教会を建てている(ドラッカー)


一条真也です。
今回の名言は、経営学ピーター・ドラッカーの著書に出てくる言葉。
あるとき、ドラッカーは「3人の石切り工」の話をしました。ある人が、教会建設のための石を切っている3人の男に「何をしているのですか」と聞きました。1人目の男は「暮らしを立てている」と答え、2人目の男は「石切りの仕事をしている」と答え、3人目の男は「教会を建てている」と答えました。


仕事の哲学 (ドラッカー名言集)

仕事の哲学 (ドラッカー名言集)

第1の男は、仕事で何を得ようとしているかを知っており、事実それを得ています。1日の報酬に対し、1日の仕事をします。でも、彼は管理職ではありませんし、将来もなれません。
問題は第2の男です。熟練した専門能力は不可欠です。たしかに組織は、最高の技術を要求しなければ2流の存在になってしまいます。しかしスペシャリストは、単に石を磨き脚注を集めているにすぎなくとも、重大なことをしていると錯覚しがちです。専門能力の重要性は強調しなければなりませんが、それは全体のニーズとの関連においてでなければなりません。成長し、自己啓発する者とは、「教会を建てている」と言える人間なのです。
会社に必要な人物は、もちろん第3の男です。
彼こそ、将来の幹部候補であると言えるでしょう。



そして、若いビジネス・ピープルにぜひ言っておきたいことがあります。
それは、あなた方は歯車だということです。それを自覚する必要があります。こう聞くと、意外に思ったり、失望する人がもしかしたらいるかもしれません。一般に「歯車」という言葉は良いイメージを待たれないようです。よく鉄道ガード下の居酒屋などで、酔ったサラリーマンがチューハイか何かを片手に後輩相手にクダを巻いている場面を目にします。
「どうせ俺たちなんか、会社の歯車だからよー!馬鹿らしくって、やってらんねーよなー!」とか何とか言いながら。テレビドラマなどでもよく目にするまことにありふれた光景ですが、こんなとき、いつも腹が立ってきます。



会社員が会社の歯車なのは当たり前の話ではありませんか!
部下だって上司だって、いや社長だって会社の歯車です。仕事であれスポーツであれ、組織を構成する個々人はすべて歯車なのです。
プロ野球やサッカーの名選手だって、みんなチームの歯車です。
でも、彼らは単なる伝達歯車ではなく、チームを動かす駆動歯車です。
ですから、若い社員のみなさんも、ぜひ会社を動かすような歯車になってほしいのです。会社人は、組織の歯車であることを強く自覚し、歯車に徹することによって、会社のなかで光り輝くのですから・・・・・・。



そして、会社は社会の歯車です。みなさんが会社を動かせば、今度は社会が動きます。ドラッカーは「会社は社会のもの」であると主張しましたが、仕事をしていくうえで社会の役に立つことが何よりも大切です。わたしは、単なるボランティア精神ではなく、社会や人々の役に立つことをすればビジネスでも必ず成功できると確信しています。いくらユニークな商品を開発しても、それを使って喜ぶ人がいなければ社会的な価値は生まれません。たとえ日常的にありふれたものでも、それを必要とする人がいれば、そこに大きな需要が生まれます。ですから、多くの人々が待ち望んでいることを目標にする方が成功しやすいのは当然の話です。



例えば、宅急便が登場する以前は、今日出した荷物が明日届くとは誰も考えませんでした。それが一日で届くようになると、生活の利便性は飛躍的に高まり、ビジネスのスピードも一気に上がりました。コンビニエンスストアも、私たちのライフスタイルを大きく変えました。夜遅くまで簡単に生活必需品が手に入ることによって、多くの人たちが助かっています。これらの事業は今や社会的なインフラになっています。その潜在的な需要の大きさに驚かされますが、逆に言うと、それだけ人の役に立つビジネスであったから成功したのでしょう。「何をしているのですか」と質問されて「教会を建てている」と答えられる人だけが会社を動かし、社会を動かすのです。なお、今回のドラッカーの名言は『最短で一流のビジネスマンになる!ドラッカー思考』(フォレスト出版)にも登場します。


2018年6月15日 一条真也