地震が来たら仏壇の前に行け  

一条真也です。
12日は小倉にも雪がかなり降り、積もりました。
13日、「サンデー毎日」2月25日号が発売されました。
わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。第117回のタイトルは、「地震が来たら仏壇の前に行け」です。


サンデー毎日」2018年2月25号



わたしは北陸の地でも冠婚葬祭事業を営んでいる関係で、ひんぱんに金沢を中心とする北陸を訪れます。本願寺第八世の蓮如が加賀との境に位置する越前・吉崎に御坊を構えた中世、北陸は浄土真宗の教えに染め上げられていきました。そんな信心深い土壌ゆえ、現代でも北陸の人々の心に真宗の根が張っていて、北陸は「真宗王国」と呼ばれています。



その厚い信仰心と情熱は仏壇づくりにも向かい、数々の優れた技と美を生み出しました。北陸の人々は仏壇をこよなく大切にします。いまでも富山県の普通の農家などにも、ちょっと不釣り合いなほど大きな仏壇が飾られていて驚くことがあります。



仏壇の産地としては石川県の金沢市白山市美川、七尾市が有名ですが、いずれも金箔の美しさが特徴です。なにしろ日本の金箔の99%が金沢産ですから、見事なものであります。中でも、七尾仏壇は頑丈なことで知られています。七尾は能登半島の中央部に位置します。2007年3月に石川県輪島沖で発生した能登半島地震でも、華麗で大きな七尾仏壇はびくともしなかったといいます。



それどころか、七尾では「地震が来たら仏壇の前に行け」という言葉をよく耳にするといいます。わたしは、それを七尾に住むわが社の社員から聞いて、とても感銘を受けました。もちろん、七尾仏壇が頑丈であることを示すエピソードでしょうが、それだけとは思えませんでした。すなわち、「地震が来たら仏壇の前に行け」とは、何かの危機が発生した場合、人々の身体だけではなく精神も仏壇が守ってくれるという意味に思えたのです。



かの前田利家も先祖を大切にし、熱心に仏壇に向かって拝んだといいます。金沢は戦争の傷跡がまったくない都市です。利家が金沢城に入城して以来、なんと450年近いあいだ一度も戦災に遭ったことがない、日本でもきわめて珍しい街なのです。徳川幕府に次ぐ百万石の巨大勢力がまったくの無傷というのは奇跡に近いですが、これも信心のおかげでしょうか。


サンデー毎日」2018年2月25号の表紙



2018年2月13日 一条真也