「フューネラルビジネス」取材  

一条真也です。メリークリスマス!
クリスマスの本日、『唯葬論』の文庫版が発売されました。
また、この日、サンレー本社で業界誌のインタビュー取材を受けました。総合ユニコムが発行している「月刊フューネラルビジネス」の取材です。同誌はフューネラル業界のオピニオン・マガジンとして知られています。互助会経営者には、基本的に同業者が読む業界誌の取材を受けたがらないという傾向がありますが、わが社は「天下布礼」の旗を掲げていますので、少しでも業界発展のためになるならとインタビューをお受けしました。


唯葬論』文庫版が発売されました



取材のテーマは「葬祭サービス企業からコミュニティサポート産業へのパラダイムシフト」でした。わたしは以下のような話をしました。
もともと寺院や自宅・集会所で行われていた葬儀は、(小倉紫雲閣 1978年竣工)をはじめとするセレモニーホールの誕生によって、大きく変化していきました。日本人の葬儀は主にセレモニーホールで行われるようになったのです。葬祭サービス企業は葬儀を行う場所の提供をはじめ、それまで寺院やコミュニティで行われていた葬儀を仕切ったり、料理を提供したりといった役割を代わりに行うようになっていきました。地域のコミュニティは団塊世代の都市部への一極集中や少子化・高齢化により徐々に衰え、今まで行われてきた役割を果たすことが困難になっていったのです。


インタビュー取材のようす



まず、社会の変化を考えてみましょう。今後、少子高齢化はさらに進んでいくと予測されています。厚労省「人口動態月報年計」では、2016年の年間死亡者数は130万7765人で戦後最多を更新となっています。また、2015年発表の国勢調査では人口減少が実際に確認され、日本の総人口は約1億2709万5000人と発表されました。5年前の前回調査に比べると約96万3000人が減少したことになり、これは1920年の初回調査から約100年にして初めての減少となります。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が発表した「日本の将来推計人口」(2017年)によれば、2015年には1億2700万人だった日本の総人口が、40年後には9000万人を下回り、100年も経たないうちに5000万人ほどに減少することが予測されています。また、推計では2030年に死亡者数は160万人を突破し、2039、2040両年の167万9000人でピークを迎えます。逆に2016年には年間出生数が初めて100万人の大台を割り込み、97万6979人にとどまりました。


さまざまな考えを述べました



北九州市の高齢者比率は30パーセントに迫る勢いです。全国に20ある政令指定都市の中でも最も高い数字となっており、日本一の超高齢都市といえます。「高齢化社会」「多死社会」を迎えるにあたってこれまでの「葬儀を行う施設」から「葬儀も出来る施設」への転換、つまり「セレモニーホールからコミュニティセンターへ」の転換が求められていると考えられます。つまり、「葬儀をする施設」から「葬儀もする施設」への転換です。
理由としてシニア世代は地域の人間関係を豊かにして暮らしたいというニーズがあるということがあげられます。サンレー としては、今後はセレモニーホールをシニア世代が日頃から集える交流施設として活用することにより高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指します。また、独居老人の増加やコミュニティの崩壊による孤独死の問題などにコミュニティセンター化を行うことが問題の解決の糸口となるのではないか考えます。


サンレーグランドホテル



サンレー では2004年に高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」を北九州市八幡西区に作りました。セレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題となりました。
各地の紫雲閣では、無縁社会を乗り越える地域交流イベントの推進、さらには各地の「まつり」への支援することによりコミュニティを活性化し、また紫雲閣をシニア世代が日頃から集える交流施設として活用しています。年間約700回開催されている「隣人祭り」をはじめとし「観月会」「盆踊り」といった多種多様な「隣人交流イベント」を開催し、そのノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築していっています。さらに、紫雲閣を映画、演劇、音楽コンサートなども上演できる地域の文化の殿堂化としていくよう活動している。


さまざまな質問を受けました



北九州市には多くの高齢者が住んでおられ、日々の買い物やゴミ出しにも苦労をしています。こういった問題を解決する「買い物支援」「ゴミ出し支援」にも積極的に取り組み、各地の紫雲閣を「子ども110番の家」「赤ちゃんの駅」に登録、常備薬やAEDを設置しています。「何か困ったことがあれば紫雲閣へ」を合言葉に、地域になくてはならないコミュニティセンターとしての存在を目指したいと思っています。


小倉紫雲閣

わが社の志を大いに語りました



もともと地域のコミュニティセンターは寺院が担っていた役割でした。かつての寺院は、葬儀が行われる舞台でありながらも、近隣住民のコミュニティセンター、カルチャーセンターでもあった。仏教伝来以来1500年ものあいだ、日本の寺院は生活文化における「学び」「癒」「楽しみ」という3つの機能を持っていました。「セレモニーホールからコミュニティセンターへ」というスローガンは、ある意味で寺院の本来の機能を蘇えらせる「お寺ルネッサンス」となるように思います。ぜひ、紫雲閣は寺院がかつて持っていた役割をはたすことができるよう、また地域になくてはならない存在となれるようコミュニティセンターとしての役割を担っていきたいです。紫雲閣が地域社会の中の「なくてはならない存在」となれば、自然と互助会の会員獲得にも繋がっていくことでしょう。


くさみ三礼庵



また、2017年10月19日にオープンした「くさみ三礼庵」では日頃から近隣の方が茶道や華道を学ぶことができるカルチャー施設として開放しています。普段は茶道教室や華道教室などを開き、葬儀のときにはスタッフが着物姿で抹茶をたて、生け花を飾ります。「くさみ三礼庵」は、これまでにない新業態の「コミュニティハウス」としての施設となっています。そこでは茶道や華道などの日本古来の伝統文化を葬儀に反映させ供養の形としていき、そのために茶道の精神を体現できる「お茶のある人」になるため、多くの社員が稽古に励んでいます。


まことに熱のこもった取材でした



くさみ三礼庵」の「三礼」とは小笠原流礼法の「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心を表しています。礼法とは「人間関係の潤滑油」にして「最強の護身術」です。また「もてなし」の気持ちを大切にし、取り組んでいます。「もてなし」とは、わざわざ足を運んでいただいたお客様に、できるだけ満足して帰っていただくための迎える側の心構えです。また、「しつらい」とは。季節や趣向に合わせて、部屋を調度や花などの飾り付けで整えることで、「室礼」とも書きます。そして、「ふるまい」とは、TPOや趣向にふさわしい身のこなしをすることです。
みんなで少しでも楽しい生き方を考え、老いるほど幸福になるという「老福社会」をつくりたいと考えています。わが社がたくらむ新時代のコミュ二ティセンターは、「世界一の超高齢国」である日本に生きるシニアの方々が心豊かに人生を修める「修活」、および、愛する人を亡くした人のための「グリーフケア」の空間となるでしょう。また「後期高齢」を「光輝好齢」に変えるお手伝いになるものと考えます。



2017年12月25日 一条真也