伝統を後世へ繫いでいく。また、厳しい冬の後に花開かせる梅の花のように、国民ひとりひとりがそれぞれの花を大きく開かせることが出来る時代になってほしい。その想いこめるにふさわしい元号として閣議で決定いたしました」と述べました。

f:id:shins2m:20190418091755j:plain「和」の出典は『論語

論語 (岩波文庫 青202-1)

論語 (岩波文庫 青202-1)

 

 

また、「令和」を考案したと有力視されている国文学者の中西進氏は、「読売新聞」のインタビューに応じ、「元号の根幹にあるのは文化目標」とした上で、令和の「和」について「『和をもって貴しとせよ』を思い浮かべる」と述べ、十七条憲法の精神が流れているとの考えを語りました。聖徳太子の「和をもって貴しとせよ」のルーツは『論語』で、「有子が日わく、礼の用は和を貴しと為す。先王の道も斯れを美と為す。小大これに由るも行なわれざる所あり。和を知りて和すれども、礼を以ってこれを節せざれば、亦た行なわれず。」〈学而篇〉という言葉があります。「みんなが調和しているのが、いちばん良いことだ。過去の偉い王様も、それを心がけて国を治めていた。しかし、ただ仲が良いだけでは、うまくいくとはかぎらない。ときには、たがいの関係にきちんとけじめをつける必要もある。そのうえでの調和だ」という意味ですね。

f:id:shins2m:20190418092047j:plain「令和」の出典は『万葉集

原文 万葉集(上) (岩波文庫)

原文 万葉集(上) (岩波文庫)

 

 

この「令和」という新元号ですが、史上初の日本古典に基づいた元号と言う意味で、大変画期的かと思います。国際社会の中で「日本らしさ」が求められる昨今、その原点とも言える『万葉集』から引かれたことは、大きな意味と節目になるかと思います。また、引用元の「令月」は何を行うのにも良い月、もしくは2月の異称とのことですが、元号とその由来に「月」と当社が目指す「和」がこめられていることは、わがサンレーにとっても大変意義深い元号なのではないでしょうか。

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梅の花は東アジアの平和のシンボル

 

それから、「令和」が梅の花を詠んだ和歌に由来することに感銘を受けました。現在の日本は桜の開花で賑わっていますが、この時期に梅の花に由来する元号が発表されたことは興味深いです。梅の花を見ると、わたしはいつも『論語』を連想します。わたしは、日本・中国・韓国をはじめとした東アジア諸国の人々の心には孔子の「礼」の精神が流れていると信じています。ところが、いま、日中韓の国際関係は良くないです。というか、最悪です。三国の国民は究極の平和思想としての「礼」を思い起こす必要があります。それには、お互いの違いだけでなく、共通点にも注目する必要があります。そこで重要な役割を果たすのが梅の花です。日中韓の人々はいずれも梅の花を愛します。日本では桜、韓国ではむくげ、中国では牡丹が国花または最も人気のある花ですが、日中韓で共通して尊ばれる花こそ梅なのです。

f:id:shins2m:20190418092431j:plain梅は気高い人間の象徴


この意味は大きいと思います。それぞれの国花というナンバー1に注目するだけでなく、梅というナンバー2に着目してみてはどうでしょうか。そこから東アジアの平和の糸口が見えないものかと思います。梅は寒い冬の日にいち早く香りの高い清楚な花を咲かせます。哲学者の梅原猛氏によれば、梅とは、まさに気高い人間の象徴であるといいます。日本人も中国人も韓国人も、いたずらにいがみ合わず、偏見を持たず、梅のように気高い人間を目指すべきではないでしょうか。各地の梅の名所は、海外からの観光客の姿が目立ちます。わたしは、戦争根絶のためには、ヒューマニズムに訴えるだけでなく、人類社会に「戦争をすれば損をする」というシステムを浸透させるべきであると考えます。梅原氏は今年の1月に逝去されましたが、「令和」という元号そのものが梅原氏の遺言のような気がしてなりません。

f:id:shins2m:20190418091115j:plain守っていかなければならないものとは

 

大きく社会の様子が変化している現在だからこそ守っていかなければならないものがあります。それこそ、元号に代表される古代からの伝統であり、わが社が業とする儀式なのです。今回の改元が行われる曲折の中で、情報システム上の問題から、企業の元号離れが進んだといわれています。国際化などが進展する現代において、基準となる西暦以外の紀年法は必要ないのではないかという意見も聞こえました。

f:id:shins2m:20190418092732j:plain元号は日本固有の文化である

 

もちろん、元号不要論の中には、単に西暦と併記することが億劫だからという理由もあるのでしょうが、果たしてそんな理由でこれまでの伝統をなくしてしまって良いのでしょうか? わたしの答えは「否」です。元号であれば、「大化」以降約1400年あまりにわたって受け継がれてきた伝統であり、今回の「令和」に至るまで、平成を含めて約250を経ています。これはルーツとなった中国においても既に喪われてしまったもので、現在は日本固有の文化だということができるでしょう。


和を求めて』(三五館)

 

ここに見える希少性は、無論、今後も元号を続けるべき理由のひとつですが、それ以上に、元号にはこれまで日本が歩んできた道のりや、その時代を生きた人々の想いが凝縮されたものであることが何よりも大切なのです。今回の「令和」であれば、「昭和」に続いて「和」の一字が入ったことが大きいです。拙著『和を求めて』(三五館)でも述べたように、「和」は「大和」の和であり、「平和」の和です。日本の「和」の思想こそが世界を救うのではないかと思います。

儀式論』(弘文堂)

 

それは儀式においても同様です。拙著『儀式論』(弘文堂)、『決定版 冠婚葬祭入門』『決定版 年中行事入門』(ともにPHP研究所)にも書きましたが、冠婚葬祭・年中行事に代表される儀式は、これまで日本人が培ってきた文化の淵源すなわち「文化の核」であり、元号と同じく、携わる人間が想いをこめて紡ぎ上げてきた、かけがえのない存在です。そのように重要な存在を、効率化や文明化の美名を被った「面倒くさい」という意識のもとになくしてしまうことは、決して許されるものではありません。

f:id:shins2m:20190418124647p:plain決定版 冠婚葬祭入門』と『決定版 年中行事入門』 

 

そもそも、現代のわたしたちが「改元」や「儀式」を体験できることは、過去のご先祖様たちがわたしたちへ、この文化を繫いできてくれたからです。それを中継地点に過ぎないわたしたちが勝手に途切れさせてしまうことは「おこがましい」としか表現のしようがありません。世の中には本当に意味のない、ムダな作法「虚礼」が存在することも事実です。このようなものは淘汰されてしかるべきですが、不易と流行の間にある線引きをどこに置くかについて、新時代を迎える今、わたしたちは慎重の上にも慎重に考えを巡らせなければなりません。

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儀式の時代が花開く!

 

ともあれ、ついに新たな元号「令和」が決定しました。これから今上陛下の御譲位また皇太子殿下の新天皇への御即位にあたり、日本文化の核ともいえる践祚と即位に関する儀式群が幕を開けます。儀式に携わる者として、いま、この時に立ち会えた幸運に感謝し、その推移を見守らせていただくとともに、これから迎える新たな御代が誰にとっても平穏で、そして儀式の華ひらく時代となることを心より願う次第です。

f:id:shins2m:20190419084525j:plain礼を求めて』(三五館)

 

拙著『礼を求めて』(三五館)にも書きましたが、儀式は「礼」を形にしたものです。「礼」をハードに表現したものがセレモニーであり、ソフトに表現したものがホスピタリティではないかと思います。そして、「礼」は究極の平和思想です。先程述べた日中韓の三国には孔子の説いた「礼」の思想が生きているはずですので、ぜひ三国間で友好関係を築いてゆきたいものです。また、日本人の間においても「礼」を大切にするべきです。至るところで冠婚葬祭が大切にされ、「おめでとう」と「ありがとう」の声が行き交うハートフル・ソサエティを実現したいものです。「令和」の出典である『万葉集』に収められている和歌で最も多いのは相聞歌と挽歌、つまり恋愛と鎮魂がテーマです。まさに冠婚葬祭そのものではありませんか!

f:id:shins2m:20190418093450j:plain「令和」とは「礼輪」である!

 

最後に「令和の時代に、礼の輪を!」と訴えてから、わたしは降壇しました。すると佐久間会長が登壇して、わたしの「礼輪」にインスピレーションを得たのか、今年の見事な初日の出に言及し、「まんまるく まんまるまるく まんまるく まんまるまるい 令和の日の出」という歌を即興で詠みました。うーん、これぞ老人力ですね。お見事!
「令和」への改元まで、あと13日です。

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改元まで、あと13日!

 

2019年4月18日 一条真也